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第一五四回

衆第一五号

   自然エネルギー発電促進法案

 (目的)

第一条 この法律は、自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずることにより、枯渇しないエネルギー資源の有効な利用及び温室効果ガスの排出の抑制による地球温暖化の防止を図り、もってエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及び環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会の構築に資することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において「自然エネルギー発電」とは、次に掲げる発電をいう。

 一 太陽光発電

 二 風力発電

 三 水力発電(政令で定める出力以上の発電設備によるものを除く。)

 四 地熱発電

 五 バイオマス(農業、林業又は製材業において産物、副産物又は廃物として生ずる薪材、木くず、わら、家畜の排せつ物その他の有機物を全部又は大部分とする有機物(当該有機物から得られる液体又は気体を含む。)をいう。)を燃料として利用して行う発電

 六 前各号に掲げるもののほか、自然現象又は生物体に由来する枯渇しないエネルギー資源による発電であってこれによる電気の供給の促進を図ることが前条の目的に照らし特に必要なものとして政令で定めるもの

2 経済産業大臣は、前項第三号及び第六号の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、総合資源エネルギー調査会の意見を聴かなければならない。

3 この法律において「電気事業者」とは、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第二号に規定する一般電気事業者、同項第六号に規定する特定電気事業者及び同項第八号に規定する特定規模電気事業者をいう。

 (国の責務)

第三条 国は、自然エネルギー発電を促進するために必要な財政上、金融上及び税制上の措置を講ずるよう努めなければならない。

2 国は、自然エネルギー発電による電気の供給の安定化、自然エネルギー発電の技術水準の向上及び費用の低減等のための研究開発の実施及びその成果の普及に努めなければならない。

3 国は、教育活動、広報活動等を通じて、自然エネルギー発電の促進に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

4 国は、自らの事務及び事業に関し、その建築物に自然エネルギー発電のための設備を設置する等自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずるよう努めなければならない。

5 国は、自然エネルギー発電の促進を図るための国際的な連携の確保、技術協力の推進その他の国際協力を推進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた自然エネルギー発電の促進のための施策を推進するよう努めなければならない。

2 地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し、その建築物に自然エネルギー発電のための設備を設置する等自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずるよう努めなければならない。

 (自然エネルギー発電を行う者の責務)

第五条 自然エネルギー発電を行う者は、自然エネルギー発電の安定化及び効率化を図ることにより、自然エネルギー発電の促進に資するよう努めなければならない。

 (電気事業者の責務)

第六条 電気事業者は、自然エネルギー発電を行い、及び自然エネルギー発電による電気の供給を促進するための措置を講ずるよう努めなければならない。

 (電気の使用者の責務)

第七条 電気を使用する者は、自然エネルギー発電の促進について理解を深めるよう努めるとともに、自然エネルギー発電による電気を使用するよう努めなければならない。

 (供給目標)

第八条 政府は、自然エネルギー発電の促進の見地から、自然エネルギー発電による電気の供給の目標(以下この条及び第十条第一項において「供給目標」という。)を定め、これを公表しなければならない。

2 供給目標は、自然エネルギー発電の種類ごとの電気の供給量の目標、自然エネルギー発電による電気の供給量が電気の総供給量に占める割合の目標その他自然エネルギー発電による電気の供給に関する事項について、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第七条第一項の地球温暖化対策に関する基本方針を踏まえ、経済全般の動向、自然エネルギー発電に係る技術水準その他の事情を勘案するとともに、循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)第九条に規定する基本原則に配意して定めるものとする。

3 経済産業大臣は、供給目標の案を作成して閣議の決定を求めなければならない。

4 経済産業大臣は、供給目標の案を作成する場合には、あらかじめ、関係行政機関の長に協議し、経済財政諮問会議の意見を聴くとともに、自然エネルギー発電を行う者及び電気事業者の意見を代表すると認められる者並びに学識経験のある者の意見を聴かなければならない。

5 政府は、第二項の事情の変動のため必要があるときは、供給目標を改定するものとする。

6 第一項から第四項までの規定は、供給目標の改定について準用する。

 (自然エネルギー発電の認定)

第九条 自然エネルギー発電を行う者は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に申請して、その自然エネルギー発電が自然エネルギー発電の種類ごとに政令で定める基準に適合する旨の認定を受けることができる。

2 経済産業大臣は、前項の認定に係る自然エネルギー発電が同項の基準に適合しなくなったとき、又は同項の認定を受けた者(以下「自然エネルギー発電者」という。)が偽りその他不正の手段により同項の認定を受けたときは、その認定を取り消すことができる。

3 前二項に定めるもののほか、第一項の認定に関し必要な事項は、経済産業省令で定める。

 (自然エネルギー発電供給促進計画)

第十条 電気事業者は、供給目標を踏まえ、経済産業省令で定めるところにより、自然エネルギー発電(前条第一項の認定に係るものに限る。次条から第十七条までにおいて同じ。)による電気の供給の促進についての計画(次項及び第十三条において「自然エネルギー発電供給促進計画」という。)を作成し、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。

2 電気事業者は、経済産業省令で定めるところにより、毎年度、前年度における自然エネルギー発電供給促進計画の実施の状況を公表しなければならない。

 (買取り約款)

第十一条 電気事業者は、自然エネルギー発電の種類ごとに、その電気の買取りに係る料金、期間その他の買取り条件について、経済産業省令で定めるところにより、約款を定めなければならない。

2 前項の買取りに係る料金の額は、自然エネルギー発電の種類ごとに、自然エネルギー発電による電気の買取りに代えて電気事業者が自ら発電を行うこととした場合に追加的に必要とされる発電費用の単位当たりの額として経済産業省令で定めるところにより算定した額に相当する額を下らない額を定めるものとする。

