衆議院

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昭和五十年十二月二十三日受領
答弁第八号
(質問の 八)

  内閣衆質七六第八号
    昭和五十年十二月二十三日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員玉置一(注)君提出か性ソーダの製法転換の進ちよく状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員玉置一(注)君提出か性ソーダの製法転換の進ちよく状況に関する質問に対する答弁書



一について

 か性ソーダの水銀法から隔膜法への製法転換については、昭和四十八年十一月十日第三回水銀等汚染対策推進会議において、昭和五十年九月末までに全設備能力の三分の二を転換し(第一期計画)、昭和五十三年三月末までに原則として残りの施設についても全て転換する(第二期計画)旨の方針を決定し、これに基づき製法転換の実施を指導してきたところであるが、第一期計画については、

(1) 機器の集中発注による納期の遅れ
(2) 隔膜法設備の建設に伴う公害防止協定の更改等地元の了解の遅れ
(3) 企業の資金調達難

等の理由から転換の実施が予定より遅れ、昭和五十年九月末の転換比率は三十五パーセント程度にとどまつている。
 政府としては、このように計画の実施が遅延したものについては、今後とも官民一体となつて実施の促進に努力したいと考えており、現在の見通しでは、昭和五十一年三月末までにおおむね六割程度の転換が可能となり、大勢としては、第一期計画が達成されるものと考えている。
 第二期計画については、現在、か性ソーダメーカーは長期的な需要見通し、採用技術等を検討中であるが、政府としては、イオン交換膜法の開発の促進を指導すること等により、当初の予定どおり、昭和五十三年三月末までに製法転換を完了するよう指導する方針である。

二について

 水銀法電解か性ソーダ工場はすべて工程排水のクローズド化が完了している。
 か性ソーダ一トン当たりの水銀消費量は、クローズド化の完了等により、別添のとおり、急速に低下しており、現在は平均十二グラム程度となつている。これらの水銀は、主として廃資材、廃スラッジ、塩水マッド等に混入するものであるが、これについては、コンクリート固形化を行う等法に定められた適正な処分が行われている。
 このように、現在では、通常の場合は、現行法で要求される規制の基準の遵守には、まず問題がないと考えるが、ことは水銀に関する問題であり、事故、自然災害等の異常事態をも考慮すると、代替技術も開発されつつある現在、水銀公害を生ずることのないよう万全を期するため、予定どおり製法転換を進めることが望ましいと考える。

三について

 か性ソーダの製法転換は、水銀公害の防止に万全を期するとの観点からできるだけ早期に行うことが望ましいが、他方、転換には多額の資金と長期の工事を要すること等を配慮して一定の経過期間を設ける必要があるところから、「昭和五十二年度末までに原則として全面転換を行う」との基本方針が昭和四十八年十一月決定されたものである。
 その後、隔膜法のか性ソーダの品質問題が需要業界から提起された等の経緯があつたが、幸い高品質のか性ソーダの生産を可能とするイオン交換膜法の技術開発が進みつつあり、これが第二期転換の中心技術になると思われるので、予定どおりの転換はおおむね可能であると考えている。
 また、現在、景気の停滞から企業経営は悪化しているが、政府としては、開銀融資をはじめ、各種の助成措置を通じて、転換を行う企業の負担の軽減を図り、企業が予定どおりの転換を行い得るよう配慮してまいりたい。

四について

 製法転換を当初計画どおり行うとすれば、昭和五十二年度末のか性ソーダの供給能力は約五百八十万トン/年になるが、第一期計画の実施状況から判断すると、企業が作成する第二期計画の供給能力は、これを下回るものとなるよう手直しされることとなるものと考えられる。
 昭和四十八年に策定した通商産業省の見通しによれば、昭和五十三年度の需要は四百八十万トンであるが、その後事情も変つているので、現在需要見通しの改訂作業を進めつつあり、その結果を踏まえて、必要があれば、第二期計画の能力についての調整を行いたいと考えている。

五について

 アスベスト隔膜法は、水銀法に比較すると、エネルギー消費の点においては、電解電力は少なくて済むが、濃縮工程が必要となるため、全体としてはエネルギー消費量はやや多くなる。大気汚染の点においては、濃縮工程のボイラーからいおう酸化物、窒素酸化物等が排出されるが、大気汚染防止法等の規制を遵守することにより、公害問題を生ずることはない。
 労働衛生の点においては、本年十月から、労働安全衛生法に基づく規制の強化が行われており、これを遵守することによりアスベストによる労働衛生問題は解決するものと考えられる。
 このように、アスベスト隔膜法については、省エネルギーの点においてはやや劣つているが、大気汚染、労働衛生等の点においては問題がないものと考えられ、他方、水銀法については、上述のとおり、水銀公害が生ずることのないよう更に万全を期する必要があることを考慮すれば、予定どおり製法転換を進めることが必要である。なお、第二期計画においては、イオン交換膜法が中心になると予想され、省エネルギーの面でも、アスベスト隔膜法よりも更に問題が少なくなると考えられる。

六について

 水銀法、アスベスト隔膜法以外の新技術として、イオン交換膜法の技術開発が旭化成工業(株)、旭硝子(株)等数社において進められている。
 これらのうち、旭化成工業(株)においては、イオン交換膜法技術は既に実用化の段階にあり、本年四月から同社の実用プラントでか性ソーダの商業生産を行つている。その他の企業におけるイオン交換膜法技術は未だ工業化試験の段階であるが、旭硝子(株)は、明年三月頃には試験結果の発表が可能であるとしており、明年後半には複数企業によるイオン交換膜法技術の実用化が可能であると考えている。

七について

 昭和五十年七月十八日ダウ・ケミカル社からダウ・ケミカル日本(株)の定款を変更し、事業目的に「塩素・か性系製品、塩素誘導品、農業用化学品及びその配合品、熱硬化性樹脂、オレフィン及びその製造時の副産物等の化学品の製造」を追加する旨の承認申請があり、このうち、塩素・か性系製品以外の品目の製造については、去る十月二十七日付けで承認を行つた。
 塩素・か性系製品の製造については、ダウ・ケミカル社の計画によれば、昭和五十五年から五十七年にかけて塩素生産能力三十六万トン/年の設備を建設しようとするものである。これに対し、我が国のソーダ工業は、現在、巨額の設備投資を要する製法転換を実施中で、企業の体質が著しく弱体化しており、卓越した企業力、技術力を有するダウ・ケミカル社の対日進出の形態いかんによつては我が国ソーダ業界の受ける影響が深刻となり、ひいては転換の遅延から公害問題にも深刻な影響が生ずるおそれがある。このため、現在、慎重に検討を進めているところである。
 今後の進め方としては、転換計画にそごをきたさないよう、将来の需給動向、イオン交換膜法等の新技術の開発状況等を見極めつつ、関係者が相互に納得し得るような解決策を可及的速やかに打ち出したいと考えている。

 右答弁する。


(別添)

     水銀消費原単位

水銀消費原単位



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