衆議院

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第一七一回

衆第九号

   消費者団体訴訟法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 適格消費者団体

  第一節 適格消費者団体の登録等(第三条−第十二条)

  第二節 差止請求関係業務(第十三条−第十九条)

  第三節 損害賠償等団体訴訟関係業務(第二十条−第二十四条)

  第四節 経理(第二十五条−第二十八条)

  第五節 監督(第二十九条−第三十一条)

  第六節 補則(第三十二条−第三十七条)

 第三章 差止請求に係る訴訟手続等の特例(第三十八条−第四十一条)

 第四章 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例等

  第一節 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例(第四十二条−第五十五条)

  第二節 損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令に関する手続の特例(第五十六条−第五十八条)

  第三節 配当手続

   第一款 通則(第五十九条−第六十五条)

   第二款 配当(第六十六条−第七十三条)

 第五章 罰則(第七十四条−第八十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、消費者の被害の発生又は拡大を防止すること及び消費者に被害が発生した場合において適切かつ迅速な救済を行うことの重要性にかんがみ、適格消費者団体による差止請求及び損害賠償等団体訴訟に関し必要な事項を定めることにより、消費者の権利利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「差止請求」とは、次に掲げるものをいう。

 一 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第十二条の規定による請求

 二 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第十一条の二の規定による請求

 三 特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)第五十八条の四から第五十八条の九までの規定による請求

2 この法律において「損害賠償等団体訴訟」とは、共同の利益を有する多数の消費者(個人(事業として若しくは事業のためにした行為又は労働関係に関する事項に起因して受けた不利益が訴えに係る請求の原因となった場合におけるものを除く。)をいう。第四章において同じ。)のために事業者(法人その他の団体及び事業として又は事業のためにした行為が訴えに係る請求の原因となった場合における個人をいう。)又はその事業の利益のためにする行為を行った役員に対し損害賠償請求権その他の金銭債権に係る給付を求める訴えであって、当該消費者の意思に基づくことなく提起されるものをいう。

3 この法律において「適格消費者団体」とは、次条の登録を受けた消費者団体(消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第八条の消費者団体をいう。)をいう。

   第二章 適格消費者団体

    第一節 適格消費者団体の登録等

 (適格消費者団体の登録)

第三条 次のいずれかに掲げる業務を行おうとする者は、消費者権利官の登録を受けなければならない。

 一 差止請求をする権利(以下「差止請求権」という。)を消費者の利益のために行使する業務並びに当該業務の遂行に必要な消費者の被害に関する情報の収集並びに消費者の被害の防止及び救済に資する差止請求権の行使の結果に関する情報の提供に係る業務(以下「差止請求関係業務」という。)

 二 損害賠償等団体訴訟の追行(損害賠償等団体訴訟に係る強制執行、仮差押え及び仮処分に関する訴訟行為をすること並びに損害賠償等団体訴訟に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮差押命令又は仮処分命令の申立てについての決定を含む。)に基づいて弁済を受領することを含む。以下同じ。)をする業務、弁済として受領した財産(当該財産から生ずる法定果実を含む。第二十六条第二号、第六十三条第一項及び第六十七条第二号において同じ。)を配当する業務及びこれらの業務の遂行に必要な消費者の被害に関する情報を収集する業務(以下「損害賠償等団体訴訟関係業務」という。)

 (登録の申請)

第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した登録申請書を消費者権利官に提出しなければならない。

 一 名称及び住所並びに代表者の氏名

 二 前条各号に掲げる業務(以下「消費者団体訴訟業務」という。)を行おうとする事務所の所在地

 三 前二号に掲げるもののほか、消費者権利院規則で定める事項

2 前項の登録申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

 一 定款

 二 業務規程

 三 役員及び職員に関する次に掲げる書類

  イ 氏名、役職及び職業を記載した書類

  ロ 住所その他消費者権利院規則で定める事項を記載した書類

 四 最近の事業年度における財産目録、貸借対照表及び収支計算書

 五 その他消費者権利院規則で定める書類

3 前項第二号の業務規程には、消費者団体訴訟業務の実施の方法、消費者団体訴訟業務に関して知り得た情報の管理及び秘密の保持の方法その他の消費者権利院規則で定める事項が定められていなければならない。この場合において、同号の業務規程に定める消費者団体訴訟業務の実施の方法には、役員又は職員が差止請求又は損害賠償等団体訴訟に係る相手方と特別の利害関係を有する場合の措置その他業務の公正な実施の確保に関する措置が含まれていなければならない。

 (登録の実施等)

第五条 消費者権利官は、前条の規定による登録の申請があったときは、次条第一項の規定により登録を拒否する場合を除き、次に掲げる事項を適格消費者団体登録簿に登録しなければならない。

 一 前条第一項各号に掲げる事項

 二 登録年月日及び登録番号

2 消費者権利官は、前項の規定による登録をしたときは、遅滞なく、その旨を前条の規定による登録の申請をした者に通知しなければならない。

3 消費者権利官は、適格消費者団体登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。

4 適格消費者団体は、消費者権利院規則で定めるところにより、適格消費者団体である旨を、消費者団体訴訟業務を行う事務所において見やすいように掲示しなければならない。

5 適格消費者団体でない者は、その名称中に適格消費者団体であると誤認されるおそれのある文字を用い、又はその業務に関し、適格消費者団体であると誤認されるおそれのある表示をしてはならない。

 (登録の拒否)

第六条 消費者権利官は、第四条の規定による登録の申請をした者が次のいずれかに該当するとき又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。

 一 法人でない者

 二 営利を目的とする法人

 三 消費生活に関する情報の収集及び提供並びに消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の権利利益の擁護を図るための活動を行うことを主たる目的としない法人

 四 定款又は業務規程が法令に適合しない法人

 五 その業務を行う役員の構成が次のイ又はロのいずれかに該当する法人。この場合において、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の権利利益の擁護を図るための活動を行うことを主たる目的とする法人は、次のイ又はロに規定する事業者に該当しないものとみなす。

  イ その業務を行う役員の数のうちに占める特定の事業者(当該事業者との間に発行済株式の総数の二分の一以上の株式の数を保有する関係その他の消費者権利院規則で定める特別の関係のある者を含む。)の関係者(当該事業者及びその役員又は職員である者その他の消費者権利院規則で定める者をいう。ロにおいて同じ。)の数の割合が三分の一を超えていること。

