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第一六二回

衆第四号

   北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条)

 第二章 拉致問題への対処(第二条―第五条)

 第三章 脱北者の保護及び支援(第六条―第十五条)

 第四章 北朝鮮に対する支援に係る基本原則(第十六条・第十七条)

 第五章 北朝鮮における人権状況の改善のための努力(第十八条・第十九条)

 第六章 罰則(第二十条・第二十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、拉致問題への対処に関する国の責務を明らかにするとともに、脱北者の保護及び支援、北朝鮮に対する支援に係る基本原則等について定めることにより、拉致問題の解決その他北朝鮮当局により侵害されている人権の救済及び北朝鮮における人権状況の改善に資することを目的とする。

   第二章 拉致問題への対処

 (拉致問題への対処に関する国の責務)

第二条 国は、北朝鮮当局による国家的犯罪行為である日本国民の拉致又は本邦からの拉致(以下「北朝鮮当局による拉致」という。)の問題を解決するため、最大限の努力をするものとする。

2 国は、北朝鮮当局による拉致の被害について調査するとともに、北朝鮮当局によって拉致された日本国民及び本邦から拉致された者(以下「拉致被害者」という。)の帰国又は入国を実現するよう努めるものとする。

3 政府は、北朝鮮当局による拉致の問題を解決するため、関係国等と連携するものとする。

 (拉致被害調査対策本部)

第三条 内閣府に、拉致被害調査対策本部(以下「本部」という。)を置く。

2 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 拉致被害者及びその疑いのある者についての調査を行うこと。

 二 拉致被害者の帰国又は入国を実現するための施策の企画及び立案並びに総合調整に関すること。

3 本部は、前項第一号の調査を行うに当たっては、北朝鮮当局による拉致に関する情報の収集等を行う民間の団体と連携するよう努めるものとする。

第四条 本部は、拉致被害調査対策本部長、拉致被害調査対策副本部長及び拉致被害調査対策本部員をもって組織する。

2 本部の長は、拉致被害調査対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

3 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

4 本部に、拉致被害調査対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第十一条の二の特命担当大臣をもって充てる。

5 副本部長は、本部長の職務を助ける。

6 本部に、拉致被害調査対策本部員を置き、関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命する。

7 前各項に定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (拉致被害者に係る国会報告)

第五条 政府は、第三条第二項第一号の調査により拉致被害者の安否その他拉致被害者に係る重要な事実が判明したときは、遅滞なく、これを国会に報告しなければならない。

   第三章 脱北者の保護及び支援

 (脱北者の保護及び支援に関する国の責務)

第六条 国は、脱北者(北朝鮮を脱出した後生活の本拠を有することなく我が国に保護を求める者(北朝鮮に戻った場合に迫害を受けるおそれがないと認められる者を除く。)をいう。以下同じ。)を保護し、及び支援する責務を有する。

2 政府は、脱北者から在外公館に対して保護の要請があった場合には、その安全の確保に努めるものとする。

3 政府は、脱北者がその希望に応じて本邦に帰国し、若しくは入国し、又は他国に出国することができるよう努めるものとする。

4 政府は、脱北者の安全の確保等について、関係国の理解と協力を得るよう努めるものとする。

5 政府は、脱北者の保護及び支援を行うに当たっては、脱北者及びその関係者の安全を確保するため、これらの者に関する情報の取扱い等について、十分に配慮するものとする。

6 政府は、関係国及び国際連合人権委員会、国際連合難民高等弁務官事務所その他の国際機関との緊密な協力の下に、北朝鮮を脱出した者の保護及び支援に積極的な役割を果たすものとする。

 (脱北者の保護及び支援を行う民間の団体との協力並びにこれに対する支援)

第七条 政府は、脱北者の保護及び支援に当たって民間の団体と協力するとともに、脱北者の保護及び支援を行う民間の団体の活動に係る安全の確保及びその活動の促進を図るため、情報の提供、財政上の措置その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (脱北者の認定)

第八条 法務大臣は、北朝鮮を脱出し本邦にある者から法務省令で定める手続により申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が脱北者である旨の認定(以下「脱北者の認定」という。)を行うことができる。

2 法務大臣は、脱北者の認定をしたときは、法務省令で定める手続により、その者に対し、脱北者認定証明書を交付し、その認定をしないときは、その者に対し、理由を付した書面をもって、その旨を通知する。

 (脱北者の認定の取消し)

第九条 法務大臣は、脱北者の認定を受けている者について、偽りその他不正の手段により脱北者の認定を受けたことが判明したときは、法務省令で定める手続により、その脱北者の認定を取り消すものとする。

