答弁本文情報
昭和三十年七月二十六日受領答弁第二六号
(質問の 二六)
内閣衆質第二六号
昭和三十年七月二十六日
内閣総理大臣 鳩山一※(注)
衆議院議長 ※(注)谷秀次 殿
衆議院議員石野久男君提出石炭鉱業合理化に伴う常磐地区及び全国各地の中小炭鉱の現況並びに今後の具体策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員石野久男君提出石炭鉱業合理化に伴う常磐地区及び全国各地の中小炭鉱の現況並びに今後の具体策に関する質問に対する答弁書
一 本法案施行期間中に炭鉱買上により発生する炭鉱離職者は、約二万七千人にのぼる見込みであるが、これを最近二年間における炭鉱離職者約九万人に比較すれば、特に本法案によつて離職者が増大するとは思われず、これら炭鉱離職者対策については、政府においても万全を期するよう決意しているところである。
すなわち、炭鉱買上による離職者に対しては、離職金の支給、未払賃金の代位弁済等の措置を法文上に明定してその保護をはかるとともに、就労対策として、炭鉱地帯において河川改修、道路、水道、鉄道建設、改良等諸事業を実施し、これに積極的な配置転換をはかるほか、住宅建設、電源開発等の事業に対しても計画的に離職者の配置転換をはかるため必要な職業補導を実施することとし、又従来より実施してきた鉱害復旧事業、失業対策事業等を今後とも炭三鉱地帯において重点的、計画的に実施し、その吸収をはかるよう計画しているところである。
二 本法案は、石炭鉱業の合理化を積極的に推進することによつて石炭鉱業の再建を図り、その恒久的な安定を所期するものであり、長期的観点よりすれば、炭鉱経営の安定改善をきたすことになり、関係市町村にもその面より寄与しうるものであると考える。
しかしながら法施行の過程においては、個々の市町村についてみれば、税収の激減をきたす団体も生ずることは予想されるので、これら団体に対しては極力自主的に経費の節減、収入の確保に努力を払うよう指導することは勿論であるが、他方国としても鉱産税の減収により財政運営に支障をきたす地方団体に対しては、ある程度特別交付税で措置する方針である。
三 二に述べたごとく、本法案の実施により石炭鉱業の再建を図り、その安定を期することが、炭鉱関連企業の振興を図ることになると考えられるのであるが、さしあたり現下の深刻な炭況不振の現況にかんがみ、又、法施行の過渡期においては、失業対策事業、鉱害復旧事業、公共事業等の増こうが予想され、県および市町村の地方負担額も相当の増額が考えられるのでこれらの点については、これらの事業に対する予算措置と相まつて地方財政計画を修正することにより地方債等により措置する所存である。
四 現在ほとんど未利用のまま放置されている低品位炭に新しい利用分野をひらくことは、資源の活用および生産コストの引下げの両面からみて大きな意義をもつものと考えられる。
特に常磐地区においては、炭質が劣つているため精炭の生産に伴い多量の低品位炭が併産されている状況であつて低品位炭利用により大きな効果が期待される。
同地区においては、電力会社および石炭会社の共同出資により第一期七万キロ最終十万キロの火力発電設備の建設計画が近く具体化する見込であり、製塩事業についても二、三の計画が企画されており、政府としてもその促進に努めているが、なお、今後も低品位炭のガス化等によりその利用の拡大を図る所存である。
右答弁する。