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答弁本文情報

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昭和五十三年七月十一日受領
答弁第五四号
(質問の 五四)

  内閣衆質八四第五四号
    昭和五十三年七月十一日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員加地和君提出国選弁護制度の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員加地和君提出国選弁護制度の改善に関する質問に対する答弁書



一について

 国選弁護人に支給される報酬の額は、刑事訴訟費用等に関する法律第八条第二項により、「裁判所が相当と認めるところによる」ものとされているので、政府としては、具体的な報酬額の決定については、答弁し得る立場にないが、裁判所においては、右の規定に基づき、個々の事件について、それぞれ、事件の難易、弁護人の訴訟活動、特に公判前の準備活動の程度、開廷回数、開廷頻度等、諸般の事情を考慮して報酬額を決定されていると承知している。したがつて、御指摘のような場合には、当然、裁判所において、当該国選弁護人の負担の度合等を十分考慮して、相当な額の報酬が支給されることとなるものと思われる。

二について

1 弁護人の訴訟活動は、事件の難易、準備の程度、開廷回数、開廷頻度等によつて千差万別であるから、その報酬について、一律に明確かつ合理的な計算基準を定めることは極めて困難であると思われる。
  また、現在でも、例えば、国選弁護人が否認事件等で大部の記録を謄写するなどして多額の謄写料を要した場合等にあつては、当該弁護人からの請求に基づき、その都度裁判所から報酬の支払がなされていると承知しており、このような方法を更に活用するなど、国選弁護人に負担をかけない措置を講ずることにより、御指摘のような問題は解決し得るものと考えられる。

2 国選弁護人に支給される報酬の額は、個々の事件について、事件の難易、弁護人の訴訟活動の程度、特に公判前の準備活動の程度、開廷回数、開廷頻度等の諸般の事情を考慮して決定されるべきものであるところ、右の事情は、現にその事件を担当し、弁護人の訴訟活動につぶさに接している裁判所が最もよく承知しているところであるので、具体的な報酬の額を裁判所が決定することとしている現行の制度には十分理由があるものと考える。
  なお、弁護人が、報酬の請求をするに際し、裁判所において報酬の額を決定するに当たつて参しやくすべき具体的な事情を申し出ることは、もちろん差し支えないし、それが合理的なものである限り、裁判所においても十分参しやくされるものと思われる。

3 国選弁護人に支給される報酬の額の決定に当たつては、弁護人の訴訟活動の程度等、とりわけ公判前の準備活動の程度等が十分考慮されなければならないが、これらの事情は、現に事件を担当し、弁護人の訴訟活動につぶさに接した裁判所のみがよく知ることができ、しかも訴訟記録には、それらの事情の一部しか表わされないのを常とするから、報酬額の決定に対し不服申立ての規定を設けていない現行の制度にも十分な合理性があると考える。しかし、御指摘のような考え方にも傾聴すべき点があると考えるので、今後の検討課題といたしたい。

三について

 昭和二十三年当時の判事の報酬の区分と現在のそれとはかなり違つており、昭和二十三年当時の判事三号俸は、現在の判事三号俸に対応するものではないので、これを基準とする増加率の比較は困難であるが、最近における国選弁護人報酬の基準額(裁判所による報酬額決定の便宜を考慮して最高裁判所が通達で示している額)の増加率は、裁判官報酬のそれをかなり上回つている。

四について

 国選弁護人に支給される報酬の額として、どの程度の額が相当であるかについては、いろいろな見方があると思われるが、国選弁護人が付される事件の大部分は、いわゆる自白事件であり、開廷回数も多くはないこと、それだけに弁護人の負担の度合もさほど高くはないこと等の事情からすれば、一般的には、現在の報酬額が一概に低いとはいい得ないと考える。
 もつとも、国選弁護人が付される事件であつても、事案により、弁護人の負担の度合が特に高い場合があり、そのような場合に、裁判所において格別の考慮が払われてしかるべきであること、また、弁護人の訴訟活動が千差万別であるところから、その報酬額を一定のものとするのは必ずしも適当ではないことは、一について及び二についてで説明したとおりである。
 なお、国選弁護人に支給される報酬の予算額の決定に当たつては、一般の公務員の給与のべースアップ率等を参考にしつつ、更に、国選弁護人制度の重要性を勘案して、予算上特別な配慮をしている。

五について

 裁判の形骸化を防止するためには国選弁護活動の一層の充実強化が必要であり、この点については、法曹三者の協力によつて解決し得るところが少なくないと考えているが、政府としても、国選弁護活動の充実強化のため、今後ともできる限りの努力を尽くす所存である。

 右答弁する。




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