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第一五九回

参第一一号

   乳幼児医療費の支給に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、乳幼児が必要かつ適切な医療を受けることができるよう、乳幼児を養育している者に乳幼児医療費を支給し、もって乳幼児の健康の保持及び福祉の増進を図り、あわせて子どもを安心して生み育てることができる環境の整備に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「乳幼児」とは、小学校就学の始期に達するまでの者をいう。

2 この法律において「保護者」とは、次のいずれかに該当する者をいう。

 一 乳幼児を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母

 二 父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない乳幼児を監護し、かつ、その生計を維持する者

3 この法律において「保険医療機関等」とは、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第六十三条第三項第一号に規定する保険医療機関又は保険薬局、同法第八十六条第一項第一号に規定する特定承認保険医療機関、法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付として行われる医療を担当する医療機関その他の病院若しくは診療所(これらに準ずるものを含む。)又は薬局であって厚生労働省令で定めるものをいう。

 (乳幼児医療費の支給)

第三条 市町村は、当該市町村の区域内に住所を有する乳幼児の疾病又は負傷について健康保険法、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定による医療に関する給付が行われた場合において、当該医療に関する給付に係る額(当該乳幼児が国民健康保険法の規定による療養の給付を受けたときは、当該療養の給付の額から当該療養の給付に関する同法の規定による一部負担金に相当する額を控除した額とする。)が当該医療に要する費用の額に満たないときは、厚生労働省令で定めるところにより、その保護者に対し、その満たない額に相当する額を乳幼児医療費として支給する。

2 前項の場合において、同項に規定する乳幼児の疾病又は負傷について法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付が行われたときは、当該医療に関する給付に係る額(当該医療に関する給付について実費徴収が行われるときは、当該給付の額から実費徴収の額に相当する額を控除した額とする。)の限度において、乳幼児医療費は、支給しない。

3 第一項の医療に要する費用の額は、健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額とする。ただし、その額は、現に当該医療に要した費用の額を超えることができない。

第四条 前条第一項に規定する乳幼児が保険医療機関等から医療を受けた場合には、市町村は、乳幼児医療費として当該医療を受けた乳幼児の保護者に支給すべき額の限度において、当該保護者が当該乳幼児の医療に関し当該保険医療機関等に支払うべき費用を、その者に代わり、当該保険医療機関等に支払うことができる。

2 前項の規定による支払があったときは、保険医療機関等から医療を受けた乳幼児の保護者に対し乳幼児医療費の支給があったものとみなす。

3 第一項に規定するところにより乳幼児が医療を受けようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、保険医療機関等に次条に規定する乳幼児医療費受給者証を提出しなければならない。ただし、緊急の場合その他やむを得ない事由のある場合として厚生労働省令で定める場合については、この限りでない。

4 市町村は、第一項の規定により保険医療機関等に支払うべき額の審査及び支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)による社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険法第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。

5 国民健康保険の被保険者である前条第一項に規定する乳幼児が第一項に規定するところにより保険医療機関等から医療を受ける場合には、国民健康保険法の規定により当該保険医療機関等に支払うべき一部負担金は、同法第四十二条第一項の規定にかかわらず、当該医療に関し市町村が第一項の規定による支払をしない旨の決定をするまでは、支払うことを要しない。

6 前条第一項に規定する乳幼児の疾病又は負傷について法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付が医療に関する現物給付として行われた際に国又は地方公共団体が当該乳幼児の扶養義務者から当該給付に要した費用の全部又は一部を徴収する場合の当該費用の徴収と、その徴収される費用に係る市町村による乳幼児医療費の支給との調整に関し必要な事項は、政令で定める。

 (乳幼児医療費受給者証)

第五条 市町村は、厚生労働省令で定めるところにより、当該市町村の区域内に住所を有する乳幼児の保護者に対し、乳幼児医療費受給者証を交付するものとする。

2 前項に定めるもののほか、乳幼児医療費受給者証の記載事項並びに交付及び返還に係る手続その他乳幼児医療費受給者証に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (時効)

第六条 乳幼児医療費の支給を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によって消滅する。

 (損害賠償との調整)

第七条 市町村は、第三条第一項に規定する乳幼児又はその保護者が当該乳幼児の疾病又は負傷に関し損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、乳幼児医療費の全部若しくは一部を支給せず、又は既に支給した乳幼児医療費の額に相当する金額を返還させることができる。

 (不正利得の徴収)

第八条 市町村は、偽りその他不正の手段により乳幼児医療費の支給を受けた者があるときは、その者から、その支給を受けた額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。

 (文書の提出等)

第九条 市町村は、乳幼児医療費の支給に関して必要があると認めるときは、乳幼児医療費の支給を受ける乳幼児の保護者又は乳幼児医療費に係る医療を担当する者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を求め、若しくは依頼し、又は当該職員に質問若しくは照会をさせることができる。

 (受給権の保護)

第十条 乳幼児医療費の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

 (租税その他の公課の禁止)

第十一条 租税その他の公課は、乳幼児医療費として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (費用の支弁)

第十二条 乳幼児医療費の支給に要する費用は、市町村の支弁とする。

 (費用の負担)

第十三条 前条の規定により市町村が支弁する費用については、政令で定めるところにより、その二分の一に相当する額を国が負担し、その四分の一に相当する額を都道府県が負担する。

 (実施規定)

第十四条 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。

 (地方財政法の一部改正)

2 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条第十四号中「健康診査」の下に「、乳幼児医療費の支給」を加える。

 (社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)

3 社会保険診療報酬支払基金法の一部を次のように改正する。

  第十五条第二項後段中「又は老人保健法」を「、老人保健法」に改め、「同法第四十六条の五の二第十項」の下に「又は乳幼児医療費の支給に関する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)第四条第四項」を加える。


     理 由

 乳幼児の健康の保持及び福祉の増進を図り、あわせて子どもを安心して生み育てることができる環境の整備に資するため、市町村が乳幼児を養育している者に乳幼児医療費を支給する制度を設けるとともに、その支給に要する費用についてその一部を国及び都道府県が負担することとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約千二百億円の見込みである。

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