衆議院

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第一六三回

衆第二三号

   石綿対策の総合的推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条―第七条)

 第二章 基本方針等(第八条・第九条)

 第三章 石綿による健康被害の予防及び環境の汚染の防止に関する施策

  第一節 石綿等の製造等の禁止(第十条)

  第二節 既存の石綿等に関する施策(第十一条―第十七条)

  第三節 石綿廃棄物に関する施策(第十八条)

 第四章 石綿による健康被害を受けた者の救済等に関する施策(第十九条―第二十三条)

 第五章 補則(第二十四条―第二十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、石綿が人の生命及び健康に重大な影響を与える物質であることにかんがみ、石綿対策に関し、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の石綿対策を推進するために必要な事項を定めることにより、石綿対策を総合的に推進し、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「石綿対策」とは、石綿による健康被害の予防及び環境の汚染の防止並びに石綿による健康被害を受けた者の救済等に関する施策その他の石綿に関する問題に対処するための施策をいう。

 (国の責務)

第三条 国は、石綿対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、国との連携を図りつつ、当該地域の実情に応じた石綿対策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (事業者の責務)

第五条 事業者は、その事業活動に関し、石綿による健康被害の予防及び環境の汚染の防止のために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する石綿対策に協力しなければならない。

 (情報の提供)

第六条 石綿対策の推進に当たっては、国民に対し、石綿及び石綿製品(石綿を含有する製品及びこれを使用した製品をいう。以下同じ。)(以下「石綿等」という。)の使用状況、石綿による健康被害の発生状況等について、必要な情報の提供が適切に行われなければならない。

 (法制上の措置等)

第七条 政府は、石綿対策を実施するため必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第二章 基本方針等

 (基本方針)

第八条 政府は、石綿対策を総合的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 石綿対策の推進に関する基本的な方向

 二 石綿等の製造等の禁止に関する事項

 三 石綿等の製造等に関する情報の提供等に関する事項

 四 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)における石綿等の除去等に関する事項

 五 建築物等の解体等の工事に係る石綿の飛散の防止等に関する事項

 六 石綿廃棄物(廃石綿及び石綿が含まれ、又は付着している廃棄物をいう。以下同じ。)の適切な処理に関する事項

 七 石綿による健康被害を受けたおそれのある者に対する健康診断等の実施等に関する事項

 八 石綿による健康被害を受けた者の救済に関する事項

 九 その他石綿対策の推進に関する重要事項

3 政府は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (関係行政機関の協力体制)

第九条 政府は、基本方針の策定及びこれに基づく施策の実施に関し、関係行政機関による協力体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

   第三章 石綿による健康被害の予防及び環境の汚染の防止に関する施策

    第一節 石綿等の製造等の禁止

第十条 国は、できる限り速やかに石綿等の製造、輸入、譲渡、提供又は使用を全面的に禁止するために必要な措置を講ずるものとする。

    第二節 既存の石綿等に関する施策

 (石綿等の製造等に関する情報の提供等)

第十一条 国及び地方公共団体は、石綿等の製造、輸入、販売等に関する情報を広く事業者及び国民に提供するため、当該情報の収集、整理及び提供等について必要な措置を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、石綿製品の製造、輸入、販売等を業として行った者による当該石綿製品の取扱い等に関する情報の提供を促進するために必要な措置を講ずるものとする。

 (建築物等における石綿等の使用状況に関する情報の提供等)

第十二条 国及び地方公共団体は、石綿等の大部分が建築物等において使用されていることにかんがみ、建築物等における石綿等の使用状況に関する情報の収集及び提供並びにデータベースの整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

 (建築物等における石綿等の除去等の措置)

第十三条 国及び地方公共団体は、石綿等が使用されている建築物等について適正な維持保全をするための措置として建築物等の所有者等によりその建築物等に使用されている石綿等の除去、封じ込め等が円滑に実施されるよう、石綿等の処理に係る費用に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (建築物等の解体等の工事に係る石綿の飛散の防止等の措置)

第十四条 国及び地方公共団体は、建築物等の解体等の工事において建設業者により石綿を当該工事の場所から飛散させないようにし、かつ、当該工事に従事する者が石綿にばく露しないようにするため、建築物等の解体等の工事に係る石綿の飛散の防止等に関する規制の強化その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (国及び地方公共団体が管理する施設に関する措置)