  ロ その業務を行う役員の数のうちに占める同一の業種(消費者権利院規則で定める事業の区分をいう。)に属する事業を行う事業者の関係者の数の割合が二分の一を超えていること。

 六 この法律その他消費者の権利利益の擁護に関する法律で消費者権利院規則で定めるもの若しくはこれらの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない法人

 七 第三十一条第一項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない法人

 八 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(次号及び第十一号ホにおいて「暴力団員等」という。)がその事業活動を支配する法人

 九 暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある法人

 十 政治団体(政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第三条第一項に規定する政治団体をいう。)

 十一 役員のうちに次のいずれかに該当する者のある法人

  イ 成年被後見人又は被保佐人

  ロ 破産者で復権を得ないもの

  ハ 禁()  ニ 適格消費者団体が第三十一条第一項の規定により登録を取り消された場合において、その取消しの日前六月以内に当該適格消費者団体の役員であった者でその取消しの日から三年を経過しないもの

  ホ 暴力団員等

 十二 消費者団体訴訟業務を遂行するために必要と認められる消費者権利院規則で定める基準に適合する財産的基礎又は人的構成を有しない法人

2 消費者権利官は、前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、文書によりその理由を付して通知しなければならない。

 (登録に関する意見聴取)

第七条 消費者権利官は、第四条の規定による登録の申請をした者について前条第一項第八号、第九号又は第十一号ホに該当する疑いがあると認めるときは、警察庁長官の意見を聴くものとする。

 (登録の更新)

第八条 第三条の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。

2 第四条、第五条第一項及び第二項、第六条(第一項第七号を除く。)並びに前条の規定は、前項の更新について準用する。ただし、第四条第二項各号に掲げる書類については、既に消費者権利官に提出されている当該書類の内容に変更がないときは、その添付を省略することができる。

3 第一項の更新の申請があった場合において、同項の期間(以下この条において「登録の有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の登録は、登録の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。

4 前項の場合において、登録の更新がされたときは、その登録の有効期間は、従前の登録の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。

 (変更の届出)

第九条 適格消費者団体は、第四条第一項各号に掲げる事項に変更があったときは、その日から二週間以内に、その旨を消費者権利官に届け出なければならない。

2 適格消費者団体は、第四条第二項各号に掲げる書類に記載した事項に変更があったときは、その日から二週間以内に、その旨を消費者権利官に届け出なければならない。ただし、その変更が消費者権利院規則で定める軽微なものであるときは、この限りでない。

3 消費者権利官は、第一項の規定による届出を受理したときは、届出があった事項を適格消費者団体登録簿に登録しなければならない。

 (承継)

第十条 適格消費者団体がその消費者団体訴訟業務の全部を譲渡し、又は適格消費者団体について合併があったときは、その消費者団体訴訟業務の全部を譲り受けた法人又は合併後存続する法人(適格消費者団体である法人と適格消費者団体でない法人の合併後存続する適格消費者団体である法人を除く。以下この項において同じ。)若しくは合併により設立された法人は、当該適格消費者団体の地位を承継する。ただし、その消費者団体訴訟業務の全部を譲り受けた法人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人が第六条第一項第二号から第十二号までのいずれかに該当するときは、この限りでない。

2 前項の規定により適格消費者団体の地位を承継した者は、その承継の日から三十日以内に、その旨及び第四条第一項各号に掲げる事項を消費者権利官に届け出るとともに、同条第二項各号に掲げる書類を提出しなければならない。

3 前条第三項の規定は、前項の規定による届出について準用する。

 (解散の届出等)

第十一条 適格消費者団体が次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなったときは、当該各号に定める者は、その日から三十日以内に、その旨を消費者権利官に届け出なければならない。

 一 合併により消滅した場合 法人の代表者であった者

 二 破産手続開始の決定により解散した場合 破産管財人

 三 合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合 清算人

 四 消費者団体訴訟業務を廃止した場合 法人の代表者

2 適格消費者団体が前項各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなったときは、第三条の登録は、その効力を失う。

 (登録の抹消)

第十二条 消費者権利官は、第八条第一項若しくは前条第二項の規定により登録がその効力を失ったとき又は第三十一条第一項の規定により登録を取り消したときは、当該登録を抹消しなければならない。

    第二節 差止請求関係業務

 (差止請求権の行使に関する注意義務)

第十三条 適格消費者団体は、当該適格消費者団体又は第三者の不正な利益を図ることを目的として、差止請求権を行使してはならない。

2 適格消費者団体は、事案の性質に応じて他の適格消費者団体と共同して差止請求権を行使するほか、差止請求関係業務について相互に連携を図りながら協力するように努めなければならない。

 (報告等)

第十四条 適格消費者団体は、次に掲げる場合には、消費者権利院規則で定めるところにより、遅滞なく、その旨及びその内容その他消費者権利院規則で定める事項を消費者権利官に報告しなければならない。

 一 第三十八条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定による差止請求をしたとき。

 二 前号に掲げる場合のほか、裁判外において差止請求をしたとき。

 三 差止請求に係る訴えの提起(和解の申立て、調停の申立て又は仲裁合意を含む。)又は差止請求に係る仮処分命令の申立てがあったとき。

 四 差止請求に係る判決の言渡し(調停の成立、調停に代わる決定の告知又は仲裁判断を含む。)又は差止請求に係る仮処分命令の申立てについての決定の告知があったとき。

 五 前号の判決に対する上訴の提起(調停に代わる決定に対する異議の申立て又は仲裁判断の取消しの申立てを含む。)又は同号の決定に対する不服の申立てがあったとき。

 六 第四号の判決(調停に代わる決定又は仲裁判断を含む。)又は同号の決定が確定したとき。

 七 差止請求に係る裁判上の和解が成立したとき。

 八 前二号に掲げる場合のほか、差止請求に係る訴訟(和解の申立てに係る手続、調停手続又は仲裁手続を含む。)又は差止請求に係る仮処分命令に関する手続が終了したとき。

 九 差止請求に係る裁判外の和解が成立したときその他差止請求に関する相手方との間の協議が調ったとき又はこれが調わなかったとき。

 十 差止請求に関し、請求の放棄、和解、上訴の取下げその他の消費者権利院規則で定める手続に係る行為であって、それにより確定判決等(確定判決及びこれと同一の効力を有するものをいう。以下同じ。)が存することとなるものをしようとするとき。

