答弁本文情報
昭和六十二年一月九日受領答弁第二八号
内閣衆質一〇七第二八号
昭和六十二年一月九日
衆議院議長 原 健三郎 殿
衆議院議員藤田スミ君提出TBTO及び養殖魚に使用される化学物質に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員藤田スミ君提出TBTO及び養殖魚に使用される化学物質に関する質問に対する答弁書
一について
TBTOの環境及び食品中の残留については、その実態からみて、現在のところ環境及び国民の食生活の安全上問題があるとは考えていないが、当該物質が環境及び食品中に残留することは公衆衛生の観点から好ましいことではない。
また、当該物質は難分解性及び高蓄積性の性状を有するものと判定されているが、毒性については、これまでに得られた既存文献の調査では重大な毒性を報告するものはないものの、その十分な評価をするには更に慢性毒性等の知見が必要である。
このため、今後、環境及び食品中の残留の推移並びに現在進められている慢性毒性等の追加調査の結果を踏まえ、必要に応じ使用の規制等所要の対策を講じてまいりたい。
TBTOの急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性及び発がん性については、厚生省においてこれらに関する調査を行つてきたところである。これまでに得られた既存文献の調査では、重大な毒性を報告するものはないが、TBTOの毒性を十分に評価するには、更に慢性毒性等の知見が必要であるので、これらに関する追加調査を行つているところである。また、TBTOの魚毒性については、水産庁において海産魚を用いて試験中である。
なお、TBTOの分解性及び生物体内への蓄積性については、通商産業省において従来から実施している既存化学物質の安全性点検の一環として調査したところ、難分解性及び高蓄積性の性状を有するものと判定したところである。
TBTOの一日許容摂取量及び当該物質を含む食品の安全性評価については、FAO/WHO合同食品規格委員会において検討されておらず、諸外国においても具体的な評価が行われているとは承知していないが、我が国においては専門家で構成された検討会において、現在までに入手し得る内外の文献等を資料として、現時点における暫定的一日許容摂取量を体重一キログラム当たり一・六マイクログラムと推定したものである。
なお、国際的に評価が行われていない理由については承知していない。
漁網防汚剤については、TBTOを含まないものも一部使用されているが、効果及び費用の面で問題が残るため、今後、関係団体とも協力して、これらの点につき更に検討を加えてまいりたい。なお、漁網防汚剤を使用する必要のない養殖用金網の使用も増加しているところである。
TBTOの代替化学物質については、民間企業において研究開発が行われており、今後ともその状況を注視してまいりたい。
現在までのところTBTOを含む漁網防汚剤の取扱いによつて健康障害が生じたとは聞いていないが、今後とも、水産関係団体を通じ、TBTOを含む漁網防汚剤の使用の実態等の把握に努めるとともに、養殖業者等に対し適切な取扱いについて注意を喚起してまいりたい。
TBTOについては、環境及び食品中の残留の推移並びに現在進められている慢性毒性等の追加調査の結果を踏まえ、必要に応じ使用の規制等所要の対策を講じてまいりたい。
なお、TBTOを含む漁網防汚剤については、従来から使用を自粛するよう水産業界を指導しているところである。
水産用の抗菌性医薬品については、用法・用量及び休薬期間等の使用上の注意が定められており、その遵守の徹底を図るため、養殖業者等に対するパンフレット配布、巡回指導、説明会等を行つているところである。
なお、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に基づく動物用医薬品の使用規制の対象医薬品は、その使用の実態、残留による人体への影響の可能性等を総合的に勘案して選定しているところである。
食品として安全な養殖魚の生産の確保を図るため、農林水産省において、出荷前の養殖魚を抽出し、すべての抗菌性医薬品を対象として、実態に応じた残留検査を実施しているところである。
奇形養殖魚については、養殖魚全体の信頼性を維持するため、関係者に対しその市場出荷を控えるよう注意を喚起してまいりたい。
また、焼却処分等のための施設の設置については、必要に応じ、新沿岸漁業構造改善事業等の活用を図つているところである。
養殖業の健全な発展を図るため、特に水産用医薬品の適正使用につき今後とも十分関係団体を指導するとともに、養殖管理の適正化に努めてまいりたい。
また、固定化負債を有する養殖業者については、必要に応じ、既存の制度資金の活用を図つてまいりたい。