3 電気事業者は、第一項の約款(次項及び第十三条において「買取り約款」という。)を定めるに当たっては、自然エネルギー発電の促進に資するよう配慮するものとする。

4 電気事業者は、買取り約款を定め、又は変更したときは、経済産業大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。

5 自然エネルギー発電者がその自然エネルギー発電について電気事業法第二条第一項第十一号に規定する卸供給を行う場合における同法第二十二条第一項の規定の適用については、同項ただし書中「次に掲げる場合」とあるのは、「次に掲げる場合又は自然エネルギー発電促進法(平成十四年法律第▼▼▼号)第十一条第四項の規定による届出に係る同条第一項の約款で定める買取り条件に応じた供給条件による場合」とする。

 (技術上の指針)

第十二条 経済産業大臣は、系統連系(発電設備の電気事業者の電力系統への連系をいう。次条において同じ。)に関し自然エネルギー発電者及び電気事業者がよるべき技術上の指針(次項において「指針」という。)を定め、これを公表しなければならない。これを改定したときも、同様とする。

2 指針は、自然エネルギー発電が円滑に促進されるよう十分配慮して定められなければならない。

 (指導及び助言)

第十三条 経済産業大臣は、自然エネルギー発電を促進するため必要があると認めるときは、自然エネルギー発電供給促進計画又は買取り約款の作成及び実施については電気事業者、系統連系に関する事項については自然エネルギー発電者及び電気事業者に対し、指導及び助言を行うことができる。

 (補助)

第十四条 国は、自然エネルギー発電のうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであってその促進を図ることが特に必要であるものとして政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、当該自然エネルギー発電に係る設備を設置する者に対し、予算の範囲内において、当該設備の設置に要する費用の一部を補助することができる。

第十五条 国は、自然エネルギー発電による電気の売渡しについて、予算の範囲内において、必要な補助を行うことができる。

2 経済産業大臣は、自然エネルギー発電の種類ごとに、前項の補助の基準となる単価(以下この条において「売渡補助基準単価」という。)を定め、公表するものとする。

3 経済産業大臣は、自然エネルギー発電の種類ごとに、売渡補助基準単価、第一項の補助の対象とする者(以下この条において「売渡補助対象者」という。)及びその者に係る同項の補助の対象とする電気の電力量(以下この条において「売渡補助対象量」という。)を定めるための入札を行うものとする。

4 前項の入札においては、入札の対象とする電気の電力量(以下この項において「入札対象量」という。)の範囲内において自然エネルギー発電者(政令で定める規模に満たない自然エネルギー発電者を除く。)が電気事業者に売り渡そうとする電気の電力量及びその売渡不足額(第一項の補助を受けないとした場合に売り渡すことが可能なその単価と第十一条第一項の買取りに係る料金の額との差額をいう。以下この項において同じ。)を入札させ、売渡不足額の上限として経済産業大臣が定める額以下の売渡不足額の入札者のうち入札した売渡不足額の低い入札者から順次入札対象量に達するまでの入札者を売渡補助対象者とし、それぞれその売渡補助対象者が入札した電気の電力量(売渡補助対象者の入札した電気の電力量を合計した電気の電力量が入札対象量を超える場合における最後の順位の売渡補助対象者にあっては、その者が入札した電気の電力量からその超える電気の電力量を控除した電気の電力量)を当該売渡補助対象者の売渡補助対象量とし、最高の売渡不足額をもって入札した売渡補助対象者以外の売渡補助対象者のうち最高の売渡不足額をもって入札した売渡補助対象者の当該売渡不足額に相当する額を売渡補助基準単価とするものとする。

5 第一項の補助の売渡補助対象者ごとの金額は、その売り渡す電気に係る自然エネルギー発電の種類ごとに売渡補助基準単価に売渡補助対象量の範囲内でその売り渡す電気の電力量を乗じて得た額を合算した額以内とする。

6 第二項から第四項までに定めるもののほか、売渡補助基準単価、売渡補助対象者及び売渡補助対象量の決定に関し必要な事項は、経済産業省令で定める。

7 国は、第四項に規定する政令で定める規模に満たない自然エネルギー発電者については、第一項の規定による措置に準じた措置が講ぜられるよう必要な配慮を行うものとする。

第十六条 国は、電気事業者に対し、政令で定めるところにより、自然エネルギー発電による電気の買取りによって負担することとなる費用について、予算の範囲内において、必要な補助を行うことができる。

 (報告の徴収)

第十七条 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、自然エネルギー発電者に対し、その自然エネルギー発電の状況について報告を求めることができる。

2 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、電気事業者に対し、その自然エネルギー発電による電気の供給の状況について報告を求めることができる。

 (経過措置)

第十八条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十五年四月一日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況及び電気事業者を取り巻く状況の変化、自然エネルギー発電に係る技術の発展その他の社会経済情勢の推移を勘案し、自然エネルギー発電に係る費用についての社会全体による適正かつ公平な負担の在り方を含め、自然エネルギー発電を促進するための制度について総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (電源開発促進対策特別会計法の一部改正)

第三条 電源開発促進対策特別会計法(昭和四十九年法律第八十号)の一部を次のように改正する。

  第一条第三項第三号の次に次の一号を加える。

  三の二 自然エネルギー発電促進法(平成十四年法律第▼▼▼号)の規定に基づいて行う補助

 (経済産業省設置法の一部改正)

第四条 経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第四十九号の次に次の一号を加える。

  四十九の二 自然エネルギー発電の促進に関すること。

  第十九条第一項第四号中「石油及び可燃性天然ガス資源開発法」を「自然エネルギー発電促進法」(平成十四年法律第▼▼▼号)、石油及び可燃性天然ガス資源開発法」に改める。

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