平成五年一月二十二日受領
答弁第一四号
内閣衆質一二五第一四号
平成五年一月二十二日
衆議院議長 櫻内義雄 殿
衆議院議員谷村啓介君提出警察捜査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員谷村啓介君提出警察捜査に関する質問に対する答弁書
一について
どのような裁判であれ、確定した判決については、これを謙虚に受け止めているところである。
捜査は、法令に定められた手続に従い証拠によって事案の解明を行うものであり、それが適正に行われるべきことは当然である。
警察においては、これらの法令の趣旨や判決から得られた捜査上の教訓等を踏まえながら、捜査活動の適正の確保に努めているところである。
御指摘の狭山事件については、埼玉県警察では、事件の重要性にかんがみ、特別捜査本部を設置し、事件の早期解決を図るよう強力に捜査を推進したものと承知している。
また、警察庁においても、必要な連絡調整の事務を行ったところである。
御指摘の捜索は、その都度必要と認められる範囲で実施されたものと承知している。
当時の事情について詳細は不明であるが、一般的にいって、被疑者の供述に基づいて関係箇所の捜索を行う場合、供述内容の信ぴょう性の検討、捜索準備手続等に時間を要することが通例であり、また、捜索を実施する場合には捜索先の状況等も考慮すべきことを考え合わせると、供述がなされた時期とこれに基づく捜索の実施にある程度の時間的な差が生ずることは、不自然なことではない。
前記事件において、被疑者を逮捕した後に同人宅を訪問した警察官がいたことは承知しているが、その具体的な事実関係については不明である。
捜索に際して証拠物を押収する場合、通常、その証拠物及び発見状況等を写真撮影しているところである。
前記事件においても、訴訟記録によれば、御指摘の万年筆の発見状況等については、写真撮影が行われていたものと承知している。
御指摘の万年筆の発見経過については、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、答弁は差し控えたい。
なお、右万年筆が発見された場所については、最高裁判所は、昭和五十二年八月九日の上告審決定において、「捜索されてしかるべき場所ではあるが、鴨居の高さや奥行などからみて、必ずしも当然に、捜査官の目に止まる場所ともいえず、捜査官がこの場所を見落すことはありうるような状況の隠匿場所」と判示している。
御指摘の万年筆及びインキについては、現在、東京高等裁判所に再審請求事件が係属中であるので、答弁は差し控えたい。
なお、右万年筆については、第一審である浦和地方裁判所の昭和三十九年三月十一日の判決において、証拠能力があるものとして、証拠の標目に掲げられ、控訴審及び上告審においても、これが証拠から排除されていない上、最高裁判所は、前記上告審決定において、万年筆が被害者の所持品であって、被告人が本件犯行現場から持ち去りその所在を秘密にしていたが、被告人の自供に基づいて発見されたものであるとの原判決の認定は、正当である旨判示しているところである。