第一七四回
参第一五号
茶業振興法案
目次
第一章 総則(第一条)
第二章 茶業振興基本方針等(第二条−第五条)
第三章 茶園経営計画(第六条−第九条)
第四章 茶の生産及び出荷の安定に関する措置(第十条−第十二条)
第五章 茶の生産者の経営の安定等のための措置(第十三条)
第六章 茶業の健全な発展のための諸施策(第十四条−第二十条)
第七章 雑則(第二十一条・第二十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国において、茶業が地域産業として重要な地位を占めているとともに、日常の喫茶の習慣や茶道など茶に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透し、国民が豊かで健康的な生活を送る上で茶が重要な役割を担っているにもかかわらず、近年、生活様式の多様化その他の茶をめぐる諸情勢の変化により茶業を取り巻く環境が非常に厳しいものとなっていることにかんがみ、茶の需要の動向に即応して計画的に茶業の振興を図るための措置及びこれに関連して合理的な茶園経営の基盤を確立するための措置並びにこれらに併せて茶の生産及び出荷の安定を図るための措置並びに茶の生産者の経営の安定のための措置等を定めることにより、茶業の健全な発展に寄与することを目的とする。
第二章 茶業振興基本方針等
(茶業振興基本方針)
第二条 農林水産大臣は、政令で定めるところにより、茶業の振興を図るための基本方針(以下「茶業振興基本方針」という。)を定めなければならない。
2 茶業振興基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 茶業の振興に関する基本的な事項
二 茶の需要の長期見通し
三 前号の長期見通しに即した栽培面積その他茶の生産の目標
四 栽培に適する自然的条件に関する基準
五 近代的な茶園経営の基本的指標
六 茶の加工及び流通の合理化に関する基本的な事項
七 その他必要な事項
3 農林水産大臣は、前項第二号の長期見通し及び同項第三号の栽培面積その他茶の生産の目標を定めるため必要があるときは、関係都道府県知事に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができる。
4 農林水産大臣は、茶業振興基本方針を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
5 農林水産大臣は、茶業振興基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(茶業振興基本方針の変更)
第三条 農林水産大臣は、茶の需給事情、農業事情その他の経済事情の変動により必要があるときは、茶業振興基本方針を変更するものとする。
2 前条第三項から第五項までの規定は、茶業振興基本方針の変更について準用する。
(都道府県の茶業振興計画)
第四条 都道府県知事は、政令で定めるところにより、当該都道府県における茶業の振興を図るための計画(以下「茶業振興計画」という。)を定めることができる。
2 茶業振興計画には、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、茶業振興基本方針の内容に即するものでなければならない。
一 茶業の振興に関する方針
二 栽培面積その他茶の生産の目標
三 その区域の自然的経済的条件に応じた近代的な茶園経営の指標
四 土地改良その他生産基盤の整備に関する事項
五 茶の加工及び流通の合理化に関する事項
六 その他必要な事項
3 都道府県知事は、茶業振興計画を定めようとするときは、農林水産省令で定める茶業に関する団体及び茶業に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、茶業振興計画を定めたときは、遅滞なく、これを農林水産大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
(茶業振興計画の変更)
第五条 前条第三項及び第四項の規定は、茶業振興計画の変更について準用する。
第三章 茶園経営計画
(茶園経営計画)
第六条 第四条第四項の規定による提出があった茶業振興計画に係る都道府県の区域内において茶を栽培しているか、又は栽培しようとする農業者(茶の加工施設を設置し、又は設置しようとする農業者を含む。第八条第一項において同じ。)は、単独で又は共同して、政令で定めるところにより、茶園経営計画を作成し、これを都道府県知事に提出して、その茶園経営計画が適当であるかどうかにつき認定を求めることができる。
2 前項の茶園経営計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 農業経営の現状
二 農業経営の改善目標
三 前号の改善目標を達成するためとるべき措置
四 その他農林水産省令で定める事項
(都道府県知事の認定)
第七条 都道府県知事は、前条第一項の認定を受けたい旨の請求があった場合において、その茶園経営計画に係る事項が次の各号の要件のすべてを満たすときは、当該茶園経営計画が適当である旨の認定をするものとする。
