平成十年十二月十五日受領
答弁第二号
内閣衆質一四四第二号
平成十年十二月十五日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員※(注)井英勝君外二名提出い草産地救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員※(注)井英勝君外二名提出い草産地救済に関する質問に対する答弁書
一について
い草を原料とする畳表については、近年、住宅における和室の減少等により需要が減少傾向で推移する中で、平成九年六月以降、新規住宅着工戸数の大幅な減少等により需要が大きく減少し、これに伴いその価格が低落しており、原料であるい草の生産を取り巻く情勢は厳しいと認識している。
畳表の原料であるい草は、大部分が熊本県で生産されており、畳は我が国の住宅等において広く用いられているとともに、茶道や華道の場においても広く活用されていると認識している。
熊本県における畳表の価格は、平成九年六月から前年価格を下回る状況となったが、い草及びい製品の輸入量は、平成六年に三万九千四百六十七トン、平成七年に三万九千八百三十五トン、平成八年には三万九千九百三十ニトンとほぼ横ばいに推移した後、平成九年には三万五千七百ニトンと減少しており、輸入の増加が今回の急激な価格の低落の原因との御指摘は当たらないと考える。むしろ同時期に畳表の需要に大きな影響を及ぼす新規住宅着工戸数が大幅に減少していること等から、現在の畳表の価格の低落は、主としてこれらによる需要の減少に起因すると考える。
したがって、現在のい草輸入とい草の国内生産との関係は、農業基本法(昭和三十六年法律第百二十七号)第十三条に規定する「農産物の輸入によつてこれと競争関係にある農産物の価格が著しく低落し又は低落するおそれがあり、その結果、その生産に重大な支障を与え又は与えるおそれがある場合」には該当しないと考える。
農業基本法第十三条の規定にいう「関税率の調整、輸入の制限」にはセーフガード措置の発動も含むものと解される。なお、実際のセーフガード措置の発動については、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定(以下「関税及び貿易に関する一般協定」という。)第十九条の規定及びセーフガードに関する協定に則して、関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)又は「外国為替及び外国貿易法」(昭和二十四年法律第二百二十八号)に基づいてなされるものである。
い草産地において経営難に陥った個別農家に対する支援として、営農負債借換えのための農家負担軽減支援特別資金等が既に措置されており、また、既貸付けの農林漁業金融公庫資金における償還条件の変更等の手続が円滑に進むよう、本年七月に農林水産省から農林漁業金融公庫に対する依頼を行うとともに、主産地の熊本県において、農林漁業金融公庫資金等の制度資金の償還条件の変更等が困難な農家に対する新たな借換資金の貸付けや農家の経営相談が行われているところであることから、御指摘の緊急融資等の措置を講ずることは考えていない。
平成十年度の農業生産体制強化総合推進対策事業については、い草産地への支援も含めて、本事業の趣旨、他の地域等で予定されている事業との関係、事業の執行状況等を踏まえて実施しているところである。
公共施設への国産い草の優先的使用の促進については、関税及び貿易に関する一般協定第三条等により、国内産品を輸入産品に比べて有利に扱うことは許されないことから困難であるが、今後とも、その需要の拡大のため、品質向上、低コスト化への取組や国産畳表についての普及啓発を支援してまいりたい。
商品の表示は、本来、事業者の責任において適正になされるべきものであると考えているが、農林水産省としては、い製品の国産表示の推進がい草産地の振興を図るために必要との観点から、生産者団体が自主的に取り組んでいる畳表の国産表示について支援しているところである。