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昭和六十二年九月二十五日受領
答弁第三三号

  内閣衆質一〇九第三三号
    昭和六十二年九月二十五日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 原 健三郎 殿

衆議院議員(注)長亀次郎君提出石綿(アスベスト)汚染対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員(注)長亀次郎君提出石綿(アスベスト)汚染対策に関する質問に対する答弁書



一について

1 石綿による労働者の健康障害の防止については、石綿肺を含むじん肺の予防という観点から、昭和三十五年にじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)を制定し、その徹底を図つてきたところである。
  昭和四十年代末になつて、石綿と肺がんとの因果関係が明らかになつたことに対応し、昭和五十年に石綿を発がん性物質として規制したところであり、以来、石綿による肺がん等石綿障害の予防については、労働行政の重点施策の一つとして、あらゆる機会をとらえてその対策の徹底を図つてきたところである。
  また、一般環境大気中の石綿濃度は作業環境における濃度に比べてはるかに低く、直ちに問題となるレベルではないと判断している。

2 石綿製品製造業務に従事する労働者の健康障害の発生件数として把握しているのは、石綿による肺がん及び中皮腫であり、昭和五十六年度から昭和六十年度までの五年間における合計は、それぞれ十三件及び二件である。
  また、石綿等を製造し、又は取り扱う業務については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及びじん肺法において、当該業務に従事する労働者に対し、雇入れ等の際及び一定期間以内ごとに所定の健康診断を行うよう、事業者に義務付けているところである。

二について

1 環境庁では、昭和五十六年度から三か年にわたり石綿について立地特性別の環境濃度測定、流通経路調査等多面的な各種調査を実施した。また、昭和六十年度において、全国的なモニタリング調査として環境大気中の石綿濃度の測定を行つた。これらの結果、一般環境大気中の石綿濃度は作業環境の評価基準である管理濃度の二桁から四桁程度低いレベルであり、直ちに問題となるレベルではないと判断している。
  今後とも、環境大気中の石綿濃度のモニタリング等を行い、必要な対策が講じられるよう努めてまいりたい。

2 我が国の作業環境濃度の評価方法は、米国の個人ばく露の評価方式とは異なる作業環境の管理濃度評価方式を採つているところであるが、評価の基準となる管理濃度の設定に当たつては、従来、日本産業衛生学会、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)等の示す許容濃度を参考にしてきており、今後ともこれらの動向を踏まえつつ、知見の集積に努め、必要な対策を講じてまいりたい。

3 石綿等の有害物の表示の方法については、労働安全衛生法により容器又は包装に直接表示するか、表示内容を記載した文書の交付を義務付けており、この表示に際しては、一定の様式を示し、これにより、業界団体を通じての指導、あるいは監督指導等のあらゆる機会をとらえて、その一層の徹底を図つているところである。
  なお、労働安全衛生法で表示義務が課せられていながら、その容器又は包装に表示がないものについては、表示義務者の所在地を管轄する都道府県労働基準局を通じて是正させる等所要の措置を講じているところである。

4 特定化学物質等作業主任者技能講習については、特定化学物質等作業主任者技能講習規程(昭和四十七年労働省告示第百二十八号)において、講習科目の範囲及び時間、修了試験等につき定めており、これにより当該作業主任者の資格及び技術基準は適正に確保されている。

5(1) 昭和六十一年九月六日付けの労働基準局安全衛生部長名「建築物の解体又は改修の工事における労働者の石綿粉じんへのばく露防止等について」は、建築物の解体等の工事に従事する労働者の石綿粉じんによる健康障害を防止するため、関係団体に対し、法令に規定する対策も含めた事業者の講ずべき措置について、その構成員である事業者への周知徹底を要請したものである。
     事業者の講ずべき措置については、事業者等に対する指導等を通じてその徹底を図つてまいりたい。

 (2) 建設工事に係る計画届出制度は、一定の規模・期間以上の工事の施工に際し、当該工事に係る安全衛生上の問題点を総合的にチェックし、安全衛生管理を徹底させることを目的としたものであり、建築物の中に部分的に存在する石綿の解体等の作業については、計画届出制度によるよりも、その安全な作業の方法を徹底することがより効果的である。

 (3) 石綿を含有する建築物の解体工事等については、労働省は、既に建設業労働災害防止協会に対し、作業手順を含めた対策を行わせるための作業マニュアルとして「建築物の解体又は改修工事における労働者の石綿粉じんへのばく露防止対策の進め方」を作成させており、あらゆる機会を通じて同マニュアルの周知徹底を図つているところである。
     なお、本年六月からは同協会に講習会を開催させて、その周知徹底を図つており、今後ともあらゆる機会を通じて適正な工事の施工についての指導に努めてまいりたい。

三について

 石綿の使用実態に関しては、環境庁において昭和五十六年度から三か年にわたり概括的な調査を実施し、昭和六十年二月に取りまとめたところである。
 また、石綿吹付け材の使用実態に関しては、文部省において全国の国公立学校の施設について、運輸省において公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和四十二年法律第百十号)第二条に規定する特定飛行場の周辺の国庫補助により防音工事を実施した施設について、及び防衛施設庁において防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第二条第二項に規定する防衛施設の周辺の国庫補助により防音工事を実施した施設について、それぞれ調査を実施しており、今秋には取りまとめることとしている。さらに、建設省においてその所掌に係る官庁施設について、本年度中に調査を実施することとしている。
 今後とも、関係省庁において必要に応じ石綿使用の実情把握に努めることとしている。

四について

 石綿を含む産業廃棄物の処理に当たつては、従来から、生活環境の保全を図るため廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)の規定に基づき定められている収集、運搬及び処分の基準を遵守するよう指導を行つてきたところである。
 さらに、今後大量の排出も考えられる石綿を含む建設系産業廃棄物の処理について、来年夏頃を目途に、処理に関するガイドラインを策定することとしている。
 なお、石綿を含む産業廃棄物については、埋立て終了後の問題も勘案しつつ、その処理方法について検討してまいりたい。

五について

1 石綿による労働者の肺がん等の予防を図るため、昭和五十年に特定化学物質等障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)の一部を改正し、原則として石綿の吹付け作業を禁止したほか、特別管理物質として作業の記録及び健康診断の結果の記録の三十年間の保存等について規制を強化したところである。
  さらに、昭和五十一年に石綿粉じんによる健康障害防止について通達し、自動車のブレーキドラム等からのたい積物除去作業については昭和五十三年に、石綿を含む建築物の解体工事等については昭和六十一年にそれぞれ通達し、対策の徹底を図つているところである。
  このほか、昭和六十年に我が国における石綿の生産使用実態、排出抑制技術等を取りまとめ、同年及び昭和六十二年に関係業界に対し、石綿の大気中への排出抑制を要請したところである。また、代替品の研究開発についてもその推進に努めているところである。

2 現在、代替製品としては、ガラス繊維、炭素繊維等の利用が検討されているところである。これらの材料の中には、耐熱性、耐摩耗性等の個々の特性については石綿に劣らぬものもあるが、価格を含めた総合評価においては石綿に匹敵するものが見当たらないのが現状である。
  また、代替材料の安全性については、現在、政府内において実験等を行い、知見の集積に努めているところであるが、それらの結果を踏まえ、適切に対処してまいりたい。

 右答弁する。




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