 十一 その他差止請求に関し消費者権利院規則で定める手続に係る行為がされたとき。

2 消費者権利官は、前項の規定による報告を受けたときは、すべての適格消費者団体並びに消費者権利官、内閣総理大臣、公正取引委員会及び経済産業大臣が電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)を利用して同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置その他の消費者権利院規則で定める方法により、他の適格消費者団体並びに内閣総理大臣、公正取引委員会及び経済産業大臣に当該報告の日時及び概要その他消費者権利院規則で定める事項を伝達するものとする。

 (消費者の被害に関する情報の取扱い)

第十五条 適格消費者団体は、差止請求権の行使(差止請求権の不存在又は差止請求権に係る債務の不存在の確認の請求に係る訴訟を含む。第十九条において同じ。)に関し、消費者から収集した消費者の被害に関する情報をその相手方その他の第三者が当該被害に係る消費者を識別することができる方法で利用するに当たっては、あらかじめ、当該消費者の同意を得なければならない。

 (秘密保持義務)

第十六条 適格消費者団体の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、正当な理由がなく、差止請求関係業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 (氏名等の明示)

第十七条 適格消費者団体の差止請求関係業務に従事する者は、その差止請求関係業務を行うに当たり、相手方の請求があったときは、当該適格消費者団体の名称、自己の氏名及び適格消費者団体における役職又は地位その他消費者権利院規則で定める事項を、その相手方に明らかにしなければならない。

 (判決等に関する情報の提供)

第十八条 適格消費者団体は、消費者の被害の防止及び救済に資するため、消費者に対し、その差止請求に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。)又は裁判外の和解の内容その他必要な情報を提供するよう努めなければならない。

 (財産上の利益の受領の禁止等)

第十九条 適格消費者団体は、次に掲げる場合を除き、その差止請求に係る相手方から、その差止請求権の行使に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を受けてはならない。

 一 差止請求に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。以下この項において同じ。)又は民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十三条第一項の決定により訴訟費用(和解の費用、調停手続の費用及び仲裁手続の費用を含む。)を負担することとされた相手方から当該訴訟費用に相当する額の償還として財産上の利益を受けるとき。

 二 差止請求に係る判決に基づいて民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百七十二条第一項の規定により命じられた金銭の支払として財産上の利益を受けるとき。

 三 差止請求に係る判決に基づく強制執行の執行費用に相当する額の償還として財産上の利益を受けるとき。

 四 差止請求に係る相手方の債務の履行を確保するために約定された違約金の支払として財産上の利益を受けるとき。

2 適格消費者団体の役員又は職員は、当該適格消費者団体の差止請求に係る相手方から、その差止請求権の行使に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を受けてはならない。

3 適格消費者団体又はその役員若しくは職員は、当該適格消費者団体の差止請求に係る相手方から、その差止請求権の行使に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を第三者に受けさせてはならない。

4 前三項に規定する差止請求に係る相手方からその差止請求権の行使に関して受け又は受けさせてはならない財産上の利益には、その相手方がその差止請求権の行使に関してした不法行為によって生じた損害の賠償として受け又は受けさせる財産上の利益は含まれない。

    第三節 損害賠償等団体訴訟関係業務

 (損害賠償等団体訴訟関係業務に関する注意義務)

第二十条 適格消費者団体は、善良な管理者の注意をもって、損害賠償等団体訴訟関係業務を行わなければならない。

2 第十三条の規定は、損害賠償等団体訴訟関係業務について準用する。

 (報告等)

第二十一条 適格消費者団体は、次に掲げる場合には、消費者権利院規則で定めるところにより、遅滞なく、その旨及びその内容その他消費者権利院規則で定める事項を消費者権利官に報告しなければならない。

 一 損害賠償等団体訴訟を提起し、又は損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てをしたとき。

 二 第四十四条第一項の規定による訴訟の追行の許可又は不許可の決定の告知があったとき。

 三 損害賠償等団体訴訟に係る判決の言渡し又は損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てについての決定の告知があったとき。

 四 前号の判決に対する上訴の提起又は第二号若しくは前号の決定に対する不服の申立てがあったとき。

 五 第三号の判決又は第二号若しくは第三号の決定が確定したとき。

 六 損害賠償等団体訴訟に係る裁判上の和解が成立したとき。

 七 前二号に掲げる場合のほか、損害賠償等団体訴訟又はこれに係る仮差押命令若しくは仮処分命令に関する手続が終了したとき。

 八 第六十八条第一項の規定による配当計画認可の決定の告知があったとき。

 九 その他損害賠償等団体訴訟に関し消費者権利院規則で定める手続に係る行為がされたとき。

2 消費者権利官は、前項の規定による報告を受けたときは、すべての適格消費者団体及び消費者権利官が電磁的方法を利用して同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置その他の消費者権利院規則で定める方法により、他の適格消費者団体に当該報告の日時及び概要その他消費者権利院規則で定める事項を伝達するものとする。

 (判決等に関する情報の提供)

第二十二条 適格消費者団体は、その損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者(損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の目的である損害賠償請求権その他の金銭債権を有する消費者をいう。以下同じ。)に対し、損害賠償等団体訴訟に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮差押命令又は仮処分命令の申立てについての決定を含む。)及び第六十九条第一項第三号に規定する配当計画の内容その他必要な情報を提供するよう努めなければならない。

 (財産上の利益の受領の禁止等)

第二十三条 適格消費者団体は、次に掲げる場合を除き、その損害賠償等団体訴訟に係る相手方から、その損害賠償等団体訴訟の追行に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を受けてはならない。

 一 損害賠償等団体訴訟に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮差押命令又は仮処分命令の申立てについての決定を含む。以下この項において同じ。)に基づき弁済として財産上の利益を受けるとき。

 二 損害賠償等団体訴訟に係る判決又は民事訴訟法第七十三条第一項の決定により訴訟費用(和解の費用を含む。)を負担することとされた相手方から当該訴訟費用に相当する額の償還として財産上の利益を受けるとき。

 三 損害賠償等団体訴訟に係る判決に基づく強制執行の執行費用に相当する額の償還として財産上の利益を受けるとき。

2 適格消費者団体の役員又は職員は、当該適格消費者団体の提起した損害賠償等団体訴訟に係る相手方から、その損害賠償等団体訴訟の追行に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を受けてはならない。

3 適格消費者団体又はその役員若しくは職員は、当該適格消費者団体の提起した損害賠償等団体訴訟に係る相手方から、その損害賠償等団体訴訟の追行に関し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産上の利益を第三者に受けさせてはならない。ただし、当該損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者に対し、当該損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の目的である請求に係る金銭の支払として財産上の利益を受けさせるときは、この限りでない。

