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第一七一回

閣第四八号

   青少年総合対策推進法案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 青少年総合対策(第七条−第十四条)

 第三章 青少年が自立した社会生活を営むことができるようにするための支援(第十五条−第二十二条)

 第四章 青少年総合対策推進本部(第二十三条−第三十条)

 第五章 罰則(第三十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、青少年が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、青少年の健全な育成(以下「青少年育成」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるほか、青少年が自立した社会生活を営むことができるようにするための支援その他の施策を定めるとともに、青少年総合対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な青少年育成のための施策(以下「青少年総合対策」という。)を推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 青少年育成は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 一人一人の青少年が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるようになることを目指すこと。

 二 家庭、学校、職域、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員が、青少年育成において果たすべき役割に応じて、相互に協力しながら一体的に取り組むこと。

 三 青少年の発達段階、生活環境、特性その他の状況に応じてその健やかな成長が図られるよう、良好な社会環境の整備その他必要な配慮を行うこと。

 四 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における知見を総合して行うこと。

 五 修学及び就業のいずれもしていない青少年で、自立した社会生活を営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、自助の責任を踏まえつつ、必要な支援を行うこと。

 (国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、青少年総合対策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、青少年育成に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における青少年の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第五条 政府は、青少年総合対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (年次報告)

第六条 政府は、毎年、国会に、我が国における青少年の状況及び政府が講じた青少年総合対策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。

   第二章 青少年総合対策

 (青少年総合対策の基本)

第七条 青少年総合対策は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携並びに民間の団体及び国民一般の理解と協力の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 (青少年総合対策推進大綱)

第八条 青少年総合対策推進本部は、青少年総合対策の推進を図るための大綱(以下「青少年総合対策推進大綱」という。)を作成しなければならない。

2 青少年総合対策推進大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 青少年総合対策に関する基本的な方針

 二 青少年総合対策として行う施策に関する次に掲げる事項

  イ 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における施策に関する事項

  ロ 青少年の健全な成長に資する良好な社会環境の整備に関する事項

  ハ 第二条第五号に規定する支援に関する事項

  ニ イからハまでに掲げるもののほか、青少年総合対策として行う施策に関する重要事項

 三 前号の施策を総合的に実施するために必要な国の関係行政機関、地方公共団体及び民間の団体の連携及び協力に関する事項

 四 青少年育成に関する国民の理解の増進に関する事項

 五 青少年総合対策を推進するために必要な調査研究に関する事項

 六 青少年育成に関する国際的な協力に関する事項

 七 前各号に掲げるもののほか、青少年総合対策を推進するために必要な事項

3 青少年総合対策推進本部は、第一項の規定により青少年総合対策推進大綱を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。

 (都道府県青少年計画等)

第九条 都道府県は、青少年総合対策推進大綱を勘案して、当該都道府県の区域内における青少年育成についての計画(以下この条において「都道府県青少年計画」という。)を作成するよう努めるものとする。

2 市町村は、青少年総合対策推進大綱(都道府県青少年計画が作成されているときは、青少年総合対策推進大綱及び都道府県青少年計画)を勘案して、当該市町村の区域内における青少年育成についての計画(次項において「市町村青少年計画」という。)を作成するよう努めるものとする。

3 都道府県又は市町村は、都道府県青少年計画又は市町村青少年計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。

 (国民の理解の増進等)

第十条 国及び地方公共団体は、青少年育成に関し、広く国民一般の関心を高め、その理解と協力を得るとともに、社会を構成する多様な主体の参加による自主的な活動に資するよう、必要な啓発活動を積極的に行うものとする。

 (社会環境の整備)

第十一条 国及び地方公共団体は、青少年の健全な成長を阻害する行為の防止その他の青少年の健全な成長に資する良好な社会環境の整備について、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (意見の反映)

第十二条 国は、青少年総合対策の策定及び実施に関して、青少年を含めた国民の意見をその施策に反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (青少年総合相談センター)

第十三条 地方公共団体は、青少年育成に関する地域住民からの相談に応じ、関係機関の紹介その他の必要な情報の提供及び助言を行う拠点(第十九条第三項において「青少年総合相談センター」という。)としての機能を担う体制を、単独で又は共同して、確保するよう努めるものとする。

 (地方公共団体及び民間の団体に対する支援)

第十四条 国は、青少年総合対策に関し、地方公共団体が実施する施策及び民間の団体が行う青少年の社会参加の促進その他の活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

   第三章 青少年が自立した社会生活を営むことができるようにするための支援

 (関係機関等による支援)

第十五条 国及び地方公共団体の機関、公益社団法人及び公益財団法人、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体並びに学識経験者その他の者であって、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の青少年育成に関連する分野の事務に従事するもの(以下「関係機関等」という。)は、修学及び就業のいずれもしていない青少年で、自立した社会生活を営む上での困難を有するもの(満十五歳に達した日以降の最初の三月三十一日を経過した者に限る。)に対する次に掲げる支援(以下単に「支援」という。)を行うよう努めるものとする。

 一 社会生活への適応を促すために、関係機関等の施設、青少年の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行うこと。

