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第一五九回

参第一〇号

   外来生物種規制法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 輸入の制限等(第三条―第七条)

 第三章 特定外来生物種の生きている個体の管理等(第八条―第十三条)

 第四章 特定外来生物種の防除(第十四条―第十六条)

 第五章 雑則(第十七条―第二十七条)

 第六章 罰則(第二十八条―第三十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、特定外来生物種の輸入の制限、管理、防除等につき必要な事項を定めることにより、国内における生物の多様性の確保を図り、もって良好な環境の保全に寄与することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において「生物の多様性」とは、生物の多様性に関する条約第二条に規定する生物の多様性をいう。

2 この法律において「特定外来生物種」とは、本来国内に存在しない生物の種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種を含む。以下「生物種」という。)のうち、国内において現にまん延しており、又はまん延するおそれがある生物種であって、そのまん延が国内における生物の多様性の確保に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものとして環境省令で定めるものをいう。

3 この法律において「特別特定外来生物種」とは、特定外来生物種のうち、その管理が著しく困難であり、かつ、そのまん延が国内における生物の多様性の確保に重大な支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものとして環境省令で定めるものをいう。

4 環境大臣は、前二項の環境省令を制定し、又は改廃しようとするときは、生物種の生物の多様性に及ぼす影響その他生物種に関し専門の学識経験を有する者(以下「学識経験者」という。)の意見を聴かなければならない。

   第二章 輸入の制限等

 (特定外来生物種の輸入の制限)

第三条 特定外来生物種(特別特定外来生物種を除く。)の生きている個体(卵、種子、胞子その他の環境省令で定める物及びその個体の器官であって環境省令で定めるものを含むものとする。以下同じ。)を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を環境大臣に提出しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 輸入しようとする生物種の名称及びその数量

 三 輸入の目的

 四 輸入後の管理方法

 五 前各号に掲げるもののほか、環境省令で定める事項

3 環境大臣は、第一項の許可の申請があった場合には、当該申請に係る個体について適正な管理が行われないおそれがあると認めるときを除き、同項の許可をしなければならない。

4 第一項の許可を受けた場合には、同項の許可を受けたことを証する書面を添付して輸入しなければならない。

5 第一項の許可には、国内における生物の多様性の確保を図るために必要な条件を付することができる。

 (特別特定外来生物種の輸入の制限)

第四条 何人も、特別特定外来生物種の生きている個体を輸入してはならない。ただし、試験研究の用その他環境省令で定める特別の用に供するため環境大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

2 前条第二項、第四項及び第五項の規定は、前項ただし書の許可について準用する。

 (新規外来生物種の輸入の制限)

第五条 新規外来生物種(第十九条の国内生物種台帳に記録されていない生物種をいい、特定外来生物種に該当するものを除く。)の生きている個体を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を環境大臣に提出しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 輸入しようとする生物種の名称及びその数量

 三 前二号に掲げるもののほか、環境省令で定める事項

3 前項の申請書には、輸入しようとする生物種の生息又は生育の状況、当該生物種と類似する生物種その他の当該生物種が国内における生物の多様性に及ぼす影響について参考となるべき事項として環境省令で定めるものを記載した書類を添付しなければならない。

4 環境大臣は、第一項の許可の申請があった場合には、その申請を審査し、申請に係る生物種が国内における生物の多様性の確保に支障を及ぼすおそれがあるものでないと確認したときでなければ、同項の許可をしてはならない。

5 環境大臣は、前項の審査をするときは、学識経験者の意見を聴かなければならない。

6 第三条第四項の規定は、第一項の許可について準用する。

7 前各項に定めるもののほか、第一項の許可の申請の手続及び審査に関し必要な事項は、環境省令で定める。

 (特定外来生物種等の輸入における証明書の添付)

第六条 第十九条の国内生物種台帳に記録されている生物種であって特定外来生物種に該当しないことの確認が容易にできるものとして環境省令で定める生物種以外の生物種の生きている個体を輸入しようとする者は、環境省令で定める場合を除き、その個体に当該生物種の名称を証する外国の政府機関が発行した証明書その他の環境省令で定める証明書を添付しなければならない。