一 前条第二項第二号の改善目標が農林水産大臣の定める基準に適合すること。
二 前条第二項第三号の措置が合理的な茶園経営の基盤の確立を図るために必要かつ適当なものであること。
三 前二号に規定するもののほか、当該茶園経営計画が茶業振興計画の内容に照らし適当と認められるものであること。
四 当該茶園経営計画の達成される見込みが確実であること。
(茶園経営計画に関する援助)
第八条 都道府県は、その区域内において茶を栽培しているか、又は栽培しようとする農業者に対し、茶園経営計画の作成のために必要な助言及び指導その他の援助を行うように努めるものとする。
2 国及び都道府県は、茶園経営計画につき前条の認定を受けた者に対し、当該認定に係る茶園経営計画の達成のために必要な助言及び指導、改植の実施のための援助、茶の加工施設の整備等のための援助その他の合理的な茶園経営の基盤の確立のために必要な援助を行うように努めるものとする。
(資金の貸付け)
第九条 株式会社日本政策金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫は、茶園経営計画につき第七条の認定を受けた者に対し、その申請に基づき、株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)又は沖縄振興開発金融公庫法(昭和四十七年法律第三十一号)の定めるところにより、当該認定に係る茶園経営計画を実施するために必要な資金の貸付けを行うものとする。
第四章 茶の生産及び出荷の安定に関する措置
(生産出荷安定指針)
第十条 農林水産大臣は、茶の需要の動向及び生産の状況からみて需給が著しく均衡を失すると見込まれる年について、茶の生産又は出荷を行う者及びこれらの者の組織する団体(以下「茶生産者等」という。)に対する茶の安定的な生産及び出荷を図るための指針(以下「生産出荷安定指針」という。)を定めるものとする。
2 生産出荷安定指針には、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、茶業振興基本方針の内容に即するものでなければならない。
一 対象とする期間
二 茶の安定的な生産及び出荷の目標
三 前号の目標を達成するために必要な措置に関する基本的な事項
3 農林水産大臣は、生産出荷安定指針を定めようとするときは、関係都道府県知事及び食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
4 農林水産大臣は、生産出荷安定指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、生産出荷安定指針の変更について準用する。
(生産出荷安定指針に関する援助)
第十一条 国及び都道府県は、前条第四項の規定により生産出荷安定指針が公表されている場合において、当該生産出荷安定指針に協力する茶生産者等その他の者に対し必要な援助を行うように努めるものとする。
(勧告)
第十二条 農林水産大臣又は都道府県知事は、第十条第四項の規定により生産出荷安定指針が公表されている場合において、茶生産者等による茶の生産又は出荷が、茶の安定的な生産及び出荷に著しく支障を及ぼしていると認めるときは、当該茶生産者等に対し、必要な勧告をすることができる。
第五章 茶の生産者の経営の安定等のための措置
第十三条 都道府県は、茶の生産を行う者の経営の安定を図るとともに茶業の健全な発展に資するため、第十一条の規定による生産出荷安定指針に協力する茶生産者等に対する援助その他の茶の生産を行う者の経営の安定を図るための措置その他茶の特性及び地域の実情に応じたきめ細かな措置を積極的に実施することができるよう、必要に応じ、これらの措置に要する費用に充てるための基金の設置その他の措置を講ずるものとする。
2 国は、予算の範囲内において、前項の基金に充てるための資金を補助することができる。
第六章 茶業の健全な発展のための諸施策
(栽培等の状況に関する情報の提供)
第十四条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、茶の栽培、加工、集荷、貯蔵、販売等の状況を調査し、これらに関し必要な情報を提供するように努めるものとする。
(加工及び流通の合理化)
第十五条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、茶を栽培する農業者、茶の加工の事業を行う者、茶の販売の事業を行う者等の間の有機的な連携への支援、茶の加工の事業を行う者に対する加工施設の整備等のための援助その他茶の加工及び流通の合理化のために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(品質の向上の促進)
第十六条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、茶の品質の向上に関する研究開発の推進及びその成果の普及、茶を栽培する農業者、茶の加工の事業を行う者等による茶の品質の向上に向けた取組への支援その他の茶の品質の向上を促進するために必要な施策を行うように努めるものとする。
(新用途への利用の促進)
