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平成十二年五月三十日受領
答弁第二八号

  内閣衆質一四七第二八号
  平成十二年五月三十日
内閣総理大臣 森 喜朗

       衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員濱田健一君提出米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員濱田健一君提出米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する再質問に対する答弁書



一の1について

 政府としては、埋立て等の事業の実施により、藻場及び干潟が消滅することとなる場合に、その回復のための措置を採ることは重要なことであると考えている。
 このため、広島防衛施設局において、岩国飛行場の滑走路を沖合へ千メートル程度移設する事業(以下「岩国沖合移設事業」という。) の実施により消滅することとなる藻場及び干潟について、その回復を図ることとし、学識経験者による「岩国飛行場藻場・干潟回復調査研究委員会」 (以下「藻場等回復委員会」という。)を設置し、その検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしているところであるが、現在、藻場等回復委員会において、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の回復場所、範囲、方法等について検討が進められているところであるので、現時点で具体的な回復の規模等についてお答えすることが困難であることから、先の答弁書(平成十二年三月三十一日内閣衆質百四十七第十二号。以下「答弁書」という。)のようにお答えしたものである。

一の2について

 政府としては、岩国飛行場の北側の進入表面下には工場群があり、アメリカ合衆国軍隊等は、航空機がこれを避けて飛行しなければならないため、運用上及び安全の確保上大きな制約を受けており、また、同飛行場には市街地が近接し、航空機による騒音問題が生じていることから、地元岩国市等の要望もあり、これらの問題について早急に解決を図る必要があるため、広島防衛施設局において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとした上で、平成九年六月から工事に着手したものであり、御指摘のように、消滅する海藻を移植する方法は採用しなかったが、これは現実的な選択であったと考えている。
 なお、藻場の機能を回復するための造成については、現在、各地でその事例が見られるが、その実施に当たっては、個々の環境に応じて、移植の方法以外にも、播種及び苗移植の方法が採られていると承知している。

一の3及び4について

 答弁書で述べた「最大限回復が可能となるよう、新たな藻場の造成に努める」とは、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、アマモが生育できる環境を整え、播種、移植又は苗移植の方法等により、藻場を最大限回復するよう努めることを意味するが、現在、藻場等回復委員会において、回復場所、範囲、方法等について検討が進められているところであり、現時点で具体的な回復の規模や方法についてお答えすることは困難である。

一の5及び6について

 現在までのところ、天然の藻場及び干潟が持つ水質浄化機能等と同程度の機能を有するものにまで人工的に回復するための技術については、必ずしも十分には検証されていないものの、各地において個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知しているが、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において検討が進められているところであり、現時点において具体的な回復の規模、方法等についてお答えすることは困難である。
 また、アメリカ合衆国においては、事業により消滅する面積より広い面積の藻場を新たに造成した例があることは承知している。
 いずれにせよ、政府としては、環境保全の観点から、埋立て等の事業の実施により、藻場及び干潟が消滅することとなる場合に、その回復のための措置を採ることは重要なことであると認識しており、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟については、広島防衛施設局において、藻場等回復委員会の検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしており、また、それらの形成状況を計画的に監視することとしている。

一の7について

 我が国における藻場及び干潟の機能を回復するための造成としては、御指摘の広島港出島地区の周辺海域における約二・九ヘクタールのアマモ場の造成のほか、例えば、熊本県天草郡松島町の樋合漁港における約○・二ヘクタールのアマモ場の造成、広島港五日市地区における約十七ヘクタールの人工干潟の造成等があり、現在も、これらの場所において、藻の生育状況等のモニタリング調査が実施されていると承知している。
 現在までのところ、御指摘の広島港出島地区の事例を含め、天然の藻場及び干潟が持つ水質浄化機能等と同程度の機能を有するものにまで人工的に回復するための技術については、必ずしも十分には検証されていないものの、各地において個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知している。
 また、我が国における藻場及び干潟の回復面積がそれぞれ約四十ヘクタール以上の広さである事業については、承知していない。
 岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において検討が進められているところであり、現時点において具体的な回復の規模、方法等についてお答えすることは困難である。

一の8について

 答弁書でお答えしたとおり、広島防衛施設局が実施した岩国飛行場沖合における移植実験において、移植したアマモの採取地は同飛行場地先海域であり、移植地点は岩国沖合移設事業の計画地に近接する三か所の海域であり、移植地点の水深は零メートルから二メートルであり、移植の方法は水ごけを主原料としたポットに入れて植え付ける方法等である。また、移植を行った裸地の面積は、合計二十七平方メートルであり、アマモの活着状況の把握については、潜水夫が移植場所に潜り、目視によって株数の確認を行う方法により実施しているところである。

一の9について

 藻場等回復委員会においては、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の回復について、自然の藻場及び干潟の形成条件を模倣すること、藻場と干潟との一体的な施工を目指すことなどを基本的な考え方として検討が進められているところである。

二の1について

 瀬戸内海全体の生物相の変遷については、必ずしも十分把握していないが、漁業生産量については近年減少傾向にある。
 環境庁の調査によれば、平成三年現在、瀬戸内海沿岸の藻場は合計約一万七千五百ヘクタール、干潟は合計約一万一千七百ヘクタールであり、そのうち、広島湾の藻場は約二百六十六ヘクタール、干潟は約三百九十四ヘクタールである。昭和五十三年から平成三年までの十三年間に、瀬戸内海において、藻場は合計約千三百ヘクタール、干潟は合計約八百ヘクタールそれぞれ消失しており、そのうち、広島湾では、藻場は約九ヘクタール、干潟は約十五ヘクタールそれぞれ消失している。
 政府としては、藻場は魚介類の産卵及び生育の場として、干潟は魚介類、鳥類等の生育及び生息の場として重要な役割を果たしていると認識しており、引き続き、その保全に努めてまいりたい。
 岩国飛行場周辺の藻場及び干潟は、広島湾の生物の生息及び生育空間等として重要であることから、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟については、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしている。

二の2について

 岩国沖合移設事業については、岩国飛行場の運用上及び安全の確保上の制約の問題や航空機騒音問題への対処の必要性、埋立て等に伴う瀬戸内海の環境への影響等を総合勘案して、その実施を判断したものであり、また、岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場及び干潟については、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復に努めるなど、環境保全には十分配慮しているものと考えている。
 また、平成元年度から平成四年度にかけて、岩国飛行場の現滑走路を東側に千メートル程度移設する案(以下「A案」という。)及び現滑走路に交差する滑走路を増設する案(以下「B案」という)について、調査及び検討を行ったが、B案に比べA案の方が飛行及び同飛行場周辺の安全の確保並びに航空機騒音の緩和の面で改善効果が大きいことが判明し、地元岩国市等もA案での実施を望んだことから、同飛行場の運用における安全確保上及び騒音上の問題を解決し、アメリカ合衆国軍隊の駐留を円滑にするとともに、同飛行場の安定的使用を図るため、A案を採択したものである。

二の3について

 政府としては、岩国沖合移設事業については、山口県知事において、飛行場運用における安全確保上の問題や航空機騒音問題への対処の必要性、埋立て等に伴う瀬戸内海の環境への影響等を総合勘案して、埋立てはやむを得ないと判断されたものであり、環境保全に十分配慮がなされたものと考えている。
 また、藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において、藻場及び干潟の回復場所、範囲、方法等の検討が進められているところであり、広島防衛施設局において、その検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしているなど、政府としても環境保全に十分配慮しているものと考えている。





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