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平成七年十二月二十二日受領
答弁第一一号

  内閣衆質一三四第一一号
    平成七年十二月二十二日
内閣総理大臣 村山富市

         衆議院議長 土井たか子 殿

衆議院議員今村修君提出「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」の報告書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員今村修君提出「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」の報告書に関する質問に対する答弁書



一の1及び二の1について

 「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)においては、基準地震動の策定に当たって、解放基盤表面の地震動の水平方向における最大速度振幅は地震動の実測結果に基づいた経験式等を参照して定めることができる等とされているが、当該経験式としては、昭和五十四年に大崎順(より)彦氏が発表した基準地震動評価に関するガイドラインに示された評価方法(以下「大崎の方法」という。)が一般的に用いられている。
 大崎の方法においては、評価地点における震央距離が一定の計算式を用いて求められる距離(以下「震央域外縁距離」という。)より短い場合には、当該地点の震源距離及び応答スペクトルは、震央距離にかかわらず震央域外縁距離に基づいて算定することとされている。
 直下地震及び「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書」(以下「検討会報告書」という。)の第五 ― 五図に示されているT1の地震についてはいずれも評価地点における震央距離が震央域外縁距離より短いことから、大崎の方法に従えば、耐震設計審査指針に示されているマグニチュード六・五の直下地震の震源距離は約十キロメートルと算定され、また、検討会報告書の第五 ― 五図に示されているT1の地震の応答スペクトルは震央距離を約二十キロメートルとして算定されることとなる。
 なお、検討会報告書の第五 ― 五図においては、御指摘のF1の地震に関する記載はない。

一の2について

 現在、耐震設計審査指針等により、原子力施設の耐震設計において直下地震を評価する必要がある場合には、その地震の震源距離は大崎の方法に従い算定されており、同方法によれば、マグニチュード六・五の直下地震を評価する場合の震源距離は約十キロメートルとなることから、当該震源距離を七・二キロメートルとするといった大崎の方法に即していない前提に立った御質問については、答弁を差し控えたい。

二の2について

 大崎の方法においては、震央距離が震央域外縁距離より短い地点における最大速度振幅は、震央距離にかかわらず震央域外縁距離に基づいて算定される値とされており、震央距離に応じて変わるものではない。したがって、大崎の方法は近距離地震動の最大速度を△NEARでカットせずに求めることとしているとの前提に立った御質問については、答弁を差し控えたい。

三の1について

 株式会社松村組技術研究所の地下十五メートルで得られた応答スペクトルは、岩盤上ではなく岩盤中のものであり、これには観測点上部の地盤の影響が含まれている。したがって、当該応答スペクトルと解放基盤表面上における応答スペクトルである大崎スペクトル(大崎の方法により求められる応答スペクトルをいう。以下同じ。)を直接比較することは適当でなく、これらのスペクトルを比較するとの前提に立った御質問については、答弁を差し控えたい。

三の2について

 内陸の地震の震源断層に近く震源にも近い地点での断層モデルによる応答スペクトルは地質、地盤の調査等によって求められる各種パラメータを用いて得られるため、断層モデルによる応答スペクトルが大崎スペクトルを上回るか否かについて及び大崎スペクトルが断層モデルによる応答スペクトルより上回る場合等の条件については、一概に述べることはできない。

三の3について

 大崎スペクトルが震源断層に近く震源に近い地点で応答スペクトルを過小に評価するとの知見等は得られていない。

四の1について

 耐震設計審査指針においては、基準地震動S1の発生源として考慮する活断層は、
 @ 歴史資料により、過去に地震を発生したと推定されるもの
 A A級活断層に属し、一万年前以降活動したもの、又は地震の再来期間が一万年未満のもの
 B 微小地震の観測により、断層の現在の活動性が顕著に認められるもの
とされており、また、基準地震動S2の発生源として考慮する活断層は、
 @ 基準地震動S1で考慮されないA級活断層に属するもの
 A B及びC級活断層に属し、五万年前以降活動したもの、又は地震の再来期間が五万年未満のもの
とされている。
 このような基準地震動S1又はS2の策定に際して考慮する活断層の評価方法は、地質時代的に見て最近まで繰り返し活動していた断層は将来も活動して地震を引き起こす可能性があること、繰り返し活動していたことが確認された断層の調査結果から繰返し期間の大半は約一万年以内、これより長いものでも約五万年以内に収まっていること、一般に活動度が高ければ高いほど繰返し期間が短いとされていること等の地震学、地質学等の知見を工学的に判断して定められたものである。また、少なくとも現段階においては、これを見直すべき新たな知見等は得られていない。

