衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年二月二日受領
答弁第一三号

  内閣衆質一四四第一三号
    平成十一年二月二日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出高次脳機能障害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出高次脳機能障害に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘の高次脳機能障害に関する現在の障害者福祉制度において行われる福祉サービスの概要は、次のとおりである。
  1 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「精神保健福祉法」という。)の定めるところにより、精神障害者と診断された場合、同法に基づく医療及び保護並びに保健及び福祉の施策の対象になるとともに、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和二十五年政令第百五十五号)第六条に規定する障害の程度にあると認められた場合は、その申請により、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けて精神障害者を対象とする各種の施策の利用手続等の簡素化が図られることとなる。これらの施策について、年齢による制限はない。
  2 高次脳機能障害のうち知的障害を有する者については、十八歳未満である場合又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十一条第二項若しくは第六十三条の二第一項に基づき児童福祉施設に在所する場合は同法の定めるところにより、十八歳以上である場合又は同法第六十三条の五が適用される場合は精神薄弱者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)の定めるところにより、施設への入所措置その他の施策の対象となる。また、「療育手帳制度について」(昭和四十八年九月二十七日付け厚生省発児第百五十六号厚生事務次官通知)により、その有する障害の程度に応じ、その申請により、療育手帳の交付を受けて各種の施策の対象となる。
  3 高次脳機能障害を有する者のうち六十五歳以上の者(六十五歳未満の者であって特に必要があると認められるものを含む。)であって、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものについては、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に基づく居宅における介護等の措置その他の施策の対象となる。また、高次脳機能障害を有する者のうち公的医療保険の加入者については、七十歳以上である場合又は六十五歳以上七十歳未満で老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)の定めるところにより一定程度の障害の状態にある旨の市町村長の認定を受けた場合は、同法に基づく医療の給付の対象となる。
    なお、平成十二年四月一日に施行される介護保険法(平成九年法律第百二十三号)においては、六十五歳以上の要介護状態等(同法第七条第一項に規定する要介護状態及び同条第二項に規定する要介護状態となるおそれがある状態をいう。以下同じ。)に該当する高次脳機能障害を有する者又は四十歳以上六十五歳未満の要介護状態等に該当する高次脳機能障害を有する者であってその要介護状態等の原因である身体上若しくは精神上の障害が同条第三項第二号に規定する特定疾病である初老期における痴呆、脳血管疾患等によって生じたものであるものについては、同法に基づく介護給付又は予防給付を受けることができることとなる。
  4 高次脳機能障害のうち身体機能の障害を有する者については、十八歳未満である場合又は児童福祉法第三十一条第二項若しくは第三項若しくは第六十三条の二第二項の規定に基づき児童福祉施設に在所する場合は同法の定めるところにより、施設への入所措置その他の施策の対象となるほか、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第十五条の規定に基づき身体障害者手帳の交付を受けたときは、児童福祉法又は身体障害者福祉法に基づく補装具の交付等の福祉の施策の対象となる。また、十八歳以上である場合又は児童福祉法第六十三条の四が適用される場合は、身体障害者福祉法の定めるところにより、その有する障害の程度に応じ、その申請により、身体障害者手帳の交付を受けて同法に基づく施設への入所措置その他の施策の対象となる。

二について

 御指摘の「高次脳機能障害」及び「若年痴呆」の用語の意味については、必ずしも一義的に定まっていないと考えるが、厚生省においては、「高次脳機能障害」は「頭部外傷、脳血管障害等の後天的な脳の器質障害により生じる記憶、注意力、思考等を含む認知機能、身体機能等の種々の障害」を、「若年痴呆」は「十八歳から六十四歳までの者の頭部外傷、脳血管障害、アルツハイマー等の疾病等により生じた痴呆症状で、その者が現在の老人福祉施策又は精神薄弱者福祉施策の対象とならない場合であるもの」を意味するものとして使用しているところである。

