答弁本文情報
平成十一年一月十九日受領答弁第七号
内閣衆質一四四第七号
平成十一年一月十九日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員中川智子君提出クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員中川智子君提出クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問に対する答弁書
一及び二について
御指摘の点については、御指摘の日付で厚生省薬務局医薬品適正使用推進室から、同室長名をもって米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)医療機器・放射線保健センター(以下「CDRH」という。)長に対し、御指摘のライオデュラに関するFDAの安全警告の発出の有無等について、ファクシミリを用いて照会しており、当該照会文書には、「本件は緊急課題であるので、ファクシミリによる迅速な返答を期待している」旨記載している。
また、同日付けで、カナダ保健省及びドイツ連邦医薬品・医療機器庁に対し、ヒト乾燥硬膜に関する回収の指示の有無等について照会している。
厚生省において、御指摘の米国疾病予防センターの週報(以下「MMWR」という。)等の刊行物において硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)発生の情報が掲載された当時厚生省保健医療局において疾病対策又は感染症対策を担当していた職員及び薬務局において医療用具の審査又は安全対策を担当していた職員に対する調査を行ったが、当該調査によれば、当該情報について当時何らかの認識を有していた者は確認されていない。
昭和六十二年に御指摘のMMWRにCJDの症例報告を紹介し、及び当該報告を御指摘の「米国医師会雑誌」(以下「JAMA」という。)に転載した者は、米国工ール大学のプリチャード医師外四名の米国の医師であり、これらの者は厚生省とは関係がない。御指摘の「JAMA日本語版」においてJAMAの当該症例報告を邦訳して紹介した者は、帝京大学医学部脳神経外科の佐野圭司教授及び北條俊太郎助教授(いずれも当時)であり、これらの者も厚生省と本件に関して特段の関係はない。御指摘の「臨床とウイルス」においてMMWRの当該症例報告を抄訳して紹介した北村敬氏は、厚生省の施設等機関である当時の国立予防衛生研究所の腸内ウイルス部長であった。
平成元年に「病原微生物検出情報」にCDJの第一症例及び第二症例に関する記事が掲載されたが、当時の発行者は、国立予防衛生研究所及び厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室であり、当該記事の紹介者名については、その記載はないが、同研究所の職員によるものである。
厚生省においては、英国保健省が御指摘のような対応を行ったか否かについては、承知していない。
現在、ヒト乾燥硬膜の移植によってCJDを発症したと主張する患者、遺族等から国、輸入販売業者等に対し損害賠償を求める訴訟が、東京地方裁判所及び大津地方裁判所に七件提訴されているところであり、御指摘の厚生省の責任については、これらの訴訟において裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えている。なお、これらの訴訟の中でそれぞれの裁判所に最も早い時期に提訴された事案において、被告である国は、当該事案に係るヒト乾燥硬膜移植手術までに厚生大臣がヒト乾燥硬膜について薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十九条の二の規定に基づく使用禁止等の措置を講じなかったことが、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項の適用上違法ということはできない旨の主張を行っているところである。
厚生省においては、現在までのところ、御指摘の照会文書を公開していない。
国民一般に対する行政文書の公開又は非公開の判断は、各省庁の文書課長等により構成される情報公開問題に関する連絡会議の平成三年十二月十一日の申合せにおいて、行政に対する国民の信頼の確保及び行政情報の有効利用の観点から、「行政情報公開基準」(以下「公開基準」という。)を定め、これに基づいて行うこととしている。公開基準においては、国を一方の当事者とする訴訟事件に関する文書については、「公開することにより、当事者として不利益となるおそれがあるもの又は今後の訴訟事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある」場合には、一般に非公開とすることができるとしている。厚生省においては、御指摘の文書を最終的に公開するかどうかについては、五についてで述べた損害賠償請求訴訟の審理を更に見極めた上で判断する必要があり、現時点においては、御指摘の文書を公開することは、当事者として不利益となるおそれ、あるいは今後の訴訟事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えている。
また、御指摘の文書において「関係国等に不当に不利益を与えるおそれや、直接不利益を与えなくても、公開することで関係国等が我が国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられる」と述べているのは、公開基準において対外関係に関する文書については、「公開することにより、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるもの」である場合には非公開とすることができることとしていることから、当該文書がこれに該当することを述べたものである。厚生省においては、御指摘の文書をFDAが公開したのかどうか、また、公開したとするとどのような範囲で公開したのか等については承知しておらず、相手国の了承なく御指摘の文書を公開することは、一般に、規制当局間の信頼関係を揺るがし、必要な情報を円滑、迅速に入手し又は提供することに支障が生じかねないと考えている。