2 法務大臣は、前項の規定により脱北者の認定を取り消す場合には、その者に対し、理由を付した書面をもって、その旨を通知するとともに、その者に係る脱北者認定証明書がその効力を失った旨を官報に告示する。

3 前項の規定により脱北者の認定の取消しの通知を受けたときは、脱北者認定証明書の交付を受けている者は、速やかに法務大臣にこれを返納しなければならない。

 (脱北者の在留資格に係る許可)

第十条 法務大臣は、第八条第一項の規定により脱北者の認定をする場合であって、同項の申請をした者が在留資格未取得外国人(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもって本邦に在留する者、入管法第十八条の二第一項に規定する一時庇護のための上陸の許可を受けた者で当該許可書に記載された期間を経過していないもの及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者以外の外国人をいう。以下同じ。)であるときは、当該在留資格未取得外国人が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、その者に入管法別表第二の上欄の定住者の在留資格の取得を許可するものとする。

 一 本邦に上陸した日から六月を経過した後第八条第一項の申請を行ったものであるとき。ただし、やむを得ない事情がある場合を除く。

 二 入管法第二十四条第三号又は第四号ホからヨまでに掲げる者のいずれかに該当するとき。

 三 本邦に入った後に、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)の罪又は特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成十五年法律第六十五号)第十五条若しくは第十六条の罪により懲役又は禁錮に処せられたものであるとき。

 (事実の調査)

第十一条 法務大臣は、脱北者の認定、第九条第一項の規定による脱北者の認定の取消し若しくは前条の規定による許可又は次条において準用する入管法の規定による許可、許可の取消し若しくは在留資格の取消しに関する処分を行うため必要がある場合には、入管法第二条第十二号の二に規定する難民調査官に事実の調査をさせることができる。

 (入管法の準用)

第十二条 入管法第二十四条の規定(同条第二号の三及び第十号に係る部分に限る。)は脱北者の認定を受けた外国人について、入管法第六十一条の二の二第三項及び第四項の規定は第十条の許可をする場合について、入管法第六十一条の二の三の規定は脱北者の認定を受けている外国人の在留資格の変更等について、入管法第六十一条の二の四及び第六十一条の二の五の規定は第八条第一項の申請をした在留資格未取得外国人の仮滞在について、入管法第六十一条の二の六の規定は第十条の許可を受けた外国人及び第八条第一項の申請をした在留資格未取得外国人に係る退去強制の手続について、入管法第六十一条の二の八の規定は脱北者の認定を受けた外国人について、入管法第六十一条の二の九の規定は脱北者の認定をしない処分及び脱北者の認定の取消しの処分について、入管法第六十一条の二の十三の規定は脱北者認定証明書について、入管法第六十一条の二の十四第二項及び第三項の規定は前条の調査について準用する。この場合において、入管法第六十一条の二の三中「前条第一項第一号」とあるのは「北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律(以下「北朝鮮人権侵害救済法」という。)第十条第一号」と、入管法第六十一条の二の四第一項中「第六十一条の二第一項」とあるのは「北朝鮮人権侵害救済法第八条第一項」と、同項第六号中「第六十一条の二の二第一項第一号又は第二号のいずれか」とあるのは「北朝鮮人権侵害救済法第十条第一号」と、入管法第六十一条の二の八第一項中「第六十一条の二の二第一項各号」とあるのは「北朝鮮人権侵害救済法第十条各号」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (脱北者に関する永住許可の特則等)

第十三条 脱北者の認定を受けている外国人から入管法第二十二条第一項の永住許可の申請があった場合には、法務大臣は、同条第二項本文の規定にかかわらず、その者が同項第二号に適合しないときであっても、これを許可することができる。

2 前項の場合において、同項の申請をした者が、本邦に生活の本拠を有していたことがある外国人(過去に日本国籍を有していた者及びその子に限る。以下「元本邦在住者」という。)であるときは、法務大臣は、その者が本邦に生活の本拠を有していた期間、北朝鮮に行くこととなった経緯等を勘案し、適切な配慮をするものとする。

 (脱北者の定住支援)

第十四条 国及び地方公共団体は、脱北者の認定を受けている者の定住を支援するため、居住の安定の確保、就業の支援、日本語教育等に関し必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の施策を講ずるに当たっては、脱北者の定住の支援を行う民間の団体と連携するよう努めるものとする。

 (脱北者の保護及び支援に係る国会報告)

第十五条 政府は、毎年、国会に対し、脱北者の保護及び支援の状況を報告しなければならない。

   第四章 北朝鮮に対する支援に係る基本原則

 (北朝鮮に対する支援に係る基本原則)

第十六条 北朝鮮に対する支援については、支援の目的、拉致問題への北朝鮮当局の対応、北朝鮮における人権侵害の状況等を勘案して、これを実施するかどうかを決定するものとする。

