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答弁本文情報

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昭和四十九年十二月二十七日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質七四第三号
    昭和四十九年十二月二十七日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員渡辺三郎君提出本山製作所の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員渡辺三郎君提出本山製作所の労使紛争に関する質問に対する答弁書



一について

 特別防衛保障株式会社(昭和四十四年四月設立)は、警察当局がは握しているところでは、昭和四十五年以降株式会社報知新聞社(東京都)、株式会社細川鉄工所(大阪府)、株式会社教育社(東京都)、チッソ株式会社(大阪府)及び株式会社本山製作所(宮城県)における労使紛争に関連して不法事案を起こしている。
 また、特別防衛保障株式会社は、昭和四十七年十一月二十二日に東京都公安委員会に対し警備業法第四条の規定に基づく届出を行つており、代表取締役は高山弘憲である。

二について

 株式会社本山製作所(以下「本山製作所」という。)に対する特別防衛保障株式会社の警備員の派遣をめぐる職業安定法違反被疑事案については、宮城県警察当局において昭和四十八年三月に特別防衛保障株式会社、本山製作所等を捜索するとともに被疑者等の取調べを行い、同年十二月十五日に特別防衛保障株式会社及び同社代表取締役飯島勇ほか同社役員二名を職業安定法第四十四条違反の疑いで仙台地方検察庁に送致し、同地方検察庁において現在なお捜査を継続している。
 また、本山製作所が特別防衛保障株式会社の警備員であつた者を昭和四十七年十月に採用したことについても捜査したが、これについては、特別防衛保障株式会社を警備業法違反として問擬することはできなかつたと聞いている。
 なお、職業安定法にいう「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人に使用させることをいう(同法第五条第六項)のであるから、当該事業主との間にのみ雇用関係を有するにすぎない者については同法第四十四条の問題は生じないものと考える。

三について

 宮城県警察当局は、正当な労働運動に対しては、介入しないという基本的態度でこれに対処しているが、不法事案が発生し、又はそのおそれがある場合には、所要の警備部隊をその都度出動させて警告、規制するなど不法事案の発生の防止に努めているところである。
 なお、裁判所が行つた仮処分決定は尊重せられるべきものであり、警察当局としてはその趣旨を十分に尊重しつつその責務に基づいて所要の措置を講じているところである。

四について

 賃金支払仮処分申請が認容された場合には使用者はこれに従うべきものであり、本件においても、本山製作所は、昭和四十八年十月十三日に仙台地方裁判所が行つたロック・アウトに関連する賃金支払仮処分決定に従つていると聞いている。

五について

 昭和四十七年五月以降、数度にわたり所轄労働基準監督署に対し総評全国金属労働組合宮城地方本部本山製作所支部(以下「支部」という。)の役員等から、労働基準法第三条、第二十六条、昭和四十七年法律第五十七号による削除前の労働基準法第四十九条(以下本項において「旧第四十九条」という。)等に関する申告が行われ、これらについて調査の結果違反の事実の認められた旧第四十九条に関する点については、その是正を勧告する等所要の措置を講じたところである。また、昭和四十八年十二月に支部役員から、労働基準法第百四条第二項に関する申告が行われたが、調査の結果同項違反の事実は認められなかつた。

六について

 本山製作所は、昭和四十八年四月十六日に宮城県地方労働委員会が行つた不当労働行為救済命令を不服として中央労働委員会に再審査の申立てを行い当該命令を履行していないようである。当該命令は中央労働委員会において争われている場合にもその効力は停止されず(労働組合法第二十七条第五項ただし書参照。)、本山製作所は当該命令を履行すべきであるが、この場合には強制力はない。すなわち、当該命令が中央労働委員会において争われている限りいまだ確定していないので、当該命令の履行を罰則をもつて強制することはできない。
 なお、本山製作所は、宮城県地方労働委員会が労働委員会規則第三十七条の二の規定に基づいて行つた勧告及び中央労働委員会会長が同規則第五十一条の二の規定に基づいて行つた初審命令履行の勧告を履行していないと聞いている。