四の2について

 耐震設計審査指針においては、基準地震動S2の決定に際し、詳細な文献調査、現地調査等に基づき存在が明らかとなっている活断層等を評価することに加え、念には念を入れるとの観点から、マグニチュード六・五の直下地震も考慮の対象に含めることとされているが、これは、マグニチュード六・五以下の地震では地表に断層が現れない場合もあり最悪の場合にはこのような地震を引き起こす活断層を見逃す可能性があるとの地震学、地質学等の知見を工学的に判断して定められたものであり、少なくとも現段階においては、基準地震動S2の決定に際して想定すべき直下地震の規模をマグニチュード六・五からマグニチュード七に引き上げるべき新たな知見等は得られていない。したがって、マグニチュード七の直下地震を想定する必要はなく、こうした前提に立った御質問については、答弁を差し控えたい。

四の3について

 耐震設計審査指針においては、基準地震動S1及びS2の決定は最も影響の大きい地震を想定して行うこととされているが、その際想定される地震を引き起こす活断層は繰り返し活動してきているものであり、一般に、その活動の結果が地表又はその付近の地形及び地質構造に何らかの痕跡として認められることとなる。
 御指摘の平成七年兵庫県南部地震の場合も、現段階では野島断層の北東方向神戸側において地震断層は地表に確認されていないものの、当該地震が発生したのは、地表又はその付近の地形及び地質構造から既にその存在の明らかとなっていた断層群の付近である。また、御指摘のノースリッジ地震の場合も同様である。
 したがって、地下十数キロメートルの活断層を直接確認できないとしても、地表又はその付近の地形及び地質構造に関する十分かつ詳細な文献の調査及び現地調査の結果に基づき、当該活断層の活動による痕跡を慎重に評価することにより、当該活断層による原子力発電所等への影響が適切に評価されることとなる。
 なお、平成七年兵庫県南部地震については、地震発生前の知見に基づいてもマグニチュード七・二を上回る規模の地震が想定され得た旨検討会において報告がなされている。

五の1について

 科学技術庁、通商産業省及び原子力安全委員会等は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)に違反する事実がないにもかかわらず、原子力安全委員会により指針が策定されたことのみをもって、当該指針が策定される以前に原子炉等規制法に基づき行われた設置等の許可、変更の許可、指定又は承認を取り消すか否かについての審査を行うことができるとの法的権限は与えられていない。

五の2について

 科学技術庁及び通商産業省は、本年九月二十九日、耐震設計審査指針が策定される以前に設置の許可等がなされた主要な原子力施設の耐震安全性の確認の結果について原子力安全委員会に報告したが、これは原子力施設の安全確保に万全を期すとの観点力ら同委員会にその内容を説明し意見等力ある場合にはそれを聴取するため行ったものであり、同委員会は、その内容を確認したものである。
 また、前述の原子力安全委員会への報告においては、基準地震動の最大値として模擬地震波の最大速度振幅を用いているが、これは、原子力施設の耐震安全性の確認に当たって応答スペクトルに基づいて作成される模擬地震波に基づく手法が幅広く用いられていることによるものである。
 耐震設計審査指針等により基準地震動S1及びS2を想定して耐震設計を行うこととされた原子力施設についての模擬地震波の最大速度振幅は、当該施設の設置許可申請書等(以下「申請書等」という。)に記載され、従前から公開されており、例えば、日本原子力発電株式会社敦賀発電所二号炉(以下「敦賀二号炉」という。)については、御指摘のとおり二十六カインである。また、耐震安全性の確認は模擬地震波の最大速度振幅により十分行い得ることから、これらの施設のすべての申請書等に応答スペクトルを規定する基準地震動の最大速度振幅が記載されているわけではないが、申請書等にその記載がある場合には、従来から公開されている。例えば、敦賀二号炉については、御指摘のとおり十五カインである。

五の3について

 耐震設計審査指針は発電用原子炉施設等の安全確保のため考慮すべき事項のうち特に耐震性の観点に着目した設計方針を定あた指針であるが、当該指針を用いて耐震設計を行うこととされている原子炉施設においては、原子炉等規制法及び電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)等に基づき、設計、建設、運転の各段階において安全確保対策が講じられている。このため、当該指針においては、経年変化、施工.製作ミス及び人為ミスに係る安全確保対策の記載はなく、現在のところ、記載を行う予定もない。





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