 二 医療及び療養を受けることを助けること。

 三 生活環境を改善すること。

 四 修学又は就業を助けること。

 五 前号に掲げるもののほか、社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助けること。

 六 前各号に掲げるもののほか、自立した社会生活を営むことができるようにするための援助を行うこと。

 (関係機関等の責務)

第十六条 関係機関等は、必要な支援が早期かつ円滑に行われるよう、次に掲げる措置をとるとともに、必要な支援を継続的に行うよう努めるものとする。

 一 前条に規定する青少年の状況を把握すること。

 二 相互に連携を図るとともに、前条に規定する青少年を必要に応じて速やかに適切な関係機関等に誘導すること。

 三 関係機関等が行う支援について、地域住民に周知すること。

 (人材の養成等)

第十七条 国及び地方公共団体は、支援が適切に行われるよう、必要な知見を有する人材の養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (青少年自立支援地域協議会)

第十八条 地方公共団体は、関係機関等が行う支援を適切に組み合わせることによりその効果的かつ円滑な実施を図るため、単独で又は共同して、関係機関等により構成される青少年自立支援地域協議会(以下「協議会」という。)を置くよう努めるものとする。

2 地方公共団体の長は、協議会を設置したときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。

 (協議会の事務等)

第十九条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報の交換を行うとともに、支援の内容に関する協議を行うものとする。

2 協議会を構成する関係機関等(以下「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、支援を行うものとする。

3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等による支援の実施に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等(構成機関等に該当しない青少年総合相談センターとしての機能を担う者を含む。)に対し、支援の対象となる青少年に関する情報の提供、意見の開陳その他の必要な協力を求めることができる。

 (青少年自立支援調整機関)

第二十条 協議会を設置した地方公共団体の長は、構成機関等のうちから一の機関又は団体を限り青少年自立支援調整機関(次項及び次条において「調整機関」という。)として指定することができる。

2 調整機関は、協議会に関する事務を総括するとともに、必要な支援が適切に行われるよう、協議会の定めるところにより、構成機関等が行う支援の状況を把握しつつ、必要に応じて他の構成機関等が行う支援を組み合わせるなど構成機関等相互の連絡調整を行うものとする。

 (秘密保持義務)

第二十一条 協議会の事務(調整機関としての事務を含む。以下この条において同じ。)に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 (協議会の定める事項)

第二十二条 第十八条から前条までに定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

   第四章 青少年総合対策推進本部

 (設置)

第二十三条 内閣府に、特別の機関として、青少年総合対策推進本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務等)

第二十四条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 青少年総合対策推進大綱を作成し、及びその実施を推進すること。

 二 前号に掲げるもののほか、青少年育成に関する重要な事項について審議すること。

 三 前二号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務

2 本部は、前項第一号に掲げる事務を遂行するため、必要に応じ、地方公共団体又は協議会の意見を聴くものとする。

 (組織)

第二十五条 本部は、青少年総合対策推進本部長、青少年総合対策推進副本部長及び青少年総合対策推進本部員をもって組織する。

 (青少年総合対策推進本部長)

第二十六条 本部の長は、青少年総合対策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (青少年総合対策推進副本部長)

第二十七条 本部に、青少年総合対策推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって同項の規定により命を受けて同法第四条第一項第十四号に掲げる事項に関する事務及びこれに関連する同条第三項に規定する事務を掌理するものをもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (青少年総合対策推進本部員)

第二十八条 本部に、青少年総合対策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 国家公安委員会委員長

 二 総務大臣

 三 法務大臣

 四 文部科学大臣

 五 厚生労働大臣

 六 経済産業大臣

 七 前各号に掲げるもののほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者

 (資料提出の要求等)

第二十九条 本部は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (政令への委任)

第三十条 第二十三条から前条までに定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   第五章 罰則

第三十一条 第二十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正)

第三条 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成二十年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。

  目次中「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議等」を「基本計画」に改める。

  第二章の章名を次のように改める。

    第二章 基本計画

  第八条から第十一条までを次のように改める。

 第八条から第十一条まで 削除

  第十二条の見出しを削り、同条第一項中「会議」を「青少年総合対策推進法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第二十三条に規定する青少年総合対策推進本部(第三項において「本部」という。)」に、「定めなければならない」を「定め、及びその実施を推進するものとする」に改め、同条第三項中「会議」を「本部」に改める。

 (青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第四条 前条の規定による改正前の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(以下この条において「旧法」という。)第八条第一項に規定するインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議が旧法第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画は、この法律の施行後は、本部が前条の規定による改正後の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画とみなす。

 (内閣府設置法の一部改正)

第五条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第二十六号の二の次に次の一号を加える。

  二十六の三 青少年総合対策推進法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第八条第一項に規定する青少年総合対策推進大綱の作成及び推進に関すること。

  第四条第三項第二十七号中「前号」を「前二号」に改める。

  第四十条第三項の表中

インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律

 を

青少年総合対策推進本部

青少年総合対策推進法

 に改める。


     理 由

 青少年が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、青少年の健全な育成について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるほか、青少年が自立した社会生活を営むことができるようにするための支援その他の施策を定めるとともに、青少年総合対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な青少年の健全な育成のための施策を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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