 (特定外来生物種の侵入の防止)

第七条 国は、特定外来生物種の生きている個体が輸入貨物への付着等によって国内に侵入することを防止するため、特定外来生物種の生きている個体の輸入貨物への付着の有無の調査等に関する体制の整備に努めるとともに、侵入の経路の調査、駆除の要請その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 国民は、前項の規定による国の措置に協力するよう努めるものとする。

   第三章 特定外来生物種の生きている個体の管理等

 (飼養等を行う者の届出)

第八条 国内において特定外来生物種の生きている個体の飼養等(飼養、栽培その他の環境省令で定める行為をいう。以下この条において同じ。)を行う者は、その開始の日から三十日以内に、次に掲げる事項を環境大臣に届け出なければならない。ただし、一時的な飼養等を行う者その他の環境省令で定める者については、この限りでない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 飼養等を行う生物種の名称

 三 前二号に掲げるもののほか、環境省令で定める事項

2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項に変更があったとき、又はその者が国内において特定外来生物種の生きている個体の飼養等を行わなくなったときは、その日から三十日以内に、その旨を環境大臣に届け出なければならない。

 (管理指針)

第九条 環境大臣は、特定外来生物種の生きている個体について適正な管理が行われることを確保するため、当該特定外来生物種の生きている個体の管理に関する指針(以下この章において「管理指針」という。)を定めるものとする。

2 環境大臣は、管理指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、学識経験者の意見を聴かなければならない。

3 環境大臣は、管理指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 (遵守義務)

第十条 特定外来生物種の生きている個体の管理は、管理指針に従って行わなければならない。

 (勧告及び命令)

第十一条 環境大臣は、特定外来生物種の生きている個体の管理が管理指針に適合しないものであると認める場合において、国内における生物の多様性を確保するために必要があると認めるときは、その管理を行う者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2 環境大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

 (禁止行為)

第十二条 何人も、みだりに、特定外来生物種の生きている個体を放ち、植栽し、まき、捨て、又は飛散させてはならない。

 (取扱いの状況等の届出)

第十三条 特定外来生物種の生きている個体の販売その他環境省令で定める取扱いを業として行う者は、毎年、当該特定外来生物種の名称、取扱いの状況その他環境省令で定める事項を環境大臣に届け出なければならない。

   第四章 特定外来生物種の防除

 (防除指針)

第十四条 環境大臣は、特定外来生物種のまん延を防止するため、特定外来生物種の防除に関する指針(以下この章において「防除指針」という。)を定めるものとする。

2 防除指針においては、特定外来生物種の防除に関する基本的な事項、次条第二項の特定外来生物種防除計画の作成に関する事項その他特定外来生物種の防除に関し必要な事項を定めるものとする。

3 環境大臣は、防除指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 環境大臣は、防除指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 (特定外来生物種防除計画)

第十五条 都道府県は、必要に応じ、当該都道府県の区域内における特定外来生物種の生息又は生育の状況等に関する調査を行うものとする。

2 都道府県は、前項の調査の結果に基づき、特定外来生物種のまん延を防止するため必要があると認めるときは、防除指針に即し、当該特定外来生物種の防除に関する計画(以下「特定外来生物種防除計画」という。)を定めることができる。

3 特定外来生物種防除計画においては、防除を行うべき特定外来生物種の名称、区域及び期間、防除の内容その他必要な事項を定めるものとする。

4 都道府県は、特定外来生物種防除計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第五十一条の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。

5 都道府県は、特定外来生物種防除計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、環境大臣に報告しなければならない。

 (指示)

第十六条 環境大臣は、特定外来生物種のまん延を防止するため特に必要があると認めるときは、都道府県に対し、特定外来生物種防除計画を定め、又はこれを変更するよう指示することができる。

2 都道府県は、前項の指示を受けたときは、速やかに、特定外来生物種防除計画を定め、又はこれを変更しなければならない。

   第五章 雑則

 (報告徴収)

