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平成十一年一月十九日受領
答弁第四号

  内閣衆質一四四第四号
    平成十一年一月十九日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員坂上富男君提出旧国鉄債務のJR各社強制負担問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員坂上富男君提出旧国鉄債務のJR各社強制負担問題に関する質問に対する答弁書



一について

 日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(平成十年法律第百三十六号。以下「債務等処理法」という。)に基づく負担に対して、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(以下「JR」という。)が今後どのように対応していくかについては、現時点においては、それぞれのJRにおいて検討中であると聞いている。

二について

 債務等処理法に基づきJRが負担する具体的な額については、現在、日本鉄道共済組合がJRにデータの提供を求めつつ、計算を行っているところであると聞いている。
 JR等(新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成三年法律第四十五号)附則第十九条の規定による改正前の日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号)第十一条第二項の承継法人、運輸施設整備事業団及び債務等処理法第九条の指定法人をいう。以下同じ。)の負担は、債務等処理法が施行された平成十年十月二十二日から生じている。JR等は、日本鉄道共済組合に対して、@日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成十年政令第三百三十六号)第七条の規定による改正前の日本国有鉄道改革法等施行法の施行に伴う経過措置等に関する政令(昭和六十二年政令第五十三号)第十三条の二第一項第一号に掲げる額に、負担配分率を乗じて得た額の二分の一に相当する額とA債務等処理法の施行の日から@の額がすべて納付されるまでの間の利子に相当する額とを合算した額を負担することとされており、この利子に相当する額は、資金運用部預託金に付する利子の利率を定める政令(昭和六十二年政令第三十二号)第一条第六号に掲げる利率により生ずるものとして計算することとされている。
 次に、JRからそれぞれ日本鉄道共済組合に対して毎年度支払われるべき額は、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律施行令(平成十年政令第三百三十五号)第四条第一項の規定により日本鉄道共済組合の当該年度の予算をもって定めることとされている。日本鉄道共済組合は、厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成八年法律第八十二号)附則第十九条の規定による、厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(平成九年政令第八十五号)第二十九条第一項に規定する納付日における厚生年金保険の管掌者たる政府に対する移換金の納付に支障を生じないよう、期限を付して当該予算で定めた額の支払を求める予定であると聞いている。
 また、当該期限までにJRから日本鉄道共済組合への支払が行われなかった場合には、JRは当該期限の到来した時から遅滞の責任を負うこととなる。その場合の損害賠償の額については、日本鉄道共済組合は、JRとの間で一定の金利を用いて計算される損害賠償の額の予定を行うこととしていると聞いており、その場合には当該額となる。

三について

 日本鉄道共済組合が、債務等処理法において定められたJRの負担について支払を求めることとなる。

四及び五について

 1 平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律に基づき日本鉄道共済組合の長期給付事業が平成九年四月に厚生年金保険に統合されたことに伴い日本鉄道共済組合が厚生年金保険の管掌者たる政府に対して納付するものとされた移換金に係る日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)の負担分のうち昭和六十二年四月に行われた日本国有鉄道の経営形態の抜本的改革(以下「国鉄改革」という。)時にJRの社員となった者に係る国鉄改革前の国鉄共済組合の組合員期間(以下「改革前組合員期間」という。)を計算の基礎として算定される額の二分の一については、債務等処理法の規定により、JRの負担とされたところである。この債務等処理法は、立法府である国会における各般の論議を経て平成十年十月十五日に成立し、同月二十二日から施行されたところであり、政府は、この法律を誠実に執行すべき責務を有するものである。
 2 国鉄改革においては、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)とは全く別個の組織としてJRが設立され、国鉄の鉄道事業を承継したが、JRの社員の共済制度については、それまでの国鉄共済組合が日本鉄道共済組合として同一性をもって存続するものとされ、国鉄の職員からJRの社員となった者に係る年金給付については、これらの者に係る改革前組合員期間及び国鉄改革以後の日本鉄道共済組合の組合員期間(以下「改革後組合員期間」という。)を合わせた期間をこれらの者の組合員期間として給付額を計算し、日本鉄道共済組合の組合員の掛金及び事業主の負担金等をもって当該年金給付に要する費用に充てることとされた。
   日本鉄道共済組合の長期給付事業は、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律に基づき、平成九年四月に厚生年金保険に統合されることとされたが、その際、統合後の厚生年金保険の管掌者たる政府が支給する年金給付のうち国鉄の職員であった者に係るもの及び日本鉄道共済組合の関係事業主であるJR、事業団等の社員又は職員に係るものの原資に充てるため、日本鉄道共済組合は、同法附則第十九条の規定により、厚生年金保険の管掌者たる政府に対して所要額を移換金として納付するものとされた。
   当該移換金の額のうち日本鉄道共済組合の積立金では不足する額については、同法附則第五十四条第二項の規定により、日本鉄道共済組合の関係事業主であるJR、事業団等が分担して負担することとされたが、当該不足する額のうち改革前組合員期間を計算の基礎として算定された額については、同法附則第八十三条の規定により追加された日本国有鉄道改革法等施行法(昭和六十一年法律第九十三号)第三十八条の二の規定により、国鉄が移行した事業団が負担することとされた。
 3 1で述べたとおり、この事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定される額の二分の一については債務等処理法の規定によりJRが負担することとされたが、当該措置は、関係者の負担の公平を確保し、将来にわたる一般国民の負担の軽減を図ること及びJRの社員に係る年金給付の原資を確保し、社会保障制度の重要な一環である公的年金制度の適正かつ円滑な運営を期することという公共の福祉の実現を目的とするものであり、次のような理由からこのような公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであり、憲法第二十九条第一項及び第二項の規定との関係で問題が生じることはないものと考える。
 (一) 日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定される額については、これらの者の退職後に、改革後組合員期間のみならず改革前組合員期間も計算の基礎とする年金給付の原資となるものであることから、当該額の負担は年金給付というこれらの者の福利厚生のために必要なものであるということができ、ひいてはこれらの者の雇用主であるJRにとっても経営上有益なものであること。
 (二) 仮に当該額をJRが一切負担しないこととすると、当該額について最終的には一般国民に対して負担を求めることとならざるを得ないが、(一)で述べたとおりJRの社員ひいてはこれらの社員の雇用主であるJRにとって有益なものと考えられる当該額の負担については、一般国民にすべて負担を求めるよりも、関係事業主として利害関係を有するJRも負担することがより適当であると考えられること。
 (三)厚生年金保険への統合前においては、JRが関係事業主として事業主負担をしていた日本鉄道共済組合の給付財源の不足について他の被用者年金制度から支援が行われており、厚生年金保険への統合後も、統合前の期間に係る給付財源の不足について他の被用者年金制度からの支援が継続されることが予定されているが、債務等処理法において定められたJRの負担の額は、これらの支援により関係事業主としてJRが受ける利益と比較して少額の範囲にとどまるものであり、この点において過重な負担とはいえないこと。
 憲法第二十九条第三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定しているが、同項は、社会的に受認すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課する場合には正当な補償を要することとしたものと考えられ、(一)から(三)までに述べた理由により合理的な範囲内でJRに負担を課することは、JRが受認すべき制限の範囲を超える特別の犠牲を課するものとはいえず、同項の規定による補償を行う必要はないと考える。
 なお、旧国鉄債務のJR強制負担問題に関する質問主意書に対する答弁書(平成十年二月十七日内閣衆質一四二第三号)の一及び二についての3で述べた他の被用者年金制度からの支援については、それぞれの組合員等の相互扶助を本来の目的とする共済組合等に、日本鉄道共済組合の組合員であった者に係る年金給付費用に充てるため、拠出金の納付をさせることとしており、法律に基づき法人に金銭負担の義務を負わせる点において異なることはない。

