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答弁本文情報

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昭和五十年七月八日受領
答弁第二四号
(質問の 二四)

  内閣衆質七五第二四号
    昭和五十年七月八日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員受田新吉君提出引揚者の在外財産問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員受田新吉君提出引揚者の在外財産問題に関する質問に対する答弁書



一について

 御質問の「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」(条約附属書を含む)は、国際法上一般に戦争が違法とされていなかつた時代に作成されたものであり、国際連合憲章第二条4において、武力の行使が、他国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも禁止されている今日においては、同条約の適用につき種々議論はあるが、一般には、国家間に実態的な戦争状態が存在する場合には同条約の適用があるものと考えられている。

イ 「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」の違反があつた場合の責任について、同条約は、その第三条において、「前記規則ノ条項ニ違反シタル交戦当事国ハ、損害アルトキハ、之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス」と規定しているのみであり、違反国の責任を追及する特別の機関を設けていない。

ロ 「日本国との平和条約」第四条(b)の対象となつている財産の処理に関しては、「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」に規定する一般原則の範囲を超えた処理が合衆国軍政府によつてなされた場合があつたことは事実であるとしても、かかる処理については、同条(b)の規定によつて、その効力を承認し、右平和条約第十九条(a)の規定により、これに関する請求権を放棄したものである。
  政府としては、平和条約上かかる措置がとられたことに関し、国に当該財産の旧所有者に対する法律上の補償の責任はないとの立場に立つている。かかる立場は、最高裁判所の判例(昭和四三年一一月二七日大法廷判決及び昭和四四年七月四日第二小法廷判決)の趣旨とも合致するものと考えられる。

二について

イ 税関保管物件は、引揚者が持ち帰つた通貨、証券等を税関が保管しているものであり、引揚者からの返還請求に応じ返還処理してきているところである。
  政府は、この保管物件を可能な限り返還するよう努めて参る所存であつて、現在、この最終処理を検討すべき段階に至つていないと考える。

ロ 終戦直後、連合軍最高司令部の覚書に基づく昭和二十年大蔵省令第九十五号によつて引揚者等から提出された在外財産等報告書は、集計作業を行つた後、集計表とともに連合軍最高司令部へ提出した。
  この在外財産等報告書は、終戦直後の混乱期に引揚者等から申告により徴した報告であり、証拠資料が皆無に近かつたこと、また、評価基準が不統一であつたこと等の事情からみて、客観性又は信ぴよう性に乏しいものと認めざるを得ないので、公表することは適当でないと考える。

ハ 関係者の陳情等により、台湾引揚者が、引揚げに際し、台湾当局が発行した「私人財産清冊」(私有財産明細書)を持ち帰つている旨承知しているが、右「清冊」の内容の真否等について、現在、政府として確認することは困難である。

ニ 引揚者の在外財産問題については、昭和四十一年十一月の第三次在外財産問題審議会の答申の趣旨にのつとり、昭和四十二年六月引揚者等に対して特別交付金の支給措置を講ずることをもつて最終的に解決する旨を閣議決定し、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律(昭和四十二年法律第百十四号)に基づき措置してきたところであり、右の措置をもつて在外財産の処理は最終的に解決されたものと考えている。
  なお、特別交付金は、昭和五十年四月までに、支給対象者として、約三一三万人を認定し、約一六三六億円を支給した。

三について

 御質問に係る事項については、政府としては、御質問事項一に関して述べたところにもかんがみ、国連総会における審議を求める必要はないと考えている。

 右答弁する。




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