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第一七一回

参第七号

   国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、高等学校等の生徒の保護者に高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)を支給すること等により、国公立の高等学校における教育の実質的無償化を推進し、あわせて私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減を図り、もって高等学校等における教育の機会均等に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「高等学校等」とは、次に掲げる学校(第一号から第三号までに掲げる学校については、専攻科及び別科を除く。)をいう。

 一 高等学校

 二 中等教育学校の後期課程

 三 特別支援学校の高等部

 四 専修学校及び各種学校(高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学大臣が指定するものに限る。第四項並びに第七項第一号及び第三号において同じ。)

 五 高等専門学校(第一学年から第三学年までに限る。第四項並びに第七項第二号及び第三号において同じ。)

2 この法律において「国公立の高等学校」とは、国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人(以下単に「国立大学法人」という。)又は地方公共団体が設置する高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。)をいう。

3 この法律において「私立の高等学校等」とは、国(国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。)又は地方公共団体(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人を含む。第七項第三号において同じ。)以外の者が設置する高等学校等をいう。

4 この法律において「生徒」とは、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部並びに専修学校及び各種学校の生徒をいい、高等専門学校の学生を含むものとする。

5 この法律において「保護者」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいい、成年に達した生徒の授業料を負担する者を含むものとする。

6 この法律において「標準授業料額」とは、国公立の高等学校の授業料の年額(学年による教育課程の区分を設けない国公立の高等学校であって授業料の年額を定めないものにあっては、三年(高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。第五条第一項において同じ。)の定時制の課程及び通信制の課程(学校教育法第四条第一項に規定する定時制の課程及び通信制の課程をいう。第五条第一項において同じ。)にあっては、四年)で卒業する場合における一年当たりの授業料の額。第十六条において同じ。)の標準となるべき額として国公立の高等学校の種類及び課程その他の区分に応じて政令で定める額をいう。

7 この法律において「公立全日制課程の標準授業料額相当額」とは、私立の高等学校等及び次に掲げる学校(第四条第二号において「国公立の専修学校等」という。)の生徒が、地方公共団体が設置する高等学校の全日制の課程(学校教育法第四条第一項に規定する全日制の課程をいう。第六条第一項において同じ。)に在学したとした場合における標準授業料額に相当する額として政令で定める額をいう。

 一 国(国立大学法人を含む。)が設置する専修学校

 二 独立行政法人国立高等専門学校機構が設置する高等専門学校

 三 地方公共団体が設置する専修学校及び各種学校並びに高等専門学校

 (就学支援金の支給)

第三条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、二十歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間に高等学校等に在学する生徒について、その保護者(当該保護者以外の者が生徒の授業料について出えんしているときは、その者を含む。以下同じ。)に対し、就学支援金を支給する。

2 前項の場合において、当該生徒が同時に二以上の高等学校等に在学するときは、就学支援金は、当該生徒の保護者の選択する一の高等学校等について支給する。

3 市町村長は、当該生徒の保護者が当該高等学校等の授業料を滞納しているときは、第一項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、就学支援金を支給しないことができる。

 (就学支援金の額)

第四条 就学支援金は、毎月の初日において高等学校等に在学する生徒(以下「支給対象生徒」という。)について、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、当該生徒が当該年度一年間在学した場合に納めるべき授業料の額(当該授業料の額が次の各号に掲げる生徒の区分に応じそれぞれ当該各号に定める額を超える場合にあっては、当該各号に定める額)の十二分の一の額とする。

 一 国公立の高等学校の生徒 当該生徒に係る標準授業料額

 二 私立の高等学校等の生徒(次号に該当する生徒を除く。)及び国公立の専修学校等の生徒 当該生徒に係る公立全日制課程の標準授業料額相当額

 三 私立の高等学校等の生徒であってその保護者の属する世帯の政令で定めるところにより算定した収入額が政令で定める額以下であるもの 当該生徒に係る公立全日制課程の標準授業料額相当額に二を乗じて得た額

 (支給月数)

第五条 支給対象生徒について就学支援金の支給を行う月数(以下「支給月数」という。)は、当該高等学校等につき三十六月(高等学校の定時制の課程及び通信制の課程にあっては、四十八月)とする。

2 当該生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について当該生徒に係る就学支援金の支給があった場合における前項の規定の適用については、同項中「三十六月」とあるのは「三十六月から当該生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について当該生徒に係る就学支援金の支給があった月数を控除した月数」と、「四十八月」とあるのは「四十八月から当該生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について当該生徒に係る就学支援金の支給があった月数を控除した月数」とする。

 (支給月数の調整等)

第六条 前条第二項に規定する場合において、次に掲げる額の合計額が、当該生徒が地方公共団体が設置する一の高等学校の全日制の課程に三年間在学したとした場合における標準授業料額の三年分に相当する額として政令で定める額(以下この条において「支給保障額」という。)に満たないこととなるとき(同項の規定により読み替えて適用する前条第一項(以下この項において「読替え後の第五条第一項」という。)の規定による当該高等学校等についての支給月数に係る就学支援金の総額が当該生徒が当該高等学校等の最終の学年の最終の月まで在学したとした場合に受けるべき当該高等学校等に係る就学支援金の総額として政令で定める額を下回る場合に限る。)は、読替え後の第五条第一項の規定にかかわらず、当該高等学校等についての支給月数は、読替え後の第五条第一項の規定による当該高等学校等についての支給月数に調整月数(支給保障額から当該合計額を控除した額を政令で定めるところにより当該高等学校等についての就学支援金の月額を基礎として政令で定める額で除して得た数をいう。次項において同じ。)を加えた月数(前条第一項に規定する支給月数を限度とする。)とする。