4 前三項に規定する損害賠償等団体訴訟に係る相手方からその損害賠償等団体訴訟の追行に関して受け又は受けさせてはならない財産上の利益には、その相手方がその損害賠償等団体訴訟に関してした不法行為によって生じた損害の賠償として受け又は受けさせる財産上の利益は含まれない。

 (差止請求関係業務に関する規定の準用)

第二十四条 第十六条及び第十七条の規定は、損害賠償等団体訴訟関係業務について準用する。

    第四節 経理

 (消費者団体訴訟業務に係る利益の処分)

第二十五条 適格消費者団体は、第十九条第一項各号並びに第二十三条第一項第二号及び第三号に規定する財産上の利益を受けたときは、これに相当する金額を積み立て、これを消費者団体訴訟業務に要する費用に充てなければならない。

2 適格消費者団体は、その定款において、消費者団体訴訟業務を廃止し、又は第三条の登録の失効(消費者団体訴訟業務の廃止によるものを除く。)若しくは取消しにより消費者団体訴訟業務を終了した場合において、積立金(前項の規定により積み立てられた金額をいう。)に残余があるときは、その残余に相当する金額を、他の適格消費者団体があるときは当該他の適格消費者団体に、これがないときは国庫に帰属させる旨を定めておかなければならない。

 (区分経理)

第二十六条 適格消費者団体は、次に掲げる業務に係る経理をそれぞれ区分して整理しなければならない。

 一 消費者団体訴訟業務(次号に掲げる業務を除く。)

 二 損害賠償等団体訴訟に係る確定判決等に基づいて弁済を受領する業務及び弁済として受領した財産を配当する業務

 三 消費者の権利利益の擁護を図るための活動に係る業務(前二号に掲げる業務を除く。)

 四 前三号に掲げる業務以外の業務

 (帳簿書類の作成及び保存)

第二十七条 適格消費者団体は、消費者権利院規則で定めるところにより、その業務及び経理に関する帳簿書類を作成し、これを保存しなければならない。

 (財務諸表等の作成、備置き、閲覧等及び提出等)

第二十八条 適格消費者団体は、毎事業年度終了後三月以内に、その事業年度の財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書(これらの作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。以下「財務諸表等」という。)を作成しなければならない。

2 適格消費者団体の事務所には、消費者権利院規則で定めるところにより、次に掲げる書類を備え置かなければならない。

 一 定款

 二 業務規程

 三 役職員名簿(役員及び職員の氏名、役職及び職業その他消費者権利院規則で定める事項を記載した名簿をいう。)

 四 財務諸表等

 五 収入の明細その他の資金に関する事項、寄附金に関する事項その他の経理に関する消費者権利院規則で定める事項を記載した書類

3 何人も、適格消費者団体の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該適格消費者団体の定めた費用を支払わなければならない。

 一 前項各号に掲げる書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求

 三 前項各号に掲げる書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を消費者権利院規則で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって消費者権利院規則で定めるものにより提供することの請求又は当該事項を記載した書面の交付の請求

4 適格消費者団体は、前項各号に掲げる請求があったときは、正当な理由がある場合を除き、これを拒むことができない。

5 適格消費者団体は、毎事業年度終了後三月以内に、その事業年度の第二項第三号から第五号までに掲げる書類を消費者権利官に提出しなければならない。

    第五節 監督

 (報告及び立入検査)

第二十九条 消費者権利官は、この法律の実施に必要な限度において、適格消費者団体に対し、その業務若しくは経理の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、適格消費者団体の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項に規定する立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (改善命令)

第三十条 消費者権利官は、適格消費者団体が第六条第一項第四号、第五号若しくは第八号から第十二号までのいずれかに該当することとなったと認めるとき又は適格消費者団体若しくはその役員若しくは職員が消費者団体訴訟業務の遂行に関しこの法律の規定若しくは業務規程に違反したと認めるときは、当該適格消費者団体に対し、人的体制の改善、違反の停止、業務規程の変更その他の業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 (登録の取消し等)

第三十一条 消費者権利官は、適格消費者団体について、次のいずれかに掲げる事由があるときは、第三条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて消費者団体訴訟業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

 一 偽りその他不正の手段により第三条の登録(第八条第一項の登録の更新を含む。)を受けたとき。

 二 第六条第一項第一号から第三号まで、第六号又は第八号から第十一号までのいずれかに該当することとなったとき。

 三 前条の規定による命令に違反したとき。

 四 当該適格消費者団体又はその役員若しくは職員が第十九条又は第二十三条の規定に違反したとき。

2 消費者権利官は、前項各号に掲げる事由により第三条の登録を取り消したときは、遅滞なく、文書によりその理由を付して通知しなければならない。

    第六節 補則

 (規律)

第三十二条 適格消費者団体は、これを特定の政党のために利用してはならない。

 (官公庁等への協力依頼)

第三十三条 消費者権利官は、この法律の実施のため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。

 (消費者権利官への意見)

第三十四条 警察庁長官は、適格消費者団体について、第六条第一項第八号、第九号又は第十一号ホに該当する事由があると疑うに足りる相当な理由があるため、消費者権利官が当該適格消費者団体に対して適当な措置をとることが必要であると認める場合には、消費者権利官に対し、その旨の意見を述べることができる。

 (判決等に関する情報の公表)

第三十五条 消費者権利官は、消費者の被害の防止及び救済に資するため、適格消費者団体から第十四条第一項第四号から第九号まで及び第十一号の規定による報告を受けたときは、インターネットの利用その他適切な方法により、速やかに、差止請求に係る判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。)又は裁判外の和解の概要、当該適格消費者団体の名称及び当該差止請求に係る相手方の氏名又は名称その他消費者権利院規則で定める事項を公表するものとする。

2 消費者権利官は、損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者の被害の救済に資するため、適格消費者団体から第二十一条第一項第二号から第九号までの規定による報告を受けたときは、インターネットの利用その他適切な方法により、速やかに、損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の追行の許可の決定、判決(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮差押命令又は仮処分命令の申立てについての決定を含む。)又は第六十九条第一項第三号に規定する配当計画の概要、当該適格消費者団体の名称及び当該損害賠償等団体訴訟に係る相手方の氏名又は名称その他消費者権利院規則で定める事項を公表するものとする。

