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第一六八回

参第一二号

   原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の一部を改正する法律案

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第四章 調査及び研究(第四十条)」を

第三章の二 在外被爆者に対する援護等(第三十九条の二−第三十九条の八)

 

 

第四章 調査及び研究(第四十条)

に改める。

 第三章の次に次の一章を加える。

   第三章の二 在外被爆者に対する援護等

 (在外被爆者等に対するこの法律の適用)

第三十九条の二 この法律の規定は、前章第二節及び第五節の規定を除き、被爆者健康手帳の交付を受けようとする者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないもの(次条及び第三十九条の六第一号において「在外手帳交付希望者」という。)に対する被爆者健康手帳の交付、被爆者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないもの(以下「在外被爆者」という。)に対する医療の給付に係る厚生労働大臣の認定その他の援護並びに在外被爆者が死亡したときにその葬祭を行う者に対する葬祭料の支給についても適用があるものとする。

 (被爆者健康手帳)

第三十九条の三 在外手帳交付希望者に対する第二条第一項の規定の適用については、同項中「その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)の都道府県知事」とあるのは、「最後に日本国内に有した居住地の都道府県知事(日本国内に居住地を有しなかったときその他政令で定めるときは、政令で定める都道府県知事とする。)」とする。

 (健康診断)

第三十九条の四 厚生労働大臣は、在外被爆者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、健康診断を行うように努めなければならない。

2 第八条及び第九条の規定は、前項の規定による健康診断について準用する。この場合において、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは、「厚生労働大臣」と読み替えるものとする。

 (健康診断費の支給)

第三十九条の五 厚生労働大臣は、在外被爆者が前条第一項に規定する健康診断を受けることができない場合として厚生労働省令で定める場合であって、当該在外被爆者が外国において同項に規定する健康診断以外の健康診断を受けた場合において、必要があると認めるときは、その者に対し、政令で定めるところにより、健康診断費を支給することができる。

 (各種申請に関する支援事業)

第三十九条の六 国は、外国に医師その他の者を派遣して、次に掲げる申請が適正かつ円滑に行われるようにするために必要な便宜を供与する事業を行うものとする。

 一 在外手帳交付希望者が行う第二条第一項の規定による被爆者健康手帳の交付の申請

 二 在外被爆者が行う前条の規定による健康診断費の支給の申請

 三 在外被爆者が行う第十一条第一項の規定による医療の給付に係る認定の申請

 四 前二号に掲げる申請のほか、在外被爆者が行うこの法律に規定する援護に係る申請

 五 在外被爆者が死亡したときにその葬祭を行う者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないものが行う葬祭料の支給の申請

 (保健、医療及び福祉に関する事業)

第三十九条の七 国は、在外被爆者について、その居住地における保健、医療及び福祉に関し、次に掲げる事業を行うものとする。

 一 在外被爆者の心身の健康に関する相談、在外被爆者の居宅における日常生活に関する相談その他在外被爆者の援護に関する相談に応ずる事業

 二 居宅における日常生活に関する支援を必要とする在外被爆者及び施設への入所による養護を必要とする在外被爆者に対し、必要な援助及び協力を行う事業

 三 在外被爆者に対する保健、医療及び福祉に関する情報の提供を行う事業

 四 在外被爆者の保健、医療及び福祉に関する人材の養成及び施設の整備について必要な援助及び協力を行う事業

 五 前各号に掲げる事業のほか、在外被爆者がその居住地において保健、医療及び福祉に関する支援を受けることができるようにするための事業

2 国は、日本国内において医療を受けることが特に必要であると認められる在外被爆者に対し、本邦への旅行に要する費用を支給する事業を行うものとする。

 (健康診断等を円滑に行うための環境の整備)

第三十九条の八 国は、第三十九条の四第一項に規定する健康診断及び同条第二項において準用する第九条に規定する指導並びに前二条に規定する事業が円滑に行われるようにするため、外国に医師その他の者を派遣する場合において当該派遣に関し相手国の理解と協力を得るように努める等必要な環境の整備に努めるものとする。

 第五十三条中「第七条」の下に「若しくは第三十九条の四第一項」を、「第九条」の下に「(第三十九条の四第二項において準用する場合を含む。)」を、「第三十七条」の下に「、第三十九条の六若しくは第三十九条の七第一項第一号」を加え、同条に次の一項を加える。

2 前項の規定は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。

 附則第十七条中「あった者」の下に「であって、健康診断受診者証の交付を受けたもの(次項に規定するものを除く。)」を加え、同条に次の四項を加える。

2 原子爆弾が投下された際第一条第一号に規定する区域に隣接する政令で定める区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者であって、健康診断受診者証の交付を受けたもの(日本国内に居住地及び現在地を有しないものに限る。)は、当分の間、第三十九条の四及び第三十九条の五の規定の適用については、在外被爆者とみなす。

3 健康診断受診者証の交付を受けようとする者は、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)の都道府県知事に申請しなければならない。

4 前項の規定は、健康診断受診者証の交付を受けようとする者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないものについても適用があるものとし、その適用については、同項中「その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)の都道府県知事」とあるのは、「最後に日本国内に有した居住地の都道府県知事(日本国内に居住地を有しなかったときその他政令で定めるときは、政令で定める都道府県知事とする。)」とする。

5 前項に規定する者が行う健康診断受診者証の交付の申請は、当分の間、第三十九条の六の規定の適用については、同条第一号に規定する被爆者健康手帳の交付の申請とみなす。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、原子爆弾の被爆者の高齢化の一層の進行に伴ってその健康状態の悪化が見られること及び原子爆弾の放射能の人体への影響にいまだ解明されていない部分があることにかんがみ、原子爆弾の被爆者が適切に原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく医療の給付を受けることができるよう、この法律の施行後速やかに、医療の給付に係る認定の在り方について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

2 政府は、この法律の施行後速やかに、原子爆弾の被爆者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないものに対して行う医療及び介護に要する費用の支給の在り方について、その者の居住地における医療及び介護の実情等を踏まえて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

3 政府は、前二項の規定による検討を行うに当たっては、原子爆弾の被爆者その他の関係者の意見を聴くものとする。

 (経過措置)

第三条 この法律による改正後の原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第三十九条の五の規定は、この法律の施行の日以後に在外被爆者が受ける同条に規定する健康診断について適用する。

2 前項に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。


     理 由

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定は、在外被爆者等に対する被爆者健康手帳の交付及び原爆症の認定、葬祭料の支給その他の援護についても適用があることを明らかにし、あわせて、在外被爆者に対する健康診断の実施、在外被爆者の保健、医療及び福祉に関する事業の実施等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約八億五千万円の見込みである。

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