 一 読替え後の第五条第一項の規定による当該高等学校等についての支給月数に係る就学支援金の総額(第四条第三号に掲げる生徒であって、同条の規定による就学支援金の月額が当該生徒に係る公立全日制課程の標準授業料額相当額の十二分の一の額を超えるもの(次項において「第三号生徒」という。)にあっては、当該超える部分の総額を除く。以下この条において同じ。)

 二 当該生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について支給があった当該生徒に係る就学支援金の総額

2 前項の場合において、調整月数に係る就学支援金が支給される最終の月(以下この項において「調整後の最終支給月」という。)の就学支援金の額は、前項に規定する合計額に調整月数に係る就学支援金が支給される最初の月から調整後の最終支給月の前月までの就学支援金の総額を加えた額を支給保障額から控除した額(第三号生徒にあっては、当該控除した額を当該第三号生徒に係る公立全日制課程の標準授業料額相当額の十二分の一の額で除して得た割合を第四条の規定による就学支援金の月額に乗じて得た額)又は同条の規定による就学支援金の月額のいずれか少ない額とする。

 (学年による教育課程の区分を設けない高等学校に在学する生徒等に係る特例)

第七条 当該生徒が学年による教育課程の区分を設けない高等学校に在学する場合その他前三条の規定により難い場合における就学支援金の額及び支給月数については、政令で特別の定めをすることができる。

 (支給月数の追加)

第八条 市町村長は、第四条から第六条までの規定及び前条の規定に基づく政令の規定により就学支援金の支給が行われる最終の月後引き続き当該生徒が当該高等学校等に在学することとなる場合において、文部科学省令で定めるやむを得ない事由があると認めるときは、政令で定めるところにより、支給月数を追加することができる。

2 前項の規定により支給月数を追加する場合においては、第六条第二項の規定は、適用しない。

 (端数計算)

第九条 就学支援金の月額に一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。

 (支給の方法等)

第十条 就学支援金は、政令で定める場合を除き、四月から七月まで、八月から十二月まで及び一月から三月までの各期について、その期間中の月の分をまとめて支給する。

2 就学支援金の支給を受けようとする保護者は、文部科学省令で定めるところにより、その住所地の市町村長(日本国内に住所地がないときは、政令で定める市町村長)に申請し、就学支援金の支給をする旨の決定(その額の定めを含む。)を受けなければならない。

3 前二項に規定するもののほか、就学支援金の支給の方法等に関し必要な事項は、政令で定める。

 (不正利得の徴収)

第十一条 偽りその他不正の手段により就学支援金の支給を受けた者があるときは、市町村長は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (譲渡等の禁止)

第十二条 就学支援金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

 (公課の禁止)

第十三条 租税その他の公課は、就学支援金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (審査請求と訴訟との関係)

第十四条 就学支援金の支給に関する処分又は第十一条第一項の規定による徴収金に関する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。

 (費用の負担)

第十五条 就学支援金の支給に要する費用は、その全額を国庫が負担する。

2 国庫は、毎年度、予算の範囲内で、就学支援金に関する事務の執行に要する費用を負担する。

 (国公立の高等学校の設置者の努力義務)

第十六条 国公立の高等学校の設置者は、標準授業料額を標準として当該国公立の高等学校の授業料の年額を定めるように努めなければならない。

 (事務の区分)

第十七条 この法律の規定により市町村(特別区を含む。)が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (文部科学省令への委任)

第十八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、文部科学省令で定める。

 (罰則)

第十九条 偽りその他不正の手段により就学支援金の支給を受けた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十二年四月一日から施行する。

 (経過措置)

第二条 支給対象生徒であってこの法律の施行の日前にその初日において高等学校等に在学した月があるものについての支給月数は、第五条の規定にかかわらず、同条第一項の規定による支給月数からこの法律の施行の日前にその初日において高等学校等に在学した月の月数を控除した月数(当該月数が零を下回る場合には、零)とする。

2 前項に規定する生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について当該生徒に係る就学支援金の支給があった場合における同項の規定の適用については、同項中「月の月数」とあるのは、「月の月数及び当該生徒が当該高等学校等につき支給対象生徒となった月前において他の高等学校等について当該生徒に係る就学支援金の支給があった月数」とする。

3 第六条の規定は、前項に規定する場合について準用する。この場合において、同条第一項中「三年間」とあるのは「三十六月からこの法律の施行の日前にその初日において高等学校等に在学した月の月数を控除した月数の間」と、「三年分」とあるのは「当該月数の分」と、「同項」とあるのは「附則第二条第二項」と、「適用する前条第一項」とあるのは「適用する同条第一項」と、「読替え後の第五条第一項」とあるのは「読替え後の附則第二条第一項」と読み替えるものとする。

4 前三項に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律(平成二十一年法律第▼▼▼号)

この法律の規定により市町村(特別区を含む。)が処理することとされている事務

 (地方財政法の一部改正)

第四条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条に次の一号を加える。

  二十九 高等学校等就学支援金の支給に要する経費


     理 由

 高等学校等における教育の機会均等に寄与するため、高等学校等の生徒の保護者に高等学校等就学支援金を支給すること等により、国公立の高等学校における教育の実質的無償化を推進し、あわせて私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約四千五百億円の見込みである。

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