衆議院

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第一五六回

衆第四号

   雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 雇用保険の財政の安定化を図るための措置(第三条)

 第三章 求職者等能力開発給付(第四条―第十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、最近における経済社会の急速な変化に伴い、雇用及び失業に関する状況が悪化し、多数の者が離職又はその営む事業の廃止を余儀なくされていることにかんがみ、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)による求職者給付の水準を確保するために必要な緊急の財政措置を講ずるとともに、求職者給付が終わった求職者、失業している廃業者等に対して、就職及び新たな事業の開始を促進するための能力開発を支援する求職者等能力開発給付を行う緊急の措置を講じ、もって失業している者の生活の安定を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「失業」とは、離職し、又は事業を廃止し、就業の意思及び能力を有するにもかかわらず、就職することができず、又は新たに事業を開始することができない状態をいう。

2 この法律において「能力開発訓練」とは、就職又は新たな事業の開始の促進を図るために必要な教育訓練として厚生労働大臣が指定するものをいう。

3 この法律において「特定廃業者」とは、次の各号のいずれかに該当する事由によりその営む事業(土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業及び動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業を除く。)を廃止した小規模企業者(小規模企業共済法(昭和四十年法律第百二号)第二条第一項第一号から第四号までに掲げる者をいう。)をいう。

 一 破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立てその他厚生労働大臣が定める事由が生じたこと。

 二 破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立てその他厚生労働大臣が定める事由が生じた事業者に対する売掛金債権その他厚生労働省令で定める債権の回収が困難になったことその他厚生労働省令で定める事由により、当該小規模企業者の事業の継続が困難になったこと。

   第二章 雇用保険の財政の安定化を図るための措置

第三条 国は、雇用保険法による求職者給付の水準を確保するため、雇用保険の財政の安定化を図るための措置を講ずるものとする。

   第三章 求職者等能力開発給付

 (求職者等能力開発給付)

第四条 国は、能力開発訓練を受ける者に対して、求職者等能力開発給付を行う。

2 求職者等能力開発給付は、能力開発手当とする。

 (能力開発手当の受給資格)

第五条 能力開発手当は、次に掲げる者であって引き続き失業しているもの(第一号及び第二号に掲げる者にあってはこれらの号に規定する受給資格に係る離職の日、第三号に掲げる者にあってはその事業を廃止した日において六十五歳以上である者を除く。)が能力開発訓練を受ける場合に、当該能力開発訓練を受ける期間内の日(その者が当該能力開発訓練を受けるため待期している期間(政令で定める期間に限る。)内の日を含み、公共職業安定所において失業していることについての認定及び厚生労働省令で定める基準に従って能力開発訓練を受けていることについての認定(以下「失業及び能力開発訓練の認定」という。)を受けた日に限る。)について支給する。

 一 雇用保険法第二十三条第三項に規定する特定受給資格者(以下「特定受給資格者」という。)であって、当該受給資格に係る同法による求職者給付が終わったもの

 二 特定受給資格者以外の雇用保険法第十五条第一項に規定する受給資格者であって、当該受給資格に係る同法による求職者給付が終わったもののうち、当該受給資格に係る離職の日から起算して一年を経過した者

 三 特定廃業者

 (認定等)

第六条 能力開発手当の支給を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、前条に規定する者に該当する旨の認定を受けなければならない。

2 前項の認定を受けた者は、能力開発訓練を受けることとなったときは、厚生労働省令で定めるところにより、速やかに、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならない。

3 失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、申請をしなければならない。この場合において、失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法であって厚生労働省令で定めるものによって公共職業安定所と通信を行うことをもって、当該公共職業安定所への出頭に代えることができる。

4 失業及び能力開発訓練の認定は、前項の公共職業安定所において、第一項の認定を受けた後最初に失業及び能力開発訓練の認定を受けた日から起算して一月に一回ずつ直前の月に属する各日について行うものとする。

5 失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるやむを得ない理由のために、公共職業安定所に出頭すること(第三項後段の規定により同項後段に規定する方法によって公共職業安定所と通信を行うことをもって当該公共職業安定所への出頭に代えた場合にあっては、当該通信を行うこと)ができなかったときは、前二項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、その理由を記載した証明書を提出することによって、失業及び能力開発訓練の認定を受けることができる。

 (能力開発手当の支給期間、日額及び支給日数)

第七条 能力開発手当は、前条第一項の認定を受けた日から起算して三年(当該三年の期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上能力開発訓練を受けることができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により能力開発訓練を受けることができない日数を加算するものとし、その加算された期間が五年を超えるときは、五年とする。)の期間内の能力開発訓練を受けている日について、日額三千三百円を、七百三十日分を限度として支給する。

 (能力開発手当の支給方法及び支給期日)

第八条 能力開発手当は、厚生労働省令で定めるところにより、一月に一回、失業及び能力開発訓練の認定を受けた日分を支給するものとする。

2 公共職業安定所長は、第六条第一項の認定を受けた者ごとに能力開発手当を支給すべき日を定め、その者に通知するものとする。

 (調整)

第九条 能力開発手当の支給を受けることができる者が、同一の事由により、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)の規定による職業転換給付金その他法令又は条例の規定による能力開発手当に相当する給付の支給を受けることができる場合には、当該支給事由によっては、能力開発手当は支給しないものとする。ただし、当該相当する給付の額が能力開発手当の額に満たないときは、能力開発手当の額から当該相当する給付の額を控除した残りの額を能力開発手当として支給することができる。

