答弁本文情報
昭和五十八年六月十四日受領答弁第二六号
内閣衆質九八第二六号
昭和五十八年六月十四日
衆議院議長 福田 一 殿
衆議院議員小沢和秋君提出労災・職業病患者に対する「はり・きゆう」等の保険給付打切りに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員小沢和秋君提出労災・職業病患者に対する「はり・きゆう」等の保険給付打切りに関する質問に対する答弁書
一について
(一) 労働者災害補償保険においては、傷病の状態が固定し、療養の効果が期待し得ないと認められるに至つたときは治癒とすることとしており、疾病については、慢性症状が持続しているとしても急性症状が消退し療養の効果が期待し得ない状態になつたと判断されたときは治癒とすることとしている。
はり・きゆうの施術については、根治療法ではないが、疼痛・しびれ等の神経症状を緩解するという効果が期待され、その効果はおおむね六か月の期間においてみられるという医学的な考え方に基づき、従来、労働者災害補償保険においては施術期間の限度を六か月としてきたところであるが、先般、はり・きゆうについて造詣の深い専門家の意見を参酌し、また、労働者災害補償保険の特殊性をも考慮して、この施術期間の限度を三か月間延長し九か月とし、特に必要なものについては十二か月としたものである。
(二) 療養補償給付は、労働者災害補償保険法第十二条の八第二項に定める要件に該当する場合に、同法第十三条に定めるところにより行うものである。
(三) 労働基準監督署長は、保険給付を行うに当たつて、傷病労働者の療養の経過、主治医の診断及び意見、地方労災医員(以下「局医」という。)の意見等を参考にするとともに、必要に応じ傷病労働者に対し受診命令を行う等により症状を把握し、適正な処理に努めているところである。
局医の意見は必ずしも傷病労働者を診察した上で出されるものではないが、その療養の内容及び経過、主治医の診断及び意見等の医証により療養の効果の有無について客観的、専門的に判断しているものである。
(四) 労働者災害補償保険における療養補償給付は、当該傷病について療養の効果が期待できる場合に支給するものであり、療養の効果が期待できない状態に至つた後は支給できない。
(一) 労働者災害補償保険における治癒の判断は、当該労働者について療養補償給付を継続して支給するか否かを決定するためのものであり、いかなる勤務に服することができるかという問題に係るものではない。
なお、傷病が治癒したときに一定の身体障害が存する場合は、請求により、その障害の程度に応じて障害補償給付を受けることができるものである。
(二)から(四)まで 治癒後の被災労働者の職場復帰に関する問題及び当該労働者の企業内における処遇に関する問題は、本来、労使間で解決すべきものであることから、昭和四十八年十一月五日付け基発第五百九十三号通達の範囲において所要の指導を行う考えであり、法令に違反する行為があると認められる場合を除き、行政庁が強権をもつてこれらの問題に介入することはない。また、倒産等で職場を失い就労することができない者に対しては、その者の希望や適性に応じ、職業紹介、職業訓練等を関係行政機関において実施しているところである。
(五) 業務上の傷病が治癒した後に、次の要件のいずれをも満たすに至つた場合には、再発として労働者災害補償保険における所定の保険給付の対象となるものである。
(1) 現在の傷病と業務上の傷病たる当初の傷病との間に医学上の相当因果関係が存在すること。
(2) 治癒時の症状に比し現在の傷病の症状が悪化していること。
(3) 療養の効果が期待できるものであること。
頸肩腕症候群については、その発生の仕組みが医学的にみて必ずしも明確にされておらず、したがつて効果的な治療方法も確立されていない現状である。
頸肩腕症候群等の疾病の治療方法については、基本的には、より広い医学的見地から取り組むべき問題であると考えるが、労働省においては、これらの疾病の治療方法等に関する専門的な研究を委託する等の方策を講じてきたところである。今後とも調査研究の充実により、更に効果的な治療方法の解明に努め、一方、それらを通じて医学界における職業性疾病の治療方法の確立のための研究気運の醸成を図るとともに、関係省庁の連携にも配慮してまいりたい。