衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和六十二年五月十五日受領
答弁第三五号

  内閣衆質一〇八第三五号
    昭和六十二年五月十五日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 原 健三郎 殿

衆議院議員滝沢幸助君提出戰後政治の反省と東京裁判などの所謂戰後問題に關する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員滝沢幸助君提出戰後政治の反省と東京裁判などの所謂戰後問題に關する質問に対する答弁書



第一について

1 極東国際軍事裁判については、同裁判をめぐる法的な諸問題に関して、種々の議論があることは承知しているが、国と国との間の関係においては、我が国は、サン・フランシスコ平和条約第十一条によつて、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しているところである。
2 サン・フランシスコ平和条約第十一条にいう judgment について、「裁判」との語を当てることが誤訳であるとの御指摘は当たらない。

第二について

1、2及び6 靖国神社の合祀対象者の範囲は、同神社が自主的に決定しているところである。
3及び4 公式参拝は制度化されたものではないので、今後、公式参拝を実施するかどうかは、その都度、諸般の情勢を総合的に考慮し、慎重に検討した上、自主的に決定すべきものである。
5 私人の立場での参拝を行うかどうかは、各国務大臣が私人として判断すべき事柄である。
7 内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で行う参拝については、戦没者に対する追悼を目的として、靖国神社の本殿又は社頭において一礼する方式で行う限り、憲法・第二十条第三項の規定に違反する疑いはないと考えている。
8 御質問のような立法措置に関しては、これまでも靖国神社法案として国会議員によつて国会に提出されてきたという経緯があるので、今後も、この問題については、関係者における議論の推移を見守つてまいりたい。

第三について

1 現段階において、内閣としては、憲法改正という問題を政治的日程にのせることは考えていない。
2 憲法第九条は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められており、自衛のための必要最小限度の実力の保持は同条によつて禁止されていないと解しているところである。
  また、憲法第二十条及び第八十九条における信教の自由に関する規定については、第二十条第一項前段及び第二項において信教の自由を保障した上、国その他の公の機関が宗教に介入し、又は関与することを排除する見地からいわゆる政教分離の原則に基づく規定として同条第一項後段及び第三項並びに第八十九条の規定が定められたものと解している。なお、同条は、公の支配に属しない慈善、教育又は博愛の事業に対する国その他の公の機関による財政面からの介入又は関与を排除することについても規定しているところである。

第四について

 我が国は、過去において、アジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立つて平和国家としての道を歩んできている。なお、中国との過去の関係に関しては、昭和四十七年九月二十九日付けの日中共同声明の前文において明らかにされているとおりである。
 また、御指摘の戦争の呼称に関しては、昭和二十年十二月のいわゆる神道指令を受け、法令中の「大東亜戦争」の文言を「今次ノ戦争」に改める措置がとられた経緯があるが、その後、当該戦争の統一的呼称に関し、特段の決定は行つていない。

第五について

1 ソ連の北方四島占拠は、法的根拠なくして行われている占拠であるという意味で不法占拠であるというのが従来よりの政府の見解である。
2 サン・フランシスコ平和条約第二条(C)項により我が国は千島列島及び南樺太に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したが、同条約にいう千島列島とは、我が国がロシアとの間に結んだ一八五五年の日露通好条約及び一八七五年の樺太・千島交換条約から明らかなように、ウルップ島以北の島々を指すのであつて我が国固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島は含まれていないというのが政府の見解である。
  我が国は、歯舞、色丹、国後、択捉の四島すべては歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であると主張しているところである。
3 北方領土の返還を求める国民世論は、北方領土返還を求める全会一致の国会決議の累次にわたる採択、北方領土返還実現に関する請願署名数の増人、全都道府県における北方領土返還のための県民会議の設立からも明らかなようにますます高まりをみせている。右を背景として、政府は昭和五十六年から二月七日を「北方領土の日」に決定し、以来、全国各地においてこの日を中心に関連の記念行事が開催されている。
  政府としては、かかる領土返還運動が今後一層充実されることが望ましいと考えており、その推進を図つていく所存である。
4 政府の一貫した基本的立場は我が国固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島の一括返還を実現して平和条約を締結することにより日ソ両国間に真の相互理解に基づく安定的関係を確立することであり、右立場にいささかの変更もない。
  政府としては、今後とも、かかる基本的立場を堅持して北方四島の早期返還をソ連側に要求し、粘り強く交渉を続けていく所存である。
5(一) 竹島については、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは明白であり、政府は、韓国政府が竹島に各種施設を構築し、不法占拠を続けていることは、誠に遺憾であると考えている。
 (二) 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、我が国は、現にこれを実効的に支配している。したがつて、尖閣諸島の領有権をめぐつて解決すべき問題はそもそも存在していない。
6 政府としては、北方領土問題は、基本的には日ソ二国間の問題であり、両国間の話合いで解決すべき問題であると考えている。他方、北方領土問題に関する国際啓発により、国際社会において北方領土問題の存在と我が国の主張の正当性につき理解を求めることも、日ソ両国間の交渉促進のための好ましい環境を作るとの観点から重要であると考えている。
  かかる観点から、我が国は、欧文パンフレット及びフィルム・ビデオを利用して海外の広報に努めるとともに、昭和五十五年の第三十五回総会以降、国連における外相一般討論演説において、毎年北方領土に言及する等により、我が国の正しい主張を広く国際社会に訴えている。

 右答弁する。




経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.