六について

 国鉄改革の実施に伴い事業団において処理することとされた債務等は、当面、土地その他の資産の処分等により処理することとされ、昭和六十三年一月の閣議決定においては、その処理について「土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る事業団の債務等については最終的には国において処理するものとするが、その本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置」については、雇用対策、土地の処分等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入・歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定する」という基本方針が定められた。
 この国鉄改革の実施に伴い事業団において処理することとされた債務等とは別に、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律において、日本鉄道共済組合の長期給付事業の厚生年金保険への統合に伴い厚生年金保険の管掌者たる政府に対して納付するものとされた移換金に係る積立金不足額についても事業団の負担分が定められたが、その当時においては、事業団の債務等については、昭和六十三年一月の閣議決定に基づいて取り扱われることとされており、その処理方策はいまだ決定されていなかったところである。このため、当該移換金に係る事業団の負担分は、当該負担分を含む事業団の債務等の処理方策を前提としたものではなかった。
 当該負担分を含む事業団の債務等の処理方策については、政府としては、平成九年十二月の閣議決定において初めて策定するに至ったものであり、その中で当該負担分についてのJRの負担等の方策が定められた。その後、当該JRの負担等を定めた債務等処理法が、国会における審議を経て平成十年十月十五日に成立し、同月二十二日から施行されたところである。
 債務等処理法において定められたJRの負担は、関係者の負担の公平を確保し、将来にわたる一般国民の負担の軽減を図ること及びJRの社員に係る年金給付の原資を確保し、社会保障制度の重要な一環である公的年金制度の適正かつ円滑な運営を期することという公共の福祉の実現を目的とするものであり、四及び五についての3の(一)から(三)までで述べた理由から、このような公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであると考える。
 このように、債務等処理法における措置と平成八年の措置とでは、先に述べた経緯によって初めて決定されるに至った事業団の債務等の処理方策としての事業団の整理を前提としているか否かという点においてその事情を異にするものであり、したがって、このような事情の変更が生じた状況の下での前述の目的のために前述の理由に基づく債務等処理法における措置については、憲法第二十九条第一項及び第二項の規定との関係で問題が生じることはないものと考える。

七について

 一般的には、JRに新たに負担を課することが憲法第二十九条との関係で問題を生ずるか否かについては、当該負担を課することが公共の福祉を実現しあるいは維持するために必要なものであり、かつ、合理的な範囲内の制約であるかどうかという観点から判断すべき事項であると考える。
 事業団の債務等の処理は、国鉄改革以来の課題として必ず実施しなければならないものであり、事業団は、その債務等の処理が実施されれば、存続意義が終了するものである。今回、債務等処理法が国会で成立し施行されたことにより、その債務等の処理方策が実施されることになり、事業団は解散することとなったものである。したがって、御指摘のような事業団が解散しないで存続したまま、JRに対し債務等処理法により課されるような負担を課すというような事例は、現状ではあり得ないところである。

八について

 JRに対し負担を課する債務等処理法の規定は、四及び五についてで述べたとおり、公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであり、憲法第二十九条との関係で問題が生じることはないものと考える。
 また、憲法上国の唯一の立法機関とされる国会による法律制定行為が「権利の濫用」ないし「条件付き権利の侵害」に当たることは想定できない。

九について

 日本鉄道共済組合が債務等処理法において定められたJRの負担について支払を求めることとなるので、JRが支払を拒否した場合にいかなる対応が最も適切であるかについては、日本鉄道共済組合が判断すべき問題であるが、政府としては、債務等処理法の適切な実施が確保されるよう努めてまいりたい。





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