3 前二項に規定する事項のほか、消費者権利官は、消費者団体訴訟業務に関する情報を広く国民に提供するため、インターネットの利用その他適切な方法により、適格消費者団体の名称及び住所並びに消費者団体訴訟業務を行う事務所の所在地その他消費者権利院規則で定める必要な情報を公表することができる。

 (資金の確保及び情報の提供)

第三十六条 国及び地方公共団体は、適格消費者団体による消費者団体訴訟業務の実施に必要な資金の確保に努めるものとする。

2 消費者権利官及び地方公共団体は、消費者権利院規則で定めるところにより、適格消費者団体の求めに応じ、当該適格消費者団体が差止請求権を行使し、又は損害賠償等団体訴訟の追行をするために必要な限度において、当該適格消費者団体に対し、消費生活に関する相談に関する情報で消費者権利院規則で定めるものを提供することができる。

3 前項の規定により情報の提供を受けた適格消費者団体は、当該情報を当該差止請求権の行使又は損害賠償等団体訴訟の追行の用に供する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

 (強制執行等の制限)

第三十七条 損害賠償等団体訴訟に関し生じた債権に基づく場合を除き、適格消費者団体の財産のうち第二十六条第二号の業務に係るものとして区分された経理に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。次項において同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。第三項において同じ。)をすることができない。

2 前項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、適格消費者団体は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法第三十八条及び民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四十五条の規定を準用する。

3 第一項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、適格消費者団体は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。

   第三章 差止請求に係る訴訟手続等の特例

 (書面による事前の請求)

第三十八条 適格消費者団体は、差止請求に係る訴えを提起しようとするときは、その訴えの被告となるべき者に対し、あらかじめ、請求の要旨及び紛争の要点その他の消費者権利院規則で定める事項を記載した書面により差止請求をし、かつ、その到達した時から一週間を経過した後でなければ、その訴えを提起することができない。ただし、当該被告となるべき者がその差止請求を拒んだときは、この限りでない。

2 前項の請求は、その請求が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

3 前二項の規定は、差止請求に係る仮処分命令の申立てについて準用する。

 (訴訟の目的の価額)

第三十九条 差止請求に係る訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。

 (管轄)

第四十条 差止請求に係る訴訟については、民事訴訟法第五条(第五号に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。

2 次の各号に掲げる規定による差止請求に係る訴えは、当該各号に定める行為があった地を管轄する裁判所にも提起することができる。

 一 消費者契約法第十二条 同条に規定する事業者等の行為

 二 不当景品類及び不当表示防止法第十一条の二 同条に規定する事業者の行為

 三 特定商取引に関する法律第五十八条の四から第五十八条の九まで これらの規定に規定する当該差止請求に係る相手方である販売業者、役務提供事業者、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者、関連商品の販売を行う者又は業務提供誘引販売業を行う者(同法第五十八条の七第二項の規定による差止請求に係る訴えにあっては、勧誘者)の行為

 (間接強制の支払額の算定)

第四十一条 差止請求権について民事執行法第百七十二条第一項に規定する方法により強制執行を行う場合において、同項又は同条第二項の規定により債務者が債権者に支払うべき金銭の額を定めるに当たっては、執行裁判所は、債務不履行により消費者が受けるべき不利益を特に考慮しなければならない。

   第四章 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例等

    第一節 損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例

 (損害賠償等団体訴訟の追行)

第四十二条 適格消費者団体は、共同の利益を有する多数の消費者の被害の救済を図るため、裁判所の許可を得て、自己の名をもって損害賠償等団体訴訟の追行をすることができる。

 (訴訟の提起の方式等)

第四十三条 損害賠償等団体訴訟の提起は、訴状に、損害賠償等団体訴訟である旨及び当該損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者の範囲を記載してする。

2 第三十九条の規定は、損害賠償等団体訴訟について準用する。

 (訴訟の追行の許可)

第四十四条 裁判所は、適格消費者団体が損害賠償等団体訴訟を提起したときは、当該損害賠償等団体訴訟の追行について許可又は不許可の決定をする。

2 裁判所は、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、前項の規定による許可の決定をしなければならない。

 一 当該損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の目的が、共同の利益を有する多数の消費者の有する損害賠償請求権その他の金銭債権であるとき。

 二 当該損害賠償等団体訴訟の追行が、当該損害賠償等団体訴訟に係る対象消費者による訴えの提起その他の方法に比して、当該対象消費者の権利の実現上有利であると認められるとき。

 三 当該適格消費者団体によれば、適切に当該損害賠償等団体訴訟の追行をすることができると認められるとき。

3 裁判所は、第一項の規定による許可の決定をする場合には、次に掲げる事項を定め、許可の決定の主文に掲げなければならない。

 一 対象消費者の範囲

 二 対象消費者が除外の申出をすることができる期間

4 裁判所は、第一項の規定による許可又は不許可の決定をする場合には、当事者を審尋しなければならない。

5 裁判所は、第一項の規定による許可又は不許可の決定をするに当たっては、職権で、必要な調査をすることができる。

6 第一項の規定による許可又は不許可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

7 第一項の規定による不許可の決定が確定したときは、当該損害賠償等団体訴訟は、当然に終了する。

 (許可の決定の公告)

第四十五条 裁判所は、前条第一項の規定による許可の決定が確定したときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。

 一 許可の決定の主文

 二 許可の決定に係る適格消費者団体の名称及び住所並びに代表者の氏名

 三 許可の決定に係る損害賠償等団体訴訟の被告の氏名又は名称及び住所並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名

 四 許可の決定に係る損害賠償等団体訴訟の請求の趣旨及び原因の要旨

 五 対象消費者は次条第一項の除外の申出をすることができる旨

 六 許可の決定に係る損害賠償等団体訴訟についての確定判決等は、対象消費者であって次条第一項の除外の申出をしなかったものに対してその効力を有する旨

 七 前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

2 前項の規定による公告は、官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法その他不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として最高裁判所規則で定める方法でしなければならない。

 (除外の申出)

第四十六条 対象消費者は、第四十四条第三項第二号の期間(次項において「除外申出期間」という。)内に、裁判所に対して、損害賠償等団体訴訟からの除外の申出を書面によりすることができる。

2 対象消費者が、除外申出期間が満了する前に損害賠償等団体訴訟に係る訴訟の目的である損害賠償請求権その他の金銭債権について訴えを提起したとき(除外申出期間が満了する前に当該訴えを取り下げた場合を除く。)は、除外申出期間が満了する日に、前項の除外の申出をしたものとみなす。