七について

 昭和四十七年以来継続している本山製作所の労使紛争に関連して発生した事件で、警察当局が捜査を遂げたうえ仙台地方検察庁に送致、送付した事件は、労使双方からの告訴告発に係る事件を含め、六十件三百二十名である。
 仙台地方検察庁においては、右送致等事件のほか直接労使双方から告訴された事件の被疑者四十五名を含め、合計三百六十五名について更に慎重に捜査を遂げたうえ、現在までに一名につき公判請求、三百四十六名について不起訴処分、少年九名については家庭裁判所に送致しており、残り九名については、なお、捜査中である。

八について

 本件は、昭和四十七年五月二十四日仙台法務局に対して人権侵犯事件として申立てがなされたものであり、現在同法務局において調査中である。本件については、関係者の協力が得られないため調査が遅延しているので、同法務局に対して申告者側及び本山製作所側を説得して関係者からの事情聴取を行い、早急に調査を完了するよう指示しているところである。
 なお、昭和四十九年十二月五日に総評全国金属労働組合ほか一名より本山製作所東京支店長宮崎真一ほか四名を相手方として東京法務局に人権侵犯事件の申立てがあつたので、本件については、同法務局において近く調査を開始する予定である。
 また、総評全国金属労働組合は、本山製作所東京支店に勤務する支部組合員に対して使用者が職制又は警備課員をして暴力行為、威圧的言動を加えるなどのいやがらせを行つているとして、昭和四十九年十二月七日に東京都地方労働委員会に対し不当労働行為救済の申立てを行つているが、本件については、現在同地方労働委員会において審査中である。

九について

 株式会社富士銀行から事情を聴取したところ、同銀行としては、本件は労使間の問題であつて第三者である銀行の介入すべきことではないという考え方の下に、通常の企業金融としての融資を行つているとの説明を受けた。
 なお、同銀行は、昭和四十七年十二月の異常事態の際、「年末の融資は一時見合せたい。」と話したことはあるが、「このような会社に対して新規の融資等は行わない。」といつたことはないと説明している。

十について

 警察当局は、正当な労働運動に対しては介入しないという基本的態度でこれに対処しているが、労働運動に随伴して暴力の行使等の不法事案が発生し、又は発生するおそれがあるときは、法の定めるところに従い、犯罪の予防、鎮圧、捜査を行い、必要により被疑者を逮捕する場合もあることは、警察の責務上当然である。
 ところで、本年十月二十九日仙台市内において「全金本山支部支援全国闘争」がくりひろげられたが、これに参加した極左系暴力集団などがフランスデモを行い交通の妨害となる等の不法行為を行つた。宮城県警察当局としては、その都度警告、規制をするなど必要な警戒警備に当たつたものであり、これはもとより組合活動に対して不当に介入したものではない。

十一について

 本年十二月十日支部組合員石川則男を道路交通法違反で逮捕した事実は全くない。しかし、同日同人を威力業務妨害罪で現行犯逮捕した事実がある。その被疑事実は、当日本山製作所東京支店(東京都中央区日本橋兜町二の五六)の従業員が出勤しようとした際、同支店入口附近で、多数の支援労組員らを指揮し、ピケを張り威力を示して、同支店従業員の出勤を阻止したというものである。
 また、同月十四日の逮捕は、本年十一月二十六日現在地に移転前の本山製作所東京支店(東京都港区芝浦二の六の六望月ビル)において発生した暴力行為等処罰ニ関スル法律違反並びに建造物侵入及び傷害事件として本山製作所側から告訴が出され、捜査の結果その事実が明らかになつたため、裁判所の令状を得て通常逮捕したものであつて、決してたらい回しに等しいといわれるものではないと考える。

十二及び十三について

 労働基準監督機関は、労働基準法等に違反する一定の事案について関係行政機関との間で相互通報を行うこととし、それぞれ監督指導上の参考にすることとしているが、本件は右の通報を要する事案には当たらないものである。
 なお、金融上の問題については、種々検討したところであるが、融資契約違反等の事実がない限り、特別の措置に結び付けることは困難であると考える。

十四について

 政府としては、宮城県当局との緊密な連携の下に、労使当事者を招き事情聴取を行い、話合いにより問題を解決するという気運の醸成を図る等の努力を続けてきたところであるが、いまだに紛争が収拾するまでにいたらず誠に遺憾である。今後更に問題解決促進のため採り得る諸措置について検討を進めるとともに、労使の話合いの促進等を通じて紛争の早期かつ円満な解決を図つてまいりたい。

 右答弁する。




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