衆議院

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第一五一回

衆第三六号

   公共事業基本法案

 (目的)

第一条 この法律は、公共事業が国民の社会経済生活に多大な影響を与えること及びその費用が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることにかんがみ、公共事業に関する基本理念を明らかにするとともに、公共事業に関する国と地方公共団体との役割分担を明確にし、並びに公共事業中期総合計画及び公共事業実施計画の作成及び国会における承認、公共事業の再評価及び事後評価等に関する事項について定めることにより、公共事業に関する施策の計画性、総合性及び一体性を確保するとともに、公共事業に関し、国会の関与の強化、情報公開の促進、民意の反映及び時代に即応した是正を図り、もって国民的視点に立ち、かつ、社会経済情勢の変化を踏まえた公共事業を推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「公共事業」とは、次に掲げる事業で、国、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(国が出資しているものに限る。以下「特殊法人」という。)、地方公共団体その他政令で定める者が実施するものをいう。

 一 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業

 二 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林における造林、間伐及び保育並びに林道の整備に関する事業

 三 森林法第四十一条に規定する保安施設事業その他の治山事業

 四 沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)第二条に規定する沿岸漁場整備開発事業

 五 漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三条に規定する漁港施設の整備に関する事業及び漁港の環境の整備に関する事業

 六 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園(当該都市公園に都市基盤整備公団が設ける公園施設を含む。)その他の公園又は緑地の整備に関する事業

 七 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道(以下「公共下水道」という。)、同条第四号に規定する流域下水道(以下「流域下水道」という。)及び同条第五号に規定する都市下水路の整備に関する事業

 八 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川(同法第百条の規定により同法の二級河川に関する規定が準用される河川を含む。)に関する事業その他の治水事業

 九 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事に関する事業

 十 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する事業及び海岸の環境の整備に関する事業

 十一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路の整備に関する事業

 十二 住宅の建設に関する事業

 十三 全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第二条に規定する新幹線鉄道に係る鉄道施設の建設に関する事業

 十四 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第五項に規定する港湾施設(同条第六項の規定により港湾施設とみなされる施設を含む。)の整備に関する事業、港湾の環境の整備に関する事業並びに同条第八項に規定する開発保全航路の開発及び保全に関する事業

 十五 空港整備法(昭和三十一年法律第八十号)第二条第一項に規定する空港その他の飛行場で公共の用に供されるもの(これらと併せて設置すべき航空保安施設その他の施設を含む。以下「空港」という。)の整備に関する事業及び空港の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止等に関する事業

 十六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物を処理するための施設(公共下水道及び流域下水道を除く。)の整備に関する事業

 (基本理念)

第三条 公共事業は、環境との調和を図り、安全で質の高い国民生活を実現し、及び産業の生産性を向上させることを目指すものでなければならない。

2 公共事業は、地域の実情に応じて、地域住民の理解の下に実施されるものでなければならない。

3 公共事業については、国が実施する事業を地方公共団体が実施することができない広域的な事業に限定する等地方分権の徹底が図られなければならない。

4 公共事業を実施するに当たっては、財政の健全性の確保に最大限の考慮を払うとともに、民間の能力を十分に活用する等最も効率的な手法により、最少の費用で最大の効果が得られるようにしなければならない。

5 公共事業を実施するに当たっては、環境の保全に最大限の配慮を払わなければならない。

6 公共事業を実施するに当たっては、社会経済情勢の変化に柔軟に対応するため、不断に事業の在り方を見直さなければならない。

7 公共事業を実施するに当たっては、積極的な情報の公開により国民に説明する責務を全うするとともに、計画の作成、実施及び評価の各段階において、国民の参加を積極的に求めなければならない。

 (国と地方公共団体との役割分担)