3 裁判所は、第一項の除外の申出があったときは、当事者にその旨を通知しなければならない。

 (口頭弁論期日)

第四十七条 損害賠償等団体訴訟の口頭弁論は、第四十五条第一項の規定による公告があった日から二週間を経過した後でなければ開始することができない。

 (対象消費者の範囲の変更)

第四十八条 裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、決定により、対象消費者の範囲を変更することができる。ただし、控訴審においては、相手方の同意がある場合に限る。

2 第四十四条第三項から第六項まで、第四十五条及び第四十六条の規定は、前項の規定による変更の決定について準用する。

 (訴訟の追行の許可の取消し)

第四十九条 裁判所は、損害賠償等団体訴訟を追行する適格消費者団体が適切な時期に攻撃又は防御の方法を提出しないときその他適切に損害賠償等団体訴訟の追行をしないとき、当該適格消費者団体に係る第三条の登録が第八条第一項若しくは第十一条第二項の規定により失効し又は第三十一条第一項の規定により取り消されたときその他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、決定により、第四十四条第一項の規定による許可の決定を取り消すことができる。

2 第四十四条第四項から第六項までの規定は、前項の規定による取消しの決定について準用する。

3 第一項の規定による取消しの決定が確定したとき(次条第一項の規定により損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続が中断するときを除く。)は、裁判所は、当該取消しの決定に係る適格消費者団体の名称及び住所並びに代表者の氏名その他最高裁判所規則で定める事項を公告しなければならない。

4 第四十五条第二項の規定は、前項の公告について準用する。

5 裁判所は、第一項の規定による取消しの決定が確定したときは、消費者権利官に対し、当該取消しの決定に係る適格消費者団体の名称及び住所並びに代表者の氏名その他最高裁判所規則で定める事項を通知するものとする。

 (訴訟手続の中断及び受継)

第五十条 一の損害賠償等団体訴訟について、前条第一項の規定による取消しの決定その他の事由により、当該損害賠償等団体訴訟の追行をするすべての適格消費者団体が当該損害賠償等団体訴訟の追行をすることができなくなったときは、その訴訟手続は中断する。

2 前項の規定により損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続が中断したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、他の適格消費者団体のうちから中断した訴訟手続を受け継ぐべき適格消費者団体を指定するものとする。

3 前項の規定による指定があったときは、当該指定に係る適格消費者団体について、第四十四条第一項の規定による許可の決定があったものとみなす。

4 第二項の規定による指定をしたときは、裁判所は、当該指定に係る適格消費者団体の名称及び住所並びに代表者の氏名その他最高裁判所規則で定める事項を公告しなければならない。

5 第四十五条第二項の規定は、前項の公告について準用する。

6 第一項の規定により中断した訴訟手続について第二項の指定をすることができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。

 (職権証拠調べ)

第五十一条 裁判所は、損害賠償等団体訴訟において、本案について必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。

 (受命裁判官による証人等の尋問等)

第五十二条 裁判所は、損害賠償等団体訴訟において、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人又は当事者本人の尋問をさせることができる。

2 地方裁判所においては、損害賠償等団体訴訟について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。

3 前項の場合には、判事補は、同時に三人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。

 (相当な損害額の認定)

第五十三条 損害賠償等団体訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 (訴えの取下げ等)

第五十四条 適格消費者団体は、裁判所の許可を得なければ、損害賠償等団体訴訟に係る訴えの取下げ、請求の放棄、裁判上の和解又は上訴の取下げをすることができない。

2 裁判所は、前項の許可の決定をするに当たっては、対象消費者(第四十六条第一項(第四十八条第二項において準用する場合を含む。)の除外の申出をした者を除く。)に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。

3 第四十四条第五項及び第六項並びに第四十五条(第一項第五号を除く。)の規定は、第一項の許可の決定について準用する。

 (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲等)

第五十五条 損害賠償等団体訴訟の確定判決等は、対象消費者(第四十六条第一項(第四十八条第二項において準用する場合を含む。)の除外の申出をした者を除く。)に対してもその効力を有する。

2 損害賠償等団体訴訟についての判決の主文においては、対象消費者の範囲を掲げなければならない。

    第二節 損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令に関する手続の特例

 (訴訟追行の許可の決定が確定していない場合の申立て)

第五十六条 適格消費者団体は、第四十二条の規定にかかわらず、当該損害賠償等団体訴訟が第四十四条第二項各号のいずれにも該当することを疎明して、当該損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令の申立てをすることができる。

 (損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令の効力)

第五十七条 損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令は、当該損害賠償等団体訴訟を提起した適格消費者団体及びその地位を承継した適格消費者団体のためにのみその効力を有する。

 (損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続の特例に関する規定の準用)

第五十八条 第四十三条第一項及び第五十三条の規定は、損害賠償等団体訴訟に係る仮差押命令に関する手続について準用する。

    第三節 配当手続

     第一款 通則

 (管轄)

第五十九条 配当手続(損害賠償等団体訴訟において確定した損害賠償請求権その他の金銭債権の管理及び配当に係る手続をいう。以下同じ。)に係る事件は、第一審裁判所の管轄に専属する。

 (裁判所による監督)

第六十条 配当手続に係る事件は、裁判所の監督に属する。

2 裁判所は、職権で、配当手続に係る事件に関して必要な調査をすることができる。

 (指定等)

第六十一条 適格消費者団体について、当該適格消費者団体の追行に係る損害賠償等団体訴訟において確定した損害賠償請求権その他の金銭債権の管理又は配当を適切に行っていないときその他重要な事由があるときは、裁判所は、当該適格消費者団体の有する当該損害賠償等団体訴訟に係る確定判決等に基づく地位を承継すべき適格消費者団体として他の適格消費者団体を指定するものとする。

2 前項の規定による指定がされたときは、同項の地位は、その指定の時においてその指定を受けた適格消費者団体が承継する。

3 裁判所は、第一項又は次項の規定による指定を受けた適格消費者団体(以下この項及び次項において「指定適格消費者団体」という。)がその承継した地位に係る損害賠償請求権その他の金銭債権の管理又は配当を適切に行っていないときその他重要な事由があるときは、当該指定適格消費者団体に係る指定を取り消さなければならない。

4 裁判所は、前項の規定により指定適格消費者団体に係る指定を取り消したときは、当該指定適格消費者団体の承継していた地位を承継すべき適格消費者団体として他の適格消費者団体を新たに指定するものとする。