第十七条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、茶が様々な効用を有していることを踏まえた茶の新用途への利用に関する情報の提供、研究開発の推進及びその成果の普及その他の茶の新用途への利用を促進するために必要な施策を行うように努めるものとする。
(消費の拡大)
第十八条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、茶の消費の拡大に関し必要な施策を積極的に行うように努めるものとする。
(輸出の振興)
第十九条 国及び都道府県は、茶業の健全な発展に資するため、輸出の振興に関し必要な施策を積極的に行うように努めるものとする。
(国民の理解と関心の増進)
第二十条 国及び都道府県は、我が国において日常の喫茶の習慣や茶道など茶に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透し、国民が豊かで健康的な生活を送る上で茶が重要な役割を担っていることを踏まえ、茶業の健全な発展に資するため、茶の効用その他の茶に関する知識の普及、茶を活用した食育の推進その他の茶に関する国民の理解と関心を深めるために必要な施策を積極的に行うように努めるものとする。
第七章 雑則
(報告の徴収)
第二十一条 農林水産大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、茶の栽培、加工、集荷、貯蔵、販売等の事業を行う者又はこれらの者の組織する団体から、これらの事業に係る業務に関して、必要な報告を徴することができる。
(権限の委任)
第二十二条 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長に委任することができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(農業信用保証保険法の一部改正)
第二条 農業信用保証保険法(昭和三十六年法律第二百四号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第三号中「又は果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)第三条第一項」を「、果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)第三条第一項の認定を受けた者又は茶業振興法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第六条第一項」に改める。
(食料・農業・農村基本法の一部改正)
第三条 食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の一部を次のように改正する。
第四十条第三項中「及び米穀の新用途への利用の促進に関する法律(平成二十一年法律第二十五号)」を「、米穀の新用途への利用の促進に関する法律(平成二十一年法律第二十五号)及び茶業振興法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」に改める。
(株式会社日本政策金融公庫法の一部改正)
第四条 株式会社日本政策金融公庫法の一部を次のように改正する。
別表第一第八号の下欄のニ及びホ中「果樹」の下に「又は茶」を加える。
別表第四第一号2の貸付金の種類の欄中「果樹」の下に「又は茶」を加える。
別表第五第一号の貸付金の種類の欄中「もの又は果樹」の下に「、茶」を加え、同号1の貸付金の種類の欄中「又は果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)第三条第一項の認定を受けた果樹園経営計画」を「、果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)第三条第一項の認定を受けた果樹園経営計画又は茶業振興法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第六条第一項の認定を受けた茶園経営計画」に改め、同号2の据置期間の欄中「果樹」の下に「又は茶」を加え、同表第五号の貸付金の種類の欄中「果樹」の下に「若しくは茶」を加える。
理 由
我が国において、茶業が地域産業として重要な地位を占めているとともに、日常の喫茶の習慣や茶道など茶に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透し、国民が豊かで健康的な生活を送る上で茶が重要な役割を担っているにもかかわらず、近年、生活様式の多様化その他の茶をめぐる諸情勢の変化により茶業を取り巻く環境が非常に厳しいものとなっていることにかんがみ、茶業の健全な発展に寄与するため、茶の需要の動向に即応して計画的に茶業の振興を図るための措置及びこれに関連して合理的な茶園経営の基盤を確立するための措置並びにこれらに併せて茶の生産及び出荷の安定を図るための措置並びに茶の生産者の経営の安定のための措置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、約百五十億円の見込みである。