2 北朝鮮に対する人道支援については、支援物資の分配等の状況を監視し、その分配等が人道支援の目的に照らし適切に行われていない場合には、これを中止するものとする。

 (北朝鮮に対する支援に係る国会報告)

第十七条 政府は、毎年、国会に対し、北朝鮮に対する支援の目的、内容及び実施状況を報告しなければならない。

   第五章 北朝鮮における人権状況の改善のための努力

 (北朝鮮における人権状況の把握)

第十八条 政府は、元本邦在住者及びその日本人配偶者の置かれている状況その他北朝鮮における人権状況の把握に努めるものとする。

2 政府は、日本赤十字社に対し、元本邦在住者及びその日本人配偶者の置かれている状況の把握のために必要な協力を求めることができる。

 (北朝鮮における人権状況の改善に関する国際社会の取組への寄与)

第十九条 国は、北朝鮮における人権状況の改善に関する国際社会の取組に関し、主体的かつ積極的に寄与するものとする。

   第六章 罰則

第二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。

 一 偽りその他不正の手段により脱北者の認定を受けた者

 二 第十二条において準用する入管法第六十一条の二の四第一項の許可を受けた者で、仮滞在期間を経過して本邦に残留するもの

 三 第十二条において準用する入管法第六十一条の二の八第二項において準用する入管法第二十二条の四第六項の規定により期間の指定を受けた者で、当該期間を経過して本邦に残留するもの

第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第九条第三項又は第十二条において準用する入管法第六十一条の二の十三の規定に違反して脱北者認定証明書を返納しなかった者

 二 第十二条において準用する入管法第六十一条の二の四第一項の許可を受けた者で、同条第三項の規定に基づき付された条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じないもの

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第三条から第五条までの規定並びに附則第三条中内閣府設置法第四十条の改正規定及び附則第五条から第七条までの規定 平成十七年四月一日

 二 第八条から第十四条までの規定並びに次条並びに附則第四条及び第八条の規定 平成十七年七月一日

 (経過措置)

第二条 前条第二号に掲げる規定の施行の際現に在留資格未取得外国人である者に係る第十条及び第十二条の規定の適用については、第十条第一号中「本邦に上陸した日」とあるのは、「附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日」とする。

 (内閣府設置法の一部改正)

第三条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。

  第四条第一項に次の一号を加える。

  十七 北朝鮮当局による拉致の問題への対処に関する事項

  第四条第三項第二十七号の二の次に次の一号を加える。

  二十七の三 北朝鮮当局による拉致の問題への対処に関する関係行政機関の事務の調整及び拉致被害者等の調査に関すること並びに北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年法律第百四十三号)第二条及び第四条から第六条までに規定する事務(他省の所掌に属するものを除く。)

  第四条第三項第五十四号を次のように改める。

  五十四 削除

  第十一条の次に次の一条を加える。

 第十一条の二 第四条第一項第十七号及び第三項第二十七号の三に掲げる事務については、第九条第一項の規定により特命担当大臣を置き、当該事務を掌理させるものとする。

  第四十条第三項中「第一項」を「第一項及び第二項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 前項に定めるもののほか、北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律(平成十七年法律第▼▼▼号)の定めるところにより内閣府に置かれる拉致被害調査対策本部は、本府に置く。

 (法務省設置法の一部改正)

第四条 法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三十四号の次に次の一号を加える。

  三十四の二 北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律(平成十七年法律第▼▼▼号)の規定による脱北者の認定に関すること。

  第二十一条第一項中「第三十四号」を「第三十四号の二」に改める。

(災害対策基本法の一部改正)

第五条 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条第一項及び第二十八条の二第一項中「第四十条第二項」を「第四十条第三項」に改める。

 (大規模地震対策特別措置法の一部改正)

第六条 大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)の一部を次のように改正する。

  第十条第一項中「第四十条第二項」を「第四十条第三項」に改める。

 (原子力災害対策特別措置法の一部改正)

第七条 原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

  第十六条第一項中「第四十条第二項」を「第四十条第三項」に改める。

 (行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の一部改正)

第八条 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

 

  別表に次のように加える。

北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律(平成十七年法律第▼▼▼号)

第十二条において準用する出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の九第一項

第三条

第八条第二項及び第九条第二項並びに第十二条において準用する出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の二第三項及び第六十一条の二の四第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)

第四条

 


     理 由

 拉致問題の解決その他北朝鮮当局により侵害されている人権の救済及び北朝鮮における人権状況の改善に資するため、拉致問題への対処に関する国の責務を明らかにするとともに、脱北者の保護及び支援、北朝鮮に対する支援に係る基本原則等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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