答弁本文情報
昭和四十四年八月五日受領答弁第一三号
内閣衆質六一第一三号
昭和四十四年八月五日
衆議院議長 松田竹千代 殿
衆議院議員松本善明君提出下山事件捜査記録等の公表に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員松本善明君提出下山事件捜査記録等の公表に関する質問に対する答弁書
一 月刊雑誌「新評」一九六九年七月号に掲載された「下山国鉄総裁“自殺”の証拠」と題する関口由三氏の手記の内容のなかで、地方公務員法第三十四条第一項の「秘密」に該当するものがある場合には、同項違反となる。
前記手記の内容が同項にいう「秘密」に該当するか否かの認定は、警視庁当局において行なわれるべきものであるが、同当局の認定によれば、これらの内容中秘密に該当するものはないとのことであるので、右手記の公表が同項違反となることはありえないものと考える。
二 1および2について
関口由三氏とともに当時捜査に従事した先輩・同僚はすべて退職しており、関口氏が下山事件に関する手記を公表することについて、これらの先輩・同僚にどのような了解を得たかはつまびらかでないが、新評七月号にあのような手記を公表することについて警視庁当局が了解したことはないとのことである。
当該事項が秘密である場合には、公表の許可を与える法的根拠はない。
警察官が職権に基づいて作成した捜査書類や職権に基づいて収集した証拠物は退職後手もとにおくことは許されないが、備忘等のために記帳したメモ類は差しつかえないものと解する。
警察官に対しては、被服が支給され、警察手帳等が貸与されている。これらの返納については、警察法施行令第十一条に、「警察庁の警察官及び皇宮護衛官が失職し、退職し、休職を命ぜられ、又は臨時待命を命ぜられ、若しくは承認された場合には、その者は、使用期間の満了しない支給品及び貸与品を国に返納しなければならない。警察庁の警察官及び皇宮護衛官が死亡した場合には、長官は、使用期間の満了しない支給品及び貸与品を国に返納するための措置を講ずるものとする。」という規定がある。都道府県の警察官についても、これに準ずる(警察法第六十八条第二項参照)。
検察庁関係の分の主なものとしては、本件に関する鑑定書がある。この鑑定書は、現在、東京地方検察庁において保管中であるが、今後、刑事参考資料として保管することを検討中である。
警視庁においては、実況見分調書、警察官の捜査報告書、参考人供述調書等を警視庁捜査第一課の資料格納室に永久保存資料として厳重に保管している。
鑑定書の全文および捜査に関する全記録を公表する考えはない。
なお、昭和三十九年六月二十三日衆議院法務委員会の資料要求に基づき、鑑定事項と鑑定結果を提出している。
鑑定書の全文および捜査に関する全記録を公表することは、死者および遺族等関係人の名誉および感情を著しく毀損するおそれがあり、また、今後におけるこの種事件の捜査に支障をもたらすおそれがあるなど、検察運営上好ましくないので、この際、公表をさしひかえるものである。