第十五条 国及び地方公共団体は、その管理する学校、病院、官公庁施設その他の多数の者が利用する施設又は公共施設であって、石綿等が使用されているものについて、遅滞なく、当該施設に使用されている石綿等の除去、封じ込め等の措置を実施しなければならない。

 (多数の者が利用する施設に関する事業者の措置)

第十六条 学校、病院、劇場、百貨店、事務所、飲食店その他の多数の者が利用する施設であって、石綿等が使用されているものを所有し、又は管理する事業者は、遅滞なく、当該施設に使用されている石綿等の除去、封じ込め等の措置を実施するよう努めなければならない。

 (石綿製品の適切な取扱いの確保)

第十七条 国及び地方公共団体は、石綿製品(建築物等に使用されているものを除く。以下この条において同じ。)に含まれる石綿が飛散すること等により人の健康に係る被害が生ずること等を防止するため、石綿製品の取扱いに関する技術的な助言その他の石綿製品の適切な取扱いの確保に必要な措置を講ずるものとする。

    第三節 石綿廃棄物に関する施策

第十八条 国及び地方公共団体は、石綿廃棄物の処理に当たっては、建築物等の解体等により石綿廃棄物を排出する者の有する石綿廃棄物に係る情報が活用されることが重要であることにかんがみ、当該情報が石綿廃棄物の収集、運搬又は処分を行う者に正確に伝達されるために必要な措置を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、石綿廃棄物の処理に関して石綿が飛散すること等により人の健康に係る被害又は環境の汚染が生ずることを防止するため、石綿廃棄物の特性に即した石綿廃棄物の処理に関する指針の策定及びその適切な運用の確保その他の石綿廃棄物の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるものとする。

3 国及び地方公共団体は、石綿廃棄物を安全かつ確実に処理するとともに、石綿廃棄物の減量化を図るため、溶融等により石綿廃棄物の処理を行う施設の整備の推進、石綿を無害化するための技術に関する研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。

   第四章 石綿による健康被害を受けた者の救済等に関する施策

 (健康被害に関する実態の調査等)

第十九条 国及び地方公共団体は、石綿による健康被害に関する実態の調査及びその結果の公表に関し、必要な措置を講ずるものとする。

 (健康診断等の実施)

第二十条 国及び地方公共団体は、石綿等を製造し、又は取り扱う作業が行われる事業所に勤務していた者、石綿を排出する事業所の周辺住民等石綿による健康被害を受けたおそれがある者に対する健康相談、健康診断等が適切に実施されるよう、必要な措置を講ずるものとする。

 (疾病に関する調査研究の推進)

第二十一条 国は、中皮腫その他の石綿に起因する疾病であって、その早期診断が困難であり、又はその治療方法が確立していないものについて、その早期診断又は治療の方法に関する調査研究の推進のために必要な措置を講ずるものとする。

 (健康被害を受けた者の救済)

第二十二条 国は、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し給付金を適切に支給するために必要な措置を講ずるものとする。

第二十三条 国及び地方公共団体は、石綿による健康被害を受けた者が適切な医療を受ける機会が確保されるよう、必要な措置を講ずるものとする。

   第五章 補則

 (石綿代替製品の普及等の措置)

第二十四条 国は、石綿等の製造等の禁止に関する措置の円滑な実施を図るため、石綿等に代替する物であって人の生命及び健康に影響を与えるおそれがないものに関する調査研究の推進及びその成果の普及その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (中小企業者への支援)

第二十五条 国及び地方公共団体は、石綿等の製造等の禁止に関する措置によりその経営に影響を受ける中小企業者の事業の転換の円滑化等を図るために必要な措置を講ずるものとする。

 (事業者による情報の提供の促進)

第二十六条 国及び地方公共団体は、石綿等の製造を行った事業者による工場又は事業所の名称及び所在地等の情報の提供を促進するために必要な措置を講ずるものとする。

 (災害時における石綿による健康被害の予防措置)

第二十七条 国及び地方公共団体は、災害が発生した場合における石綿による健康被害を予防するため、石綿等が大量に使用されている建築物等の所在地等についての情報の提供、石綿の飛散の防止等のための措置を防災に関する計画において定めることその他の必要な措置を講ずるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 石綿が長期にわたる潜伏期間を経て人の生命及び健康に重大な影響を与える物質であること並びに我が国において石綿等が広く使用されている状況にあることにかんがみ、国民の健康の保護及び生活環境の保全に資するため、石綿対策に関し、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の石綿対策を推進するために必要な事項を定めることにより、石綿対策を総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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