第四条 国又は特殊法人が実施することができる公共事業は、次に掲げる事業に限定するものとし、その他の公共事業については、地方公共団体等が実施するものとする。

 一 国有林野に関する事業

 二 一の都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する公園又は緑地の整備に関する事業

 三 河川法第四条第一項に規定する一級河川に関する事業

 四 国土を縦断し、横断し、又は循環して、全国的な幹線道路網の枢要部分を構成し、かつ、政治上、経済上、又は文化上特に重要な都市を連絡する道路の整備に関する事業

 五 全国新幹線鉄道整備法第二条に規定する新幹線鉄道に係る鉄道施設の建設に関する事業

 六 千葉港湾、京浜港湾、名古屋港湾、四日市港湾、大阪港湾、神戸港湾及び博多港湾に関する事業

 七 新東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、東京国際空港及び大阪国際空港に関する事業

 八 その他その性質において地方公共団体が実施することが適当でない事業

2 国又は特殊法人が実施する公共事業に要する費用は、国又は特殊法人が負担することを基本とするものとする。

 (公共事業中期総合計画の作成及び国会承認等)

第五条 政府は、平成十四年度以降の毎五箇年を各一期として、当該期間中に国及び特殊法人が実施する公共事業に関する総合的な計画(以下「公共事業中期総合計画」という。)を作成しなければならない。

2 公共事業中期総合計画には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 一 五箇年間における公共事業の実施に関する基本方針

 二 五箇年間における公共事業の実施の目標及び事業の量

3 政府は、都道府県の意見を聴いて、公共事業中期総合計画の案を作成しなければならない。

4 都道府県は、前項の意見を述べようとするときは、市町村の意見を聴かなければならない。

5 政府は、公共事業中期総合計画の案を作成したときは、これを公開し、広く国民の意見を聴かなければならない。

6 政府は、公共事業中期総合計画を作成しようとするときは、公共事業調査会の意見を聴かなければならない。この場合において、政府は、前項の規定により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を公共事業調査会に提出しなければならない。

7 政府は、公共事業中期総合計画を作成したときは、当該公共事業中期総合計画の初年度の開始前に、これを国会に提出し、その承認を受けなければならない。

8 政府は、前項の規定による国会の承認があったときは、遅滞なく、公共事業中期総合計画を公表しなければならない。

9 第三項から前項までの規定は、公共事業中期総合計画の変更について準用する。この場合において、第七項中「当該公共事業中期総合計画の初年度の開始前に」とあるのは、「速やかに」と読み替えるものとする。

 (公共事業実施計画の作成及び国会承認等)

第六条 政府は、公共事業(その事業費の総額が百億円未満となることが見込まれるものを除く。次項において同じ。)を実施しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとする。この場合において、政府は、当該公共事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとする。

2 特殊法人は、公共事業を実施しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとする。

3 政府は、前項の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとする。この場合において、政府は、当該公共事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとする。

 (再評価)

第七条 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業で次のいずれかに該当するものについて、事業の継続の適否を判断するための評価(以下「再評価」という。)を行うものとする。

 一 事業の実施の決定の後五年を経過した時点で着手されていない事業

 二 事業の実施の決定の後十年を経過した時点で完了していない事業

 三 関係地方公共団体の多数の住民が事業の継続に反対の意思を表明した事業

 四 再評価の対象となった事業で、再評価の後二年を経過したもの

 五 社会経済情勢の変化により事業計画の見直しが必要とされる事業

2 再評価は、次に掲げる観点から行うものとする。

 一 事業の必要性の度合

 二 事業の効果(費用効果分析を含む。以下同じ。)

 三 事業の円滑な実施の可能性

 四 事業の実施に係る環境等への影響

 五 事業の目的とする効果と同程度の効果を実現する別の方策の有無

 六 事業を中止した場合の影響

3 政府は、再評価を行うに当たっては、関係地方公共団体の意見を聴かなければならない。

4 政府は、再評価を行うに当たっては、再評価の対象となる公共事業に関する資料を公開し、広く国民の意見を聴かなければならない。

5 政府は、再評価を行うに当たっては、公共事業調査会の意見を聴かなければならない。この場合において、政府は、前項の規定により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を公共事業調査会に提出しなければならない。

6 政府は、再評価を行ったときは、その結果に関する報告書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

第八条 政府は、第六条第一項の国会の承認を受けた公共事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとする。

