平成五年一月二十二日受領
答弁第一〇号
内閣衆質一二五第一〇号
平成五年一月二十二日
衆議院議長 櫻内義雄 殿
衆議院議員小森※(注)邦君提出代用監獄での長期勾留と冤罪の可能性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員小森※(注)邦君提出代用監獄での長期勾留と冤罪の可能性に関する質問に対する答弁書
一について
検察官が上告しなかったのは、御指摘の控訴審判決には刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百五条に定める適法な上告理由がない上、証拠を検討しても、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められなかったからであると承知している。
いわゆる代用監獄が一般的に自白の強要等の行われる危険の多い制度であるとは理解していないが、昭和五十五年に、それ以前は刑事部門で担当していた留置業務を捜査を担当しない総務部門又は警務部門に移管したのを始め、捜査と留置業務の分離に努めてきたところであり、今後とも、その徹底を図ってまいりたい。
御指摘の狭山事件における自白の任意性については、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、答弁は差し控えたい。
なお、右狭山事件については、昭和五十二年八月九日の最高裁判所の上告審決定において、「被告人の自白は不当に長く勾留された後の自白である」との主張に対し、「事件の性質、規模、証拠収集の経過や取調状況等に照らせば、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白とは認められない」と判示されたほか、取調べや留置等の状況に関して自白の任意性が否定されることはなかったと承知している。
前記狭山事件の被疑者は、昭和三十八年五月二十三日から同年六月十三日までの二十二日間、被疑者として逮捕・勾留された後、同日起訴されて引き続き被告人として勾留され、更に同月十七日から同年七月九日までの二十三日間、右逮捕・勾留に係る被疑事件とは別の被疑事件により、被疑者として逮捕・勾留された後、同日起訴されたものであり、御指摘の四十八日間の身柄拘束期間には、右二個の被疑事件の逮捕・勾留期間が含まれているところ、被疑者は、右二個の被疑事件につき、それぞれ身柄拘束の理由及び必要性について司法審査を受けた上で逮捕・勾留されたものであり、身柄拘束の期間は事件ごとに計算すべきものであるから、右狭山事件における逮捕・勾留の手続は、刑事訴訟法が規定する起訴前の逮捕・勾留期間の制限について述べた御指摘の報告の趣旨に反するものではない。
なお、最高裁判所は、前記上告審決定において、同事件における逮捕・勾留の手続は適法である旨判示しているところである。