5 前項の規定による新たな指定がされたときは、同項の地位は、その新たな指定の時においてその新たな指定を受けた適格消費者団体が承継する。

6 裁判所は、第一項又は第四項の規定による指定をしたときは、その旨及びその指定の日を公告しなければならない。

7 前項の規定による公告は、官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法その他不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として最高裁判所規則で定める方法でしなければならない。

8 裁判所は、第一項又は第四項の規定による指定をしたときは、消費者権利官に対しその旨を通知するものとする。

 (事件に関する文書等の閲覧等)

第六十二条 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この節の規定(第六十四条において準用する民事訴訟法の規定を含む。)に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。

2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

3 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

 (報酬等)

第六十三条 適格消費者団体は、裁判所の許可を得て、損害賠償等団体訴訟に係る確定判決等に基づき弁済として受領した財産のうちから、配当手続のため必要な費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。

2 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 (民事訴訟法の準用)

第六十四条 配当手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用する。

 (最高裁判所規則)

第六十五条 この節に定めるもののほか、配当手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

     第二款 配当

 (配当計画の提出等)

第六十六条 適格消費者団体は、配当を行おうとするときは、裁判所の定める期間内に、配当計画を作成し、これを裁判所に提出しなければならない。

2 裁判所は、特別の事情があるときは、申立てにより又は職権で、前項の期間を伸長することができる。

 (配当計画の記載事項)

第六十七条 配当計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 配当に加えるべき対象消費者の範囲

 二 損害賠償等団体訴訟に係る確定判決等に基づき弁済として受領した財産の総額

 三 前号の財産のうち配当に充てることができるものの額

 四 配当の基準及びその方法

 五 権利の届出をすべき期間及びその方法

 六 権利の確認の方法

 七 権利に関する紛争の処理に関し必要な事項

 八 前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

 (配当計画認可の決定等)

第六十八条 裁判所は、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、配当計画認可の決定をしなければならない。

 一 配当計画が法令及び最高裁判所規則の規定に適合するものであること。

 二 配当計画の内容が確定判決等に基づいていること。

 三 配当計画の内容が公正かつ衡平であること。

2 配当計画認可の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 (配当計画の公告)

第六十九条 裁判所は、配当計画認可の決定があったときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。

 一 配当計画認可の決定の主文

 二 配当計画認可の決定に係る適格消費者団体の名称及び住所並びに代表者の氏名

 三 配当計画

 四 損害賠償等団体訴訟に係る確定判決等の要旨

 五 前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

2 第六十一条第七項の規定は、前項の規定による公告について準用する。

 (配当計画の実施等)

第七十条 配当計画認可の決定があったときは、適格消費者団体は、速やかに、配当計画を実施しなければならない。

2 適格消費者団体は、裁判所の定めるところにより、配当計画の実施状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。

 (配当計画の変更)

第七十一条 配当計画認可の決定があった後配当計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、裁判所は、配当終了前に限り、申立てにより又は職権で、決定により、配当計画を変更することができる。

2 第六十九条の規定は、前項の規定による変更の決定があった場合について準用する。

 (残余の金銭の処理)

第七十二条 適格消費者団体は、配当が終了した場合において、第六十七条第三号の金額に相当する金銭に残余があるときは、これを国庫に納付しなければならない。

 (配当終了の場合の報告義務等)

第七十三条 適格消費者団体は、配当が終了した場合には、遅滞なく、裁判所に計算の報告をしなければならない。

2 裁判所は、前項の報告があったときは、その旨を公告しなければならない。

3 第六十一条第七項の規定は、前項の規定による公告について準用する。

   第五章 罰則

第七十四条 適格消費者団体の役員又は職員が、当該適格消費者団体の損害賠償等団体訴訟に係る相手方から、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、当該適格消費者団体においてその損害賠償等団体訴訟の追行をしないこと若しくはしなかったこと、その損害賠償等団体訴訟に係る訴えの取下げ、裁判上の和解若しくは請求の放棄をすること若しくはしたこと又はその損害賠償等団体訴訟若しくはこれに係る他の手続を他の事由により終了させること若しくは終了させたことの報酬として、金銭その他の財産上の利益を受け、又は第三者(当該適格消費者団体を含む。次条第一項において同じ。)に受けさせたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

2 前項の利益を供与した者も、同項と同様とする。

第七十五条 適格消費者団体の役員又は職員が、当該適格消費者団体の差止請求に係る相手方から、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、当該適格消費者団体においてその差止請求権の行使をしないこと若しくはしなかったこと、その差止請求権の放棄をすること若しくはしたこと、その相手方との間でその差止請求に係る和解をすること若しくはしたこと又はその差止請求に係る訴訟その他の手続を他の事由により終了させること若しくは終了させたことの報酬として、金銭その他の財産上の利益を受け、又は第三者に受けさせたときは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

2 前項の利益を供与した者も、同項と同様とする。

第七十六条 第七十四条第一項又は前条第一項の場合において、犯人又は情を知った第三者が受けた財産上の利益は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

第七十七条 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。

 一 偽りその他不正の手段により第三条の登録(第八条第一項の登録の更新を含む。)を受けた者

 二 第十六条(第二十四条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、消費者団体訴訟業務に関して知り得た秘密を漏らした者

第七十八条 次のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

 一 第四条第一項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の登録申請書又は第四条第二項各号(第八条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる書類に虚偽の記載をして提出した者

 二 第五条第五項の規定に違反して、適格消費者団体であると誤認されるおそれのある文字をその名称中に用い、又はその業務に関し、適格消費者団体であると誤認されるおそれのある表示をした者

 三 第二十七条の規定に違反して、帳簿書類の作成若しくは保存をせず、又は虚偽の帳簿書類の作成をした者

 四 第二十九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第七十九条 第七十四条第一項及び第七十五第一項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

2 第七十四条第二項及び第七十五第二項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。

第八十条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第七十四条、第七十五条、第七十七条又は第七十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

第八十一条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。

 一 第五条第四項の規定による掲示をせず、又は虚偽の掲示をした者

 二 第九条第一項若しくは第二項、第十条第二項若しくは第十一条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をし、又は第十条第二項の書類に虚偽の記載をして提出した者

 三 第十四条第一項又は第二十一条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 四 第十五条の規定に違反して、消費者の被害に関する情報を利用した者

 五 第十七条(第二十四条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定に違反して、第十七条の請求を拒んだ者

