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答弁本文情報

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昭和二十七年十一月二十一日受領
答弁第五号
(質問の 五)

  内閣衆質第五号
     昭和二十七年十一月二十一日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 大野(注)睦 殿

衆議院議員長谷川保君提出癩予防と治療に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長谷川保君提出癩予防と治療に関する質問に対する答弁書



一 癩予防法は、憲法に抵触するとは考えない。

二 現行法第三条第一項の規定により、患者をその意思に反して療養所に収容することは可能である。
  癩患者の収容については、あたう限り、勧奨により患者の納得をまつて収容するように努め、大部分はこれによつて目的を達しているが、この勧奨に対してもがん迷に入所を拒否する少数の患者については、癩病毒の伝播を防止し、公共の福祉を確保するために入所命令書を交付し、入所せしめた例もある。

三 現行法第四条ノ二の規定により、国立療養所の長が懲戒検束を行うことは可能である。
  癩療養所は、一つの特殊な社会集団であつて、この集団の中において秩序を乱すものに対しては、集団からの退去を求めることが、秩序維持のために通常とられる措置であるが、癩及び癩療養所の特殊性から癩患者を癩療養所から退所させることは、公共の福祉の観点から適当ではないと認められるので、国立療養所の長に療養所の秩序を維持するための懲戒検束の職権を与えることが必要である。
  この職権の行使については、慎重を期するよう特に強く指導しているが、この懲戒検束の方法等については、今後とも充分検討致したい。

四 国立癩療養所係官、都道府県癩関係吏員等については、癩予防法、国家公務員法、地方公務員法等により、秘密保持の規定が設けられているが、癩対策の円滑な推進を図るため、特に秘密保持が必要であるので、この面については、関係者に対して強力に指導している。
  秘密を漏えいした係官に対する処罰の事例については、目下調査中である。

五 患者入所後の生活困窮家族に対しては、生活保護法等による保護が行われているが、更に財団法人藤※楓協会等の民間団体とも協力して困窮家族の援護に力を尽したい。

六 生活保護法の保護に関係ある公務員については、地方公務員法等により秘密保持の義務が課せられているが、秘密保持の徹底については、常に強く指導している。

七 患家の検診を行う場合には、夜間検診を行い、あるいは他の健康診断と同時にその機会を利用して行う等秘密保持に留意しているが、更に秘密保持の徹底を期したい。

八 療養所の係官について、秘密保持の義務規定があるのと同様に、都道府県の関係吏員等についても、秘密保持の義務が規定せられている点及び療養所の係官が仮に入所勧誘、輸送等の措置をとるとしても、結果においては、患者及び現地の実情を最もよく把握する都道府県の関係吏員の協力を得て行わざるを得ないという点から、特に設例のような方途をとる意味はないと認められる。むしろ、患者収容の迅速、入所後の患家援護等のことを考慮するならば、患者の実態を充分把握した都道府県がこの措置をとることが適切である。

九 八項について述べたところと同様の趣旨により、患者及びその家族の実態を充分把握している都道府県等の職員が患者家族の生活援護を行うことが適切である。

一〇 患者が治ゆした場合において、退所の措置がとられるのは、当然のこととして規定せられていない。

一一 癩の伝染力については、種々の学説があるが、伝染性の疾病であることについては一致しており、特に小児に対する伝染力は相当強いものと考えられる。

一二 現行法については、新憲法施行後においてもこれに抵触するとは認められなかつたので、改正を行わなかつた。

一三 現在のところ改正法案を提案する予定はないが、今後とも慎重に検討致したい。

一四 将来改正する必要があると認めた場合には、療養所長、患者はもち論、広く一般の意見を参考と致したい。

一五 地方公共団体及び財団法人(注)楓協会等の民間団体と協力して癩予防に関する知識及び救癩思想の普及を図つており、将来も更にその徹底を期したい。

 右答弁する。




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