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答弁本文情報

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昭和五十五年十一月二十五日受領
答弁第九号
(質問の 九)

  内閣衆質九三第九号
    昭和五十五年十一月二十五日
内閣総理大臣 鈴木善幸

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員馬場昇君提出水俣病に関連する諸施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員馬場昇君提出水俣病に関連する諸施策に関する質問に対する答弁書



一について

1 (1) 国立水俣病研究センターについては、本年十月に臨床部、基礎研究部及び疫学研究部の各部において新たな研究員が確保される等、逐次研究体制が整備されてきており、今後とも引き続きその整備、充実を図つてまいりたい。

  (2)及び(3) 国立水俣病研究センターは、建設準備検討会の基本構想を踏まえ、水俣病に係る総合的医学研究機関として設置されたものであり、同センターにおいて行われる研究の各段階で得られる成果は、患者の症状の推移等個々の事情を最もよくは握している地域の医療機関が行う治療に実質的に大いに資することとなろうと考えている。

2 水銀汚染の実態調査については、昭和四十六年から同四十九年にかけて実施された水俣湾周辺地区住民健康調査、同四十八年に実施された有明海、八代海環境総合調査等がある。
  御指摘の調査問題については、今後いかなる調査が必要であるか、また、可能であるか等につき、引き続き検討を行つているところである。

二について

1及び2 水俣病の認定業務の促進については、熊本県において、月間百五十人検診、百三十人審査体制をとる等、また、国において、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法に基づき認定業務を行う等、各般の施策を講じ、不作為状態と言われることのないよう最大限の努力を払つているところであり、今後とも引き続き努力してまいりたい。

3 熊本県外在住の申請者のための検診機関の確保については、昭和五十二年六月の水俣病に関する関係閣僚会議の申合せの趣旨に沿つて、近畿、東海、関東の各地区に検診機関を確保すべく鋭意努力しているところである。特に東海地区については、本年度中に検診が実施できるよう諸般の準備が進められているところである。

4 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法に基づく認定に関する処分の状況については、四十七人の申請者のうち、二十三人について処分を行つたところであり、残りの申請者についても早急に処分を行うことができるよう所要の準備を進めているところである。

5 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法に基づく水俣病の認定に関する処分及び同処分に対する異議申立ての審理に当たつては、御指摘の附帯決議の趣旨を踏まえ、法の適正な運用に努めているところであり、今後とも一層の努力を払つてまいりたい。
  なお、同附帯決議第八項の趣旨は、県知事等の認定業務の遂行についても生かされるよう努めているところである。

6 水俣病の認定に関する処分に対する審査請求については、その審査の内容が医学的に高度の専門性等を有し、また、手続的にも慎重な審理を要求されるところであるが、今後とも迅速な処理に努めてまいりたい。

三について

 原因者負担の原則により、水俣病患者に対する補償金の支払は、患者の居住地の如何にかかわらず、チッソ株式会社の負担において行われるべきものであり、現に同社と水俣病患者との間の補償協定(昭和四十八年七月締結)に基づき補償金の支払が行われているところである。
 熊本県債は、当該原因者たるチッソ株式会社の経営基盤の維持強化を通じて患者に対する補償金支払に支障を生じないよう配慮するとともに、併せて地域経済・社会の安定に資するための金融支援措置の一つとして、同社水俣工場の所在する熊本県が発行しているものである。
 これまで熊本県債は四回発行されてきたが、チッソ株式会社からの償還を円滑に行わせるためにも、今後とも関係者の十分な協力によつて、同社に不測の事態が生じないようにしていくことが最も重要である。
 チッソ株式会社の金融支援に関する熊本県財政に対する配慮については、昭和五十三年六月の閣議了解の中で、償還財源の確保が困難となつた場合、「国において所要の措置を講ずるものとし、その具体策は、関係大臣が協議のうえ、決定するものとする。」と明記されている。したがつて、現在の段階で同社に不測の事態が生じた場合の具体策をあらかじめ詰めることは困難であるが、万一そのような事態が生じた場合には、閣議了解の線に沿つて関係省庁が協力し、十分な措置を講ずるよう配慮してまいりたい。

四について

1 チッソ株式会社の再建については、昭和五十三年六月の閣議了解の線に沿つて金融支援措置を行うとともに、同社の経営努力を前提としつつ、関係省庁が協力して、同社の経営改善の支援に努め、経済団体及び関係業界の協力を要請してきたところである。
  特に水俣工場の再建については、同工場はチッソ株式会社全体の著しい収益悪化をもたらしているという現状からすると、同工場の存続を図るためにも、その体質改善は急務であるが、その計画立案については熊本県の意向も尊重し、地域経済に混乱を生ずることのないよう十分配慮すべく同社に対して要請してきたところである。
  これを受けて、チッソ株式会社は、本年六月、水俣工場の体質改善計画の基本的な考え方を熊本県及び関係省庁へ説明したところであるが、同社に一層具体化するよう努力を要請するとともに、関係省庁においても最善の方途について鋭意検討を進めているところである。

2 チッソ株式会社水俣工場については、同社の再建の一環として、経営改善を進めていく必要がある。
  そのためには、新規事業の導入、不採算部門の縮小等を進めていくことが不可欠である。その過程においては従業員の数に増減が生ずることも予想されるが、政府としては、従来から、水俣工場が地域経済に果たしている役割等にかんがみ、長期的視野に立つて、新規事業の導入等により、地域の雇用の安定を損なうことなく地域経済・社会の安定に寄与できるようにという精神の下に指導を行つてきたところであり、今後ともこの基本的考え方の下にチッソ株式会社に対して計画の具体化を指導していくこととしている。

五について

1 水俣湾の底質の除去基準値は、各分野の専門家によつて構成される中央公害対策審議会において総合的に検討された答申を受けて環境庁が定めた「水銀を含む底質の暫定除去基準」に基づき、熊本県が水俣湾の底質等の調査の結果から算定し、熊本県公害対策審議会における検討を経て二十五PPmと決定されたものである。
  次に、工事方法は、事業主体である熊本県が設置した学識経験者等からなる水俣湾等公害防止事業計画委員会及び水俣湾等公害防止事業技術委員会において、二次公害を防止し工事の安全性を確保する観点からの検討を経て、しゆんせつに当たつては汚泥を極力攪拌しないようカッターレスポンプ船等により施行することとし、また、余水についても排出前に十分な余水処理を行うこととする等考えられ得る最善のものとして決定されたものである。

2から4まで 水俣湾堆積汚泥処理事業の実施は、地元住民の理解と協力の下に進めていくことが必要であると考える。
  このため、事業主体である熊本県は、工事に伴う二次公害の発生の防止を目的として行う水質汚濁等の監視等の適正を期するため、関係漁業者代表、地元住民代表等が参加した熊本県水俣湾等公害防止事業監視委員会(以下「監視委員会」という。)を設置している。
  また、同県は、水質等の監視結果を始め、監視委員会における審議内容等については公開することとしているほか、着工に先立ち工事内容の周知を図るため、地元住民に対する説明会を開催するとともに、新聞、パンフレット等により工事内容を公表してきたところでもある。
  更に、同県が監視委員会に諮り策定した監視計画に定める基準に監視結果が適合しない場合には、同計画に定める「監視の結果により講ずべき措置」に基づき工事を中断する等の措置を講ずることとしている。
  政府としては、今後とも地元住民の理解と協力が得られるよう関係者を指導する所存である。

六について

 水俣病対策については、政府として、被害者の救済の見地から現行制度の下に所要の施策を講じているところであり、現時点で特別立法の考えはない。

 右答弁する。




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