第十七条 環境大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、特定外来生物種の生きている個体を管理する者その他の関係者に対し、必要な報告を求めることができる。

 (立入検査)

第十八条 環境大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、その職員に、特定外来生物種の生きている個体を管理する者の事務所その他の施設に立ち入り、特定外来生物種の生きている個体その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。

2 前項の規定による立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (国内生物種台帳)

第十九条 環境大臣は、国内生物種台帳を備え、国内に存在し、又は存在していたことを確認した生物種を記録するものとする。

 (命令の改廃等)

第二十条 環境大臣は、環境の変化又は科学的知見の充実に応じ、適時に、この法律に基づく命令の改廃又は指針の改定をするように努めなければならない。

 (情報の公表)

第二十一条 環境大臣は、生物種の生きている個体を輸入しようとする者、管理する者等の便宜を図るため、この法律に基づく生物種の輸入の制限、管理等に関する情報をインターネットの利用その他適切な方法により公表するものとする。

 (啓発活動等)

第二十二条 国及び地方公共団体は、特定外来生物種の輸入の制限、管理、防除等について、知識の普及、情報の提供等を行うとともに、国民の理解及び協力を得るための啓発活動を推進するものとする。

 (補助)

第二十三条 国は、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、特定外来生物種防除計画に基づく事業を実施する都道府県に対し、当該事業の実施に要する経費の一部を補助することができる。

 (適用除外)

第二十四条 この法律(第十九条を除く。)の規定は、他の法令に基づき、国内におけるまん延を防止するための措置として環境省令で定める措置が講じられている生物種については、適用しない。

 (取締りに従事する職員)

第二十五条 環境大臣は、その職員のうち政令で定める要件を備えるものに、第十一条又は第十七条に規定する権限の一部を行わせることができる。

2 前項の規定により環境大臣の権限の一部を行う職員は、その権限を行うときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 前二項に規定するもののほか、前項の職員に関し必要な事項は、政令で定める。

 (経過措置)

第二十六条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要とされる範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (環境省令への委任)

第二十七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、環境省令で定める。

   第六章 罰則

第二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 一 第四条第一項の規定に違反した者

 二 偽りその他不正の手段により第四条第一項ただし書の許可を受けた者

 三 第十二条(特別特定外来生物種に係る場合に限る。)の規定に違反した者

第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項又は第五条第一項の規定に違反して生物種の生きている個体を輸入した者

 二 偽りその他不正の手段により第三条第一項又は第五条第一項の許可を受けた者

 三 第三条第五項(第四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による許可の条件に違反した者

 四 第十一条第二項の規定による命令に違反した者

 五 第十二条(特別特定外来生物種に係る場合を除く。)の規定に違反した者

第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第六条の規定に違反した者

 二 第十七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十八条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

 一 第二十八条 一億円以下の罰金刑

 二 第二十九条第一号、第二号又は第五号 五千万円以下の罰金刑

 三 第二十九条第三号若しくは第四号又は前条 各本条の罰金刑

第三十二条 第八条第一項若しくは第二項又は第十三条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 本来国内に存在する生物種であってそのまん延が国内における生物の多様性の確保に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものに係る規制の在り方及び特定外来生物種その他の生物種の生きている個体の取扱いを業として行う者に係る規制の在り方については、速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

第三条 この法律の規定については、この法律の施行後五年を目途として、その施行の状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

 (自然環境保全法の一部改正)

第四条 自然環境保全法の一部を次のように改正する。

  第五十一条第二項中「及び鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)」を「、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)及び外来生物種規制法(平成十六年法律第▼▼▼号)」に改める。

 (環境基本法の一部改正)

第五条 環境基本法(平成五年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。

  第四十一条第二項第三号中「及び使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成十四年法律第八十七号)」を「、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成十四年法律第八十七号)及び外来生物種規制法(平成十六年法律第▼▼▼号)」に改める。


     理 由

 国内における生物の多様性の確保を図り、もって良好な環境の保全に寄与するため、特定外来生物種の輸入の制限、管理、防除等につき必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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