答弁本文情報
昭和三十二年五月十四日受領答弁第五号
(質問の 五)
内閣衆質二六第五号
昭和三十二年五月十四日
内閣総理大臣 岸 信介
衆議院議長 ※(注)谷秀次 殿
衆議院議員高津正※(注)君提出賠償実施の適正化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員高津正※(注)君提出賠償実施の適正化に関する質問に対する答弁書
賠償の完全な履行、なかんずく役務賠償として実施される建設工事について粗漏がないよう留意する必要があるとの主意については政府においても全く同感であり、フィリピン及びビルマに対する賠償が開始される際、当方では右の趣意で先方国政府に対し、不良業者が介入して日本の信用を傷つけ先方国の損失を招く結果となることを防ぐため日本政府が推薦した業者のみを相手として契約すること、また日本政府は契約内容の適正な実施について関心をもつものであるから、その見地に立つて契約の審査及び業者の監督を行いたい旨を申し入れた経緯がある。しかし、先方は業者の選択や契約内容の審査の必要性は当事者たる請求国政府が最もよく承知しているところであり、日本政府の関与は賠償調達について不当な干渉の口実を与えることとなるおそれがあるので不要なるのみならず有害と思うということで、当方の申入を受け入れなかつた。
現行の直接調達方式は以上のような折衝の結果決定したものであるので、現在政府において業者の監督及び契約内容の審査を有権的基礎で行うことは考えていない。また政府の意図を代行する公共的機関の設立も却つて先方の誤解を招くおそれがあるので適当ではないと考えている。
しかし実際問題として不当な契約が結ばれることは両国の不利益を結果することとなるので、契約の認証に当つて当方の気付の点はそのつ度先方に通報して注意を促し、契約の是正を図らしめるよう措置しており、先方もわが方の忠告を快く受け入れているので今後ともこのような方法で不測の事態を予防して行く方針である。
右答弁する。