三について

 御指摘の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(世界保健機関が千九百九十年に策定した疾病等の分類の第十回の修正版(ICD ― 一〇)をいう。以下「ICD ― 一〇」という。)においては、高次脳機能障害は、単独の疾病分類項目(以下「分類項目」という。)としては位置付けられていない。したがって、高次脳機能障害を生じた患者は、ICD ― 一〇に基づく統計においては、現に分類項目として位置付けられている脳震とう後症候群、血管性痴呆等の疾病の患者に含まれるものと考える。

四について

 高次脳機能障害の診断は、現在、主として、精神障害の診療に従事する精神神経科、神経内科、脳外科等の医師によって行われており、その診断に当たっては、記憶記銘検査等の専門的な知識を有する者による検査を行うことが必要であると承知している。このため、厚生省においては、これらを行う医師等の知識の向上を図るため、専門的な研修に対して助成するとともに、平成十年度の厚生科学研究の研究課題として「若年痴呆の処遇の在り方に関する研究」を取り上げ、当該研究の中で若年痴呆の症状、介護の方法等についてのガイドライン(以下「ガイドライン」という。)を作成しているところである。今後、このガイドラインを医師等の医療関係者に幅広く配布し、また、厚生省が都道府県に委託して実施する開業医等に対する研修を通じて、一般の医療関係者に対する高次脳機能障害に関する知識の普及に努めてまいりたい。

五について

 御指摘の損害保険における交通事故等の後遺症等の障害認定(以下「損害保険の障害認定」という。)については、当該保険の保険者が契約者が提出する医師の診断書に基づいて行っていると承知しており、御指摘の問題については、一般に、当該保険に係る契約の当事者の間で解決されるべきものと考える。
 なお、厚生省においては、損害保険の障害認定に係る診断書を作成する医師を含め、四についてで述べたように医療関係者に対して幅広く高次脳機能障害を含め精神障害に関する知識の普及に努めてまいりたい。

六について

 御指摘の高次脳機能障害のうち精神障害については、そのほとんどが器質精神病による精神障害に含まれるものと考えられることから、高次脳機能障害を有する者に対する精神障害者保健福祉手帳の等級判定については、御指摘の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」の(1)のE器質精神病の項に記述する器質精神病による障害の状態の内容に基づいて行うことができるものであり、判定基準等の改訂を行う必要はないものと考える。

七について

 精神障害者保健福祉手帳の交付においては、高次脳機能障害による精神障害を有する者についても一級から三級までのいずれかの等級に該当すると判定されることが必要であるが、平成八年度の厚生科学研究の研究課題として取り上げた「若年痴呆の実態に関する研究」の報告書において、これらの判定に当たり医療及び福祉の関係者が若年痴呆を認識しにくいことが指摘されているところである。このため、厚生省においては、今後、医療及び福祉の関係者に対する高次脳機能障害に関する知識の普及に努めていくこととしているが、御指摘の障害等級や判定基準の緩和等の措置を行うことは考えていない。

八について

 御指摘のガイドラインについては、四についてで述べたとおり、高次脳機能障害等の若年痴呆の症状、介護の方法等に関する情報を患者の家族並びに医療及び福祉の関係者に対して分かりやすく提供できるものとなるよう作成の作業がなされているところであり、今後、ガイドラインが作成された際には、厚生省において、医療関係者に配布するほか、都道府県等の精神保健福祉センター、福祉事務所等の全国の関係機関に配布する等によりこれを周知し、高次脳機能障害等の若年痴呆の者の適切な保健又は福祉サービスの利用の促進を図りたいと考えている。

九について

 高次脳機能障害を有する者の施設への入所等の福祉サービスの運用については、平成九年十二月に身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会及び公衆衛生審議会精神保健福祉部会の合同企画分科会において取りまとめられた今後の障害保健福祉施策の在り方についての中間報告において、「身体障害を伴わない高次脳機能障害(若年性痴呆等)については、精神保健福祉法において必要な福祉サービスを充実すべきである。ただし、当面、精神薄弱者に類似した障害の状態にある者については、精神薄弱者施設等の利用を行えるようにする方途も検討すべきである。」との指摘があったことを踏まえ、引き続き検討してまいりたい。





経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.