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答弁本文情報

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昭和四十二年六月九日受領
答弁第四号
(質問の 四)

  内閣衆質五五第四号
    昭和四十二年六月九日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員石田宥全君提出熊本県水俣湾並びに阿賀野川における水銀中毒事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員石田宥全君提出熊本県水俣湾並びに阿賀野川における水銀中毒事件に関する質問に対する答弁書



一(1) 水俣病事件に関する調査としては、昭和三十四年厚生省の食品衛生調査会に水俣病特別部会を設置して原因究明を開始したが、その後各省庁の総合研究の必要が認められたので、昭和三十四年から昭和三十六年にかけて、通商産業省においてはアセトアルデヒド製造工場に対する工場排水の水質調査、経済企画庁においては八代海南半部海域における水質および底質ならびに潮流に関する調査、水産庁においては毒性魚介類の分布等に関する調査、厚生省においては病因物質の確立に関する医学的調査を行ない、これらの関係省庁の行なう調査間における有機的関連の保持を図り、それらの円滑な推進に資するため、水俣病総合調査研究連絡協議会を設置し、昭和三十五年二月から三十六年三月に至る間に四回にわたり協議会を開催した。

 (2) 水俣病事件における被害としては、昭和二十八年から昭和三十五年にかけて百十一名の患者の発生をみ、現在までの間に四十一名が死亡し、十九名が入院加療中、五十一名が自宅療養を続けている。

 (3) 患者に対する対策としては、昭和三十三年度の予備金から患者収容施設建設補助金二百十一万円を支出し、治療研究費としては昭和三十三年以降毎年補助を行ない昭和四十一年度までに総額七百六十万円を支出している。なお、リハビリテーシヨンセンターの建設にあたつては、厚生年金保険積立金還元融資から二億一千五百万円の融資を行なつた。
     漁業に関する対策としては、昭和三十四年度近海出漁奨励事業に対し特別助成事業として約二百万円、昭和三十五年度真珠母貝養殖事業、漁業転換促進事業等に対して約一千万円の国庫補助を行なつた。
     また通商産業省において関係工場に対し必要な指導を行なつた。

 (4) 当時の科学技術水準をもつてしては病因物質の発生過程等を確定することはできなかつた。また患者の発生は昭和三十五年の四名を最後に終熄したものである。

二 熊本大学の水俣病に関する学術的研究の結論は昭和三十九年から四十年にかけて最終的にとりまとめられたものであり、熊本県における水俣病事件については一においてのべたとおり既に昭和三十六年頃までに落着をみている等の事情もあつて政府の結論とするまでには到らなかつた。

三(1) 新潟県阿賀野川下流地域において有機水銀中毒患者が発見されたため、昭和四十年七月科学技術庁、経済企画庁、厚生省、農林省、通商産業省の参加のもとに関係各省連絡会が開かれ阿賀野川水銀中毒事件に関して技術的解明を図るための特別研究を実施する方針を決定した。当該決定にもとづき特別研究促進調整費によつて昭和四十年九月以降厚生省においては臨床研究班(新潟大学医学部長野崎秀英外九名)試験研究班(国立衛生試験所食品部長川城厳外十九名)疫学研究班(前国立公衆衛生院疫学部長松田心一外七名)を編成し研究を開始し、農林省においても水銀汚染水棲物の分布調査に関する研究を水産庁日本海区水産研究所において行なつた。
     なお、その結果については、昭和四十一年三月厚生省において三班合同研究会議を開催し、その議論の過程を公表し昭和四十二年四月研究三班の報告書を科学技術庁に提出、農林省も昭和四十一年に報告書を科学技術庁に提出した。

 (2) 被害者は、中毒患者二十六名(うち死亡五名)そのうち現在通院中の者十八名自宅療養者三名であり、これらの被害者に対して、県市町村によりとられた措置は次のとおりである。

 1 死亡者遺族に対し、香典、弔慰金が贈られ
 2 療養者に対しては、療養費、医療手当、リハビリテーシヨンに要する療養費が負担され、その他患者世帯に対し生業資金や養育見舞金が出されている。
 なお、漁業被害に対する措置としては、県により漁業規制措置協力見舞金、漁業資金としての低利融資、関係漁業協同組合の事業補助などが行なわれている。

四 特別研究三班の研究報告は相互に調整をはかりながら行なわれたが結果的には、それぞれの独立した立場から報告がなされた。汚染源に対する結論は疫学的見地から出されたものであり厚生省としては、更に総合的意見をとりまとめる必要上各専門分野からの検討を加えるため食品衛生調査会の意見をもとめているのである。
  従つて食品衛生調査会の答申にもとづいて医学的見地から検討した見解が科学技術庁に提出された段階において関係各省庁よりの専門の立場における意見が述べられ、これをまとめるよう科学技術庁が総合調整することになつている。

五 食品衛生調査会特別委員会委員は会長の指名であり、報告書の検討の過程において必要の都度それぞれの専門分野にわたつての専門家の参加をもとめ、その意見を聴する意向である。従つて水産、工場排水等の専門家の意見を十分反映しうるようになつている。
  なお、厚生省関係調査班々員中には熊本県水俣病の研究にたずさわつた専門家が多数参加しており、その報告書をもとにして審議するものであるから、その経験は十分生かされているものと考える。

六 水俣病事件については、昭和三十四年十一月十三日、熊本地方法務局が工場排水による公害事件としてこれを立件し、鋭意調査に当つたが、いわゆる水俣病の病源が新日本窒素肥料株式会社水俣工場の排水によるものであることを確認するまでには至らなかつた。
  しかしながら、同会社においては漁業被害の点について工場排水によるものと認めて、補償協定を結び、これを履行したうえ、患者に対しては見舞金の支払いを行なつた。
  また、昭和三十四年十二月、工場内に浄化装置を設置したが、その後、患者発生数が漸減し、昭和三十六年にはいつてからは全く発病者をみなくなつたので、同年七月二十四日右事件を「処置猶予」として処理した。
  阿賀野川水銀中毒事件については、厚生省等関係省庁ならびに新潟県当局等において専門家による調査が行なわれたので、その調査結果により、容疑があれば人権侵犯事件あるいは刑事事件としても迅速適正な処置をとり得るよう関係機関との緊密な連絡のもとに鋭意情報収集に努めている。

七 阿賀野川水銀中毒事件に関する特別研究の技術的解明をはかるため関係各省連絡会(科学技術庁、経済企画庁、厚生省、農林省、通商産業省)において緊密な連絡をはかつているが、厚生省の意見の提出をまつて可及的速やかにその技術的な結論をとりまとめる所存である。

 右答弁する。




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