衆議院

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昭和三十年六月二十四日受領
答弁第一六号
(質問の 一六)

  内閣衆質第一六号
    昭和三十年六月二十四日
内閣総理大臣 鳩山一(注)

         衆議院議長 (注)谷秀次 殿

衆議院議員岡本(注)一君提出京都府綴喜郡井手町町有林濫盗伐問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員岡本(注)一君提出京都府綴喜郡井手町町有林濫盗伐問題に関する質問に対する答弁書



 標記の件は、昭和二十八年七月国家地方警察京都府本部刑事部捜査第二部において、捜査を遂げ、京都地方検察庁に送致された井手町町会議員木田善之助外四名に対する背任等被疑事件のことと思われる。
 右事件につき、京都地方検察庁が送致を受けた被疑者及び罪名並びに送致年月日は、次のとおりである。

背     任 町 会 議 員 木 田 善 之 助 昭和二十八年七月十九日
森  田  守  三 右同
町  吏  員 武  田   敬  一 昭和二十八年七月四日
農      業 市 本 久 太 郎 昭和二十八年七月十九日
公文書偽造
同  行  使
山林会社社長 小  林  清  晴 昭和二十八年七月十日

 右事件を受理した京都地方検察庁では、直ちに主任検事を定め、捜査の結果、昭和二十九年五月二十六日木田、森田、市本、武田の四名に対しては、犯罪の成立を認めて公訴を提起するに足る証拠なく、結局嫌疑なきものとして不起訴処分に付し、小林に対しては犯罪の成立はこれを認めることができるが、諸般の情状をしんしやくし起訴猶予処分に付した。
 本件被疑事実の要旨並びに前記不起訴処分の理由の概略は、次のとおりである。

一 被疑事実の要旨

 被疑者木田、同森田はいずれも昭和二十六年四月以降井手町町会議員の職にあり、昭和二十七年十一月二十三日の同町臨時町議会において、町有林売却に関する調査委員に任ぜられ売却予定地の選定、立木の石数計算等の事務に従事し、さらに同年十二月二十三日町有林売却委員に任ぜられて、公売実地引渡等の事務に従事したものであり、被疑者武田は、井手町吏員として山林事務を担当し、町長を補佐するかたわら右調査委員売却委員の事務を補助したものであり、被疑者市本は、森川(注)次をかいし井手町長木村延次郎より右調査委員の事務補助を委嘱せられて同町有林売却予定地の石数調査等の事務に従事し、引き続き実地引渡の立会等の事務に従事した者であり、被疑者小林は、長野県松本市山林業株式会社小林清章商店の取締役社長で右井手町町有林公売に際し落札人として買い受け、右町有林立木の引渡を受けたものであるが、

第一 被疑者木田、同森田、同市本は、右小林商店の利益を図る目的をもつて、昭和二十八年一月二十日同商店に売却立木を引き渡すに際し、売却委員又はその補助者としての任務にそむき町議会議決外の売却地域における立木である同町字山吹十番地内の松立木、同地内の巨岩を境とする峯附近の杉、檜立木、山吹十一番地内の松、檜立木、同町字滝谷三番地内の松立木を不当に引き渡し、依つて右小林商店をして同日以後同年四月下旬頃までの間にわたり、
  右地域内の松二千七百二十七本(約二千百七十三石)檜二百五十八本(約五百十九石)杉三百六十二本(約四百三十石)合計三千三百四十七本(約三千百二十二石)時価約百七十一万八千二百円位相当を伐採せしめて、右井手町に対し同額の損害を与え、

第二 被疑者武田は、右町有林公売に際し、買受人被疑者小林より売却物件の表示を拡張変更した売買契約書二通を示されて、町長の署名捺印をしてくれとの請託を受け、上司たる町長の承認を得ずにほしいままに井手町長木村延次郎の記名押印をしてその一通を右小林に交付し、よつて小林をして、該契約書に基き前記第一記載のとおり立木を不当に伐採せしめて同町に対し同額の損害を与え、

第三 被疑者小林は、昭和二十七年十二月二十八日右町有林買受人として井手町長との間に前記山吹十番地内等の杉、檜立木を金三百五万円で売買する旨の売買契約書を取り交したが、その後第二記載のとおり被疑者武田に対し右売買物件を不当に拡張して記載した売買契約書二通を示し、井手町長の署名押印等を要求し、同人をして不当に井手町長の記名押印をさせて右井手町長作成名義の公文書二通を偽造し、即時同所において内一通を右武田に交付し、同町に備え付けさせて行使したものである。

二 不起訴理由の概略

 第一事実については、本件係争中の(一)山吹十番地、十一番地内の松、檜立木(二)山吹十番地内巨岩より上部の杉、檜立木(三)滝谷三番地内の松立木につき被疑者木田、同森田は、右三地域とも実地調査を行い、町議会においてこれが売却が決議されたので、その決議どおり引渡を行つたものであり、各々その任務にそむいていない旨弁疏し、被疑者市本は右(二)の地域については実地調査をしなかつたが公売入礼に際し、木田委員が、町長、町会議長同席の上、入札業者に対し、右三地域を売却区域内に含めて説明したので、売却予定地が変更されたものと考えて被疑者木田、同森田の意見に従つたもので、その引渡、立会の任務にそむかなかつたと弁疏する。
 捜査を遂げたところ、被疑者木田、同森田とともに調査委員として実地調査にあたり、引き続き売却委員として公売引渡等の事務に従事した他の同町町会議員及びこれら事務の補助者の各供述を綜合すると(二)の地域は実地調査を行い、(一)(三)の地域は実地調査を行わず売却決議をした定例町議会においても、右実地調査ずみの地域のみを売却する旨決議され、公売入札に際しては、売却区域の説明はなんら行われなかつたものと推認されるが、一方井手町長より委嘱されて右実地調査を直接担当して、公売入札にも立会つた森川(注)次の証言によると(一)(二)(三)の各地域は、すべて実地調査を行つた、公売入札に際しては業者の質問に答えて木田委員より右三地域を含めて売却する旨の説明がなされたことが窺われ両者の供述は全く相反し、更に定例町議会の会議録を検討し、一方係争地域における実況見分の結果に徴するも依然としていずれをとつて事実なりと断定するだけの証拠を発見することができない。また被疑者等に右小林の利益を図り、あるいは井手町に損害を加える目的があつたと認めるに足る証拠もない。
 結局右被疑者三名に対する背任の被疑事実は嫌疑なきものと処断せざるをえない。

 第二事実については、被疑者武田は、山林が町長や小林委員の承認をえてあるからと申したので、その言を信じて町長に代り記名押印したものであると弁疏し、関係者の取調の結果に照しても右弁疏をくつがえすに足る証拠はなく、結局背任に関し犯意に対する嫌疑不十分と認めざるをえない。

 第三の事実は、明白であるが、結局実地引渡に際しては本件偽造契約書の記載によらず売却委員の指示に従つて引渡を受けたことが認められ、本件公文書偽造に直接基因する実害の発生は認められず、なお被疑者は高血圧、口頭癌の重症にあつた点も考慮し、厳戒にとどめ起訴猶予処分に付したものである。
 以上の経過に徴し、警察及び検察当局がこれを刑事事件として処理した経過、処分結果には、非難すべき点を認めることはできない。

 右答弁する。


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