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平成元年十二月二十二日受領
答弁第一二号

  内閣衆質一一六第一二号
    平成元年十二月二十二日
内閣総理大臣 海部俊樹

         衆議院議長 田村 元 殿

衆議院議員新村勝雄君提出船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員新村勝雄君提出船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する再質問に対する答弁書



一について

 ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)以外のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)については、十三物質が化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)第二条第四項に規定する指定化学物質に指定されている。
 TBT化合物による環境汚染の状況については、平成元年九月に環境庁が中央公害対策審議会の審議を経て発表した「昭和六十三年度生物モニタリング(トリブチルスズ化合物)結果の概要」において、「直ちに危険な状況にあるとは考えられない」とされているものの、同時に「現在のTBT化合物の使用状況を勘案すれば、本化合物に関する調査を継続することにより、今後とも環境汚染の状況を監視していくことが必要である」とされている。政府としては、今後とも、TBT化合物を含有する船底塗料等について、その製造、使用等の面で、環境の汚染を防止するためのマニュアルの普及、製品中のTBT化合物の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導し、環境汚染状況の監視を継続するとともに、化審法上必要な場合には同法に基づく規制を行う等環境汚染対策を推進していくこととしている。

二について

 化審法に基づく化学物質の試験については、その項目等が新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令(昭和四十九年総理府・厚生省・通商産業省令第一号)等によって定められている。その内容は、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会の審議を経て定められたものであり、経済協力開発機構(OECD)が公表している化学物質テスト・ガイドラインにも合致している。
 この試験方法に基づいて実施された試験の成績に基づき、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会で審議した結果、トリブチルスズ=クロリドについては、昭和六十三年に化審法第二条第四項に規定する指定化学物質に該当すると判定され、一方、TBTOについては、今般、同法第二条第二項に規定する第一種特定化学物質に該当すると判定されたものである。

三について

 TBT化合物及びトリフェニルスズ化合物(以下「TPT化合物」という。)の製造数量等については、先の内閣衆質一一六第一号(平成元年十月二十日付け)の答弁書の一についてにおいて述べたとおりである。
 なお、TBTOを除くTBT化合物十三物質及びTPT化合物七物質を各々一括して答弁したのは、環境中での残留状況を各々一括して調査していることを勘案したものである。

四について

 船底塗料や漁網防汚剤の製品中のTBT化合物及びTPT化合物(以下「TBT化合物等」という。)の含有率について、御指摘の「具体的に何パーセント以下」という指導ではなく、可能な限り抑制する旨の指導としたのは、これらの製品中のTBT化合物等の含有率が一律でなく、また、製品の基本的効能を維持しつつ製品中のTBT化合物等を低減することの可能な範囲が製品により異なることを勘案したことによるものである。
 なお、最近におけるTBT化合物の製品中の含有率は、指導を踏まえ、一割程度に抑制されていると承知している。

五について

 我が国の船舶の種類別及び材質別の総トン数の合計については、別表一のとおりである。
 なお、有機スズ化合物を含有する船底塗料(以下「有機スズ系船底塗料」という。)を使用している船舶の種類別及び材質別の割合並びにモノマー系の有機スズ系船底塗料を使用している船舶とポリマー系の有機スズ系船底塗料を使用している船舶の割合は、把握していない。

六について

 我が国の周辺海域を航行する船舶のうち有機スズ系船底塗料を使用している船舶の量については、把握していない。

七について

 昭和六十三年の港湾統計によれば、我が国の港湾に入港した外航船(日本船舶であるものを含む。)の総トン数の合計は、十三億七千九百八十六万七千トンである。
 なお、外航船についての船籍別、種類別、材質別及び滞留日数別の総トン数の合計並びに有機スズ系船底塗料を使用している外航船の割合については、把握していない。

八について

 有機スズ系船底塗料の使用が規制された場合に、何割の船舶がその対象となるかは不明であるが、政府は、現在、有機スズ系船底塗料の使用の自粛等を指導しており、今後、汚染の状況を勘案しながら、引き続き必要な対策について検討することとしている。

九について

 昭和六十三年度に東京湾において実施したTBT化合物による汚染状況の調査結果は、別表二のとおりである。
 当該調査の分析方法はガスクロマトグラフ法であり、検出限界は〇・〇〇〇〇〇五PPmとなっている。また、水質の分析値はトリブチルスズ=クロリド換算したものであり、底質の分析値はトリブチルスズ=クロリド換算した乾重量当たりのものである。

十について

 各国の規制状況について現在把握している内容は、別表三のとおりである。
 各国の有機スズ化合物に関する水質基準の設定例については、現在のところ承知していない。

十一について

 船底塗料における有機スズ化合物の使用に関する問題については、国際海事機関(IMO)海洋環境保護委員会の第二十六回会合(昭和六十三年九月五日から同月九日まで開催)において提起され、第二十七回会合(平成元年三月十三日から同月十七日まで開催)において作業計画に取り入れられた。これを受けて、第二十九回会合(平成二年三月十二日から同月十六日まで開催予定)以降議題として取り上げられることとなっている。

十二について

 わさびの成分である「ベンジルイソチオシアネート」は海藻や貝類を寄せ付けない効果を有しているという報告があることは承知しているが、水中における長期安定性がない、大量生産をする手法が開発されていない等の理由から、直ちに有機スズ化合物の代替品となるものでないと理解している。
 なお、付着生物の忌避等の機構に関する研究については、政府機関においても行われているところであるが、このような研究の蓄積は有機スズ化合物の代替品の開発にも資するものとなると考えている。



別表一 日本船舶の種類別及び材質別総トン数の合計
日本船舶の種類別及び材質別総トン数の合計


別表二 TBT化合物による東京湾の汚染状況の調査結果
TBT化合物による東京湾の汚染状況の調査結果


別表三 海外における有機スズ化合物の規制状況
海外における有機スズ化合物の規制状況




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