 (不正利得の徴収)

第十条 偽りその他不正の行為により能力開発手当の支給を受けた者があるときは、厚生労働大臣は、国税徴収の例により、その者から、当該支給の価額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (受給権の保護)

第十一条 能力開発手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

 (公課の禁止)

第十二条 租税その他の公課は、能力開発手当として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

 (時効)

第十三条 能力開発手当の支給を受ける権利及び第十条第一項の規定による徴収金を徴収する権利は、二年を経過したときは、時効によって消滅する。

 (報告等)

第十四条 行政庁は、第六条第一項の認定を受けた者に対して、この法律の施行に関して必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができる。

 (厚生労働省令への委任)

第十五条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な手続その他の事項は、厚生労働省令で定める。

 (罰則)

第十六条 第六条第一項の認定を受けた者が、第十四条の規定による命令に違反して報告をせず、若しくは偽りの報告をし、文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出し、又は出頭しなかったときは、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十五年七月一日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、平成十八年六月三十日限り、その効力を失う。ただし、同日までに第六条第一項の認定を受けた者及び同項の認定の申請をした者であってこの法律の失効の際当該申請に係る処分を受けていないものについては、同日後もなおその効力を有する。

2 この法律の失効前にした行為及び前項ただし書の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の失効後にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、同項本文の規定にかかわらず、同項に規定する日後も、なおその効力を有する。

 (労働保険特別会計法の一部改正)

第三条 労働保険特別会計法(昭和四十七年法律第十八号)の一部を次のように改正する。

  第五条中「一般会計からの受入金」の下に「、失業等給付資金からの受入金」を加え、「第八条の二第一項」を「第八条の三第一項」に改める。

  第八条の三の見出しを「(失業等給付資金及び雇用安定資金の経理方法)」に改め、同条中「雇用安定資金の受払」を「失業等給付資金及び雇用安定資金の受払い」に改め、同条を第八条の四とする。

  第八条の二第三項中「前条」を「第八条」に改め、同条を第八条の三とする。

  第八条の次に次の一条を加える。

  (失業等給付資金の設置)

 第八条の二 雇用勘定に失業等給付資金を置き、一般会計からの繰入金及び失業等給付資金の運用利益金をもつてこれに充てる。

 2 前項に規定する一般会計からの繰入金は、予算の定めるところにより、繰り入れるものとする。

 3 失業等給付資金は、雇用保険事業の失業等給付費及び前条の規定による雇用勘定からの徴収勘定への繰入金(労働保険料の返還金の財源に充てるための額に相当する額の繰入金に限る。)を支弁するため必要があるときは、予算の定めるところにより、使用することができる。

  第九条第三項及び第十六条第三項中「当該年度の」の下に「失業等給付資金及び」を加える。

  第十八条第二項中「補足する」を「補足し、なお不足があるときは失業等給付資金から当該不足分を補足する」に改める。

  第二十一条の見出しを「(失業等給付資金及び雇用安定資金並びに積立金の運用)」に改め、同条中「雇用安定資金」を「失業等給付資金及び雇用安定資金」に改め、同条に次の一項を加える。

 2 前項の規定により失業等給付資金の運用利益金を生じたときは、当該利益金は、失業等給付資金に編入するものとする。

  附則に次の二項を加える。

 12 失業等給付資金は、雇用保険事業の失業等給付の支払財源の不足が解消し、その不足が当分の間生じないと認められる場合に廃止するものとする。

 13 失業等給付資金の廃止の際、失業等給付資金に残余があるときは、当該残余の額を一般会計に繰り入れるものとする。

 (独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法の一部改正)

第四条 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法(平成十四年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。

  附則第十四条のうち労働保険特別会計法第五条の改正規定中同条第一項第八号を同項第九号とし、同項第三号から第七号までを一号ずつ繰り下げ、同項第二号の次に次の一号を加える。

   三 失業等給付資金からの受入金

  附則第十四条のうち労働保険特別会計法第五条の改正規定のうち同条第二項第五号中「第八条の二第一項」を「第八条の三第一項」に改める。

 (独立行政法人労働政策研究・研修機構法の一部改正)

第五条 独立行政法人労働政策研究・研修機構法(平成十四年法律第百六十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第十六条のうち労働保険特別会計法第五条第一項第八号の改正規定中「第五条第一項第八号」を「第五条第一項第九号」に改める。

 (独立行政法人雇用・能力開発機構法の一部改正)

第六条 独立行政法人雇用・能力開発機構法(平成十四年法律第百七十号)の一部を次のように改正する。

  附則第二十三条のうち労働保険特別会計法第五条第一項第八号の改正規定中「第五条第一項第八号」を「第五条第一項第九号」に改める。

  附則第二十三条のうち労働保険特別会計法附則第三項から第十一項までを削る改正規定中「削る」を「削り、附則第十二項を附則第三項とし、附則第十三項を附則第四項とする」に改める。

     理 由

 現下の厳しい雇用失業情勢にかんがみ、失業している者の生活の安定を図るため、雇用保険法による求職者給付の水準を確保するために必要な緊急の財政措置を講ずるとともに、求職者給付が終わった求職者、失業している廃業者等の就職及び新たな事業の開始を促進するための能力開発を支援する求職者等能力開発給付を行う緊急の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

     本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、約三兆五千億円の見込みである。

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