 六 第二十八条第一項の規定に違反して、財務諸表等を作成せず、又はこれに記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をした者

 七 第二十八条第二項の規定に違反して、書類を備え置かなかった者

 八 第二十八条第四項の規定に違反して、正当な理由がないのに同条第三項各号に掲げる請求を拒んだ者

 九 第二十八条第五項の規定に違反して、書類を提出せず、又は書類に虚偽の記載若しくは記録をして提出した者

 十 第三十六条第三項の規定に違反して、情報を同項に定める目的以外の目的のために利用し、又は提供した者

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、消費者権利院法(平成二十一年法律第▼▼▼号)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 附則第十条及び第十一条の規定 公布の日

 二 第二条第一項第三号及び第四十条第二項第三号の規定 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律(平成二十年法律第七十四号)の施行の日又はこの法律の施行の日(次条及び附則第四条において「施行日」という。)のいずれか遅い日

 (登録に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の際現に附則第九条による改正前の消費者契約法(以下「旧消費者契約法」という。)第十三条第一項の認定を受けている者は、施行日において第三条の登録を受けたものとみなす。この場合において、第八条第一項の期間は、旧消費者契約法第十七条第一項に規定する期間の残存期間とする。

2 前項の規定により第三条の登録を受けたものとみなされる者は、施行日から起算して三月以内に第四条第一項各号に掲げる事項を記載した書類及び同条第二項各号に掲げる書類を消費者権利官に提出しなければならない。

3 消費者権利官は、前項の書類の提出があったときは、当該書類に記載された第四条第一項各号に掲げる事項を適格消費者団体登録簿に登録するものとする。

 (登録の拒否に関する経過措置)

第三条 第六条第一項第六号又は第十一号ハの規定の適用については、旧消費者契約法の規定若しくは旧消費者契約法に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反して罰金の刑に処せられた者は、その処分を受けた日において、この法律の規定若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反し、罰金の刑に処せられた者とみなす。

2 第六条第一項第七号又は第十一号ニの規定の適用については、旧消費者契約法第三十四条の規定により旧消費者契約法第十三条第一項の認定を取り消された者は、その処分を受けた日において、第三十一条第一項の規定により登録を取り消された者とみなす。

 (報告等に関する経過措置)

第四条 施行日が特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律の施行の日前である場合には、同法の施行の日の前日までの間における第十四条第二項の規定の適用については、同項中「、公正取引委員会及び経済産業大臣」とあるのは、「及び公正取引委員会」とする。

 (積立金に関する経過措置)

第五条 附則第二条第一項の規定により第三条の登録を受けた者とみなされる者が旧消費者契約法第二十八条第五項の規定により積み立てた金額については、第二十五条第一項の規定により積み立てられたものとみなす。

 (罰則に関する経過措置)

第六条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第七条 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要となる経過措置は、政令で定める。

 (不当景品類及び不当表示防止法の一部改正)

第八条 不当景品類及び不当表示防止法の一部を次のように改正する。

  第十一条の二中「消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項」を「消費者団体訴訟法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第二条第三項」に改める。

 (消費者契約法の一部改正)

第九条 消費者契約法の一部を次のように改正する。

  目次を次のように改める。

 目次

  第一章 総則(第一条−第三条)

  第二章 消費者契約

   第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第四条−第七条)

   第二節 消費者契約の条項の無効(第八条−第十条)

   第三節 補則(第十一条)

  第三章 差止請求権(第十二条)

  第四章 雑則(第十三条)

  附則

  第二条第二項中「(第四十三条第二項第二号を除く。)」を削り、同条第四項を次のように改める。

 4 この法律において「適格消費者団体」とは、消費者団体訴訟法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第二条第三項に規定する適格消費者団体をいう。

  「第三章 差止請求」を「第三章 差止請求権」に改める。

  第三章第一節の節名を削る。

  第十二条の見出しを削り、同条第一項中「不特定かつ多数の」を削り、「同じ。)」の下に「又は詐欺等行為(人を詐欺し、又は人を強迫する行為をいう。次項において同じ。)」を加え、同条第二項中「不特定かつ多数の」を削り、「規定する行為」の下に「又は詐欺等行為」を加え、同条第三項中「不特定かつ多数の」を削り、「次項において同じ。)」を「次項及び第五項において同じ。)若しくは民法第九十条の規定により無効とされる消費者契約の条項」に改め、同条第四項中「不特定かつ多数の」を削り、「条項」の下に「若しくは民法第九十条の規定により無効とされる消費者契約の条項」を加え、同条に次の一項を加える。

 5 適格消費者団体は、事業者又はその代理人が、消費者契約を締結するに際し、消費者との間で第八条から第十条までに規定する消費者契約の条項若しくは民法第九十条の規定により無効とされる消費者契約の条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行うことを推薦し又は提案する行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者又はその代理人に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。この場合においては、第三項ただし書の規定を準用する。

  第十二条の二並びに第三章第二節及び第三節を削る。

  第四章中第四十八条を第十三条とする。

  第五章を削る。

 (消費者契約法等の一部を改正する法律の一部改正)

第十条 消費者契約法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第二十九号)の一部を次のように改正する。

  第二条を削り、第三条を第二条とする。

  第四条のうち特定商取引に関する法律第五章の次に一章を加える改正規定のうち第五十八条の四第一項中「消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項」を「消費者団体訴訟法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第二条第三項」に改め、第四条を第三条とする。

  附則第一項中「第二条及び第四条」を「第三条」に改め、附則第二項を削り、附則第三項中「第一条又は第二条の規定の」を「第一条の規定の」に、「それぞれ第一条又は第二条」を「同条」に改め、同項を附則第二項とする。

 (関係法律の整備)

第十一条 前三条に定めるもののほか、この法律の施行に伴う関係法律の整備については、別に法律で定める。

 (検討)

第十二条 国は、この法律の施行後五年を目途として、消費者の被害の状況、適格消費者団体による差止請求及び損害賠償等団体訴訟の状況その他社会経済情勢の変化を勘案しつつ、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。


     理 由

 消費者の被害の発生又は拡大を防止すること及び消費者に被害が発生した場合において適切かつ迅速な救済を行うことの重要性にかんがみ、消費者の被害の救済を図るため適格消費者団体が損害賠償等団体訴訟を追行することができることとするとともに、適格消費者団体の消費者権利官による登録等の制度並びに差止請求及び損害賠償等団体訴訟に係る訴訟手続等について所要の規定を整備する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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