令和六年衆議院議長年頭の辞

令和六年の新春を迎えるに当たり、国民の皆様の御健勝と御多幸を心からお祈りいたします。また、皇室の弥栄と我が国のますますの発展を衷心より祈念申し上げます。

私は、昨年十月に同僚議員からの推挙によって、衆議院議長に選任されました。私の就任から一月と経たない十一月十日、前任の細田博之先生が逝去されましたことは、誠に残念でなりません。私は、急逝された細田前議長始め歴代議長の思いを引き継ぎ、議院の公正円満な運営に全力を傾注いたしますとともに、失われつつある政治に対する信頼を取り戻すため、各党・各会派の協議を踏まえて、必要に応じて合意形成を図るべく、議長として最善の努力をいたす所存であります。

昨年五月に新型コロナウイルス感染症が五類に移行し、日常生活は徐々に落ち着きを取り戻してまいりました。他方、世界に目を転じると、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢など緊迫した事態は続いており、人道上の危機的状況を招いているばかりでなく、国内外の物価上昇の一因ともなっております。例えば、国内でも小麦などの安定的な供給に支障が生じ、食パンは侵攻開始前に比べて一割以上値上がりするなど、国民の皆様の生活にも大きな影響を与えており、国会において適切な物価対策を講じてきたところであります。

こうした状況の中、我が国は昨年、Ｇ７議長国として国際社会での議論を主導してまいりました。衆議院においても、細田前議長、海江田副議長のイニシアティブの下、Ｇ７下院議長会議を開催いたしました。会議には、ステファンチューク・ウクライナ最高会議議長をゲストとしてお招きした上で、ウクライナ情勢等について話し合い、食料やエネルギーの安定供給の重要性について各国の合意を見ました。

本年は、世界各地で多数の選挙が行われます。東アジアでは、一月に台湾総統選挙、四月には韓国国会総選挙が予定されております。また、米国、ロシアなどでも大統領選挙が行われます。結果次第で世界情勢に大きな影響を与える可能性があります。私自身、これまでに培ってきた各国議員との信頼関係を活かしながら、行政府とは異なる立場で議会間交流を力強く進め、自由と民主主義を守り、国民の皆様の生活向上と国際秩序の安定に向けて努めていきたいと考えております。

現在、我が国は、バブル経済崩壊後三十年間の長期経済停滞期を脱出するため、各企業、各個人がそれぞれ新しい成長戦略の目標を定めて走り出しています。

例えば、カーボンニュートラルに伴うグリーン化、デジタル改革、ＡＩ、ロボットによる省人化・省力化対策などの産業構造の転換を図ろうとしていることは象徴的であります。

また、個人の分野では将棋の藤井聡太棋士が幼少の頃から詰将棋やＡＩを取り入れた研究などを積み重ね、前人未到の八冠制覇を成し遂げたこと、さらに野球の大谷翔平選手が高校時代から目標達成シートなどを用いてたゆまぬ努力を続けた結果、メジャーリーグでＭＶＰ獲得や日本人初のホームラン王という偉業を成し遂げたことなどは、「夢と目標は努力すれば実現できる」という証を示してくれるものと言えるでしょう。

私達は、もともと勤勉で忍耐強さを持ち合わせており、本年こそ国民の皆様が「目標を定めて頑張っていけば必ず報われる」時代の幕開けとなってくれることをお祈りし、新年のご挨拶といたします。

令和六年  元旦

　　　　　　衆議院議長