2 特殊法人は、第六条第二項の認可を受けた公共事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとする。

3 政府は、前項の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとする。

 (事後評価)

第九条 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業について、事業の終了後二年以内に、事業の効果に関する評価を行うものとする。

2 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業について、事業の終了後十年を目途として、事業の効果並びに事業の実施が及ぼした環境への影響その他社会的、経済的及び文化的な影響に関する評価を行うものとする。

3 第七条第三項から第六項までの規定は、前二項の規定による評価を行う場合に準用する。

 (調査会の設置及び権限)

第十条 内閣府に、公共事業調査会(以下「調査会」という。)を置く。

2 調査会は、この法律及び他の法令の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、公共事業に関する重要事項を調査審議する。

3 調査会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

 (調査会の組織)

第十一条 調査会は、委員十人をもって組織する。

2 委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

3 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

4 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

5 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 委員は、再任されることができる。

7 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。

8 調査会の事務を処理させるため、調査会に事務局を置く。

 (調査会の審議の公開等)

第十二条 調査会の審議は、公開して行う。

2 調査会は、審議に用いた資料を公表しなければならない。

 (協力依頼等)

第十三条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 調査会は、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができる。

 (政令への委任)

第十四条 この法律に定めるもののほか、調査会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (地方公共団体の講ずる施策)

第十五条 都道府県及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)は、条例で定めるところにより、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるものとする。

2 市町村(指定都市を除く。)は、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるよう努めなければならない。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、平成十三年十月一日から施行する。ただし、附則第四項から第六項までの規定は、平成十四年四月一日から施行する。

 (検討)

2 地方公共団体が公共事業を実施する場合における住民参加の在り方については、これを推進する観点から速やかに検討が加えられ、その結果に基づき必要な措置が講ぜられるべきものとする。

 (国土総合開発法の廃止)

3 国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)は、廃止する。

 (道路整備緊急措置法の廃止)

4 道路整備緊急措置法(昭和三十三年法律第三十四号)は、廃止する。

 (道路整備特別会計法の一部改正)

5 道路整備特別会計法(昭和三十三年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。

  第一条第一項中「道路整備緊急措置法(昭和三十三年法律第三十四号)第三条の規定により、揮発油税の収入額に相当する金額及び石油ガス税の収入額の二分の一に相当する金額を同法第二条の道路整備五箇年計画の実施に要する経費で国が支弁するものの財源に充てて行う道路整備事業(同条第一項に規定する」を「道路整備事業(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による」に改め、同条第二項中「(昭和二十七年法律第百八十号)」を削る。

  第三条中「により地方道路整備臨時交付金の交付に要する費用の財源に充てられる揮発油税の収入、第四条の規定」を削る。

  第三条の二を削る。

  第四条中「(道路整備緊急措置法第五条第二項に規定する地方道路整備臨時交付金の交付を除く。)」を削る。

  附則第十八項中「第三条中「第四条」を「第三条中「次条」に、「第四条又は」を「次条又は」に、「の交付」とあるのは「の交付並びに」を「道路整備事業」とあるのは「道路整備事業(」に改め、「貸付金の貸付け」の下に「を除く。)」を加える。

 (空港整備特別会計法の一部改正)

6 空港整備特別会計法(昭和四十五年法律第二十五号)の一部を次のように改正する。

  附則中第十一項を削り、第十二項を第十一項とし、第十三項を第十二項とする。

  附則第十四項中「附則第十五項」を「附則第十四項」に改め、同項を附則第十三項とする。

  附則中第十五項を第十四項とし、第十六項を第十五項とする。

 (関係法律の整理等)

7 附則第三項から前項までに定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な関係法律の整理その他必要な事項は、別に法律で定める。

 (見直し)

8 揮発油税制、石油ガス税制その他自動車に係る税制に関しては、平成十六年三月三十一日までに、その簡素化、環境への負荷に対する税負担の在り方等について検討が加えられ、その結果に基づき総合的かつ抜本的な見直しが行われるべきものとする。

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