衆議院

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第一七六回

衆第一六号

   森林法の一部を改正する法律案

 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第二百十三条」を「第二百十四条」に改める。

 第十条の三に次の三項を加える。

2 都道府県知事は、前項の規定により復旧に必要な行為をすべき旨を命じた場合において、当該命令を受けた者が当該命令に係る期間内に当該命令に係る行為を行わず、行つても十分でなく、又は行う見込みがなく、かつ、前条第二項各号のいずれかに該当すると認められるときは、自ら当該行為の全部又は一部を行うことができる。

3 都道府県知事は、前項の規定により第一項の命令に係る行為の全部又は一部を行つたときは、当該行為に要した費用について、農林水産省令で定めるところにより、当該命令を受けた者に負担させることができる。

4 前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。

 第十条の七の次に次の一条を加える。

 (森林所有者等となつた旨の届出等)

第十条の七の二 地域森林計画の対象となつている民有林について、新たに森林所有者等となつた者は、農林水産省令で定める手続に従い、市町村の長にその旨を届け出なければならない。

2 市町村の長は、前項の規定による届出があつた場合において、当該届出に係る民有林が第二十五条若しくは第二十五条の二の規定により指定された保安林又は第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内の森林であるときは、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事に当該届出の内容を通知しなければならない。

 第十条の九に次の三項を加える。

4 市町村の長は、前条第一項の規定に違反した者の行つた伐採又は伐採後の造林が伐採面積、伐採方法、伐採齢、伐採後の造林の方法及び樹種その他農林水産省令で定める事項に照らして市町村森林整備計画に適合しないと認める場合において、森林の有する公益的機能を維持するために必要があると認めるときは、その者に対し、伐採の中止を命じ、又は当該伐採跡地につき、期間、方法及び樹種を定めて造林に必要な行為を命ずることができる。

5 市町村の長は、第三項の規定により造林をすべき旨を命じた場合又は前項の規定により造林に必要な行為を命じた場合において、当該命令を受けた者が当該命令に係る期間内に当該命令に係る行為を行わず、行つても十分でなく、又は行う見込みがなく、かつ、次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、自ら当該行為の全部又は一部を行うことができる。

 一 当該森林及びその周辺の地域における土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること。

 二 当該森林の現に有する水害の防止の機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること。

 三 当該森林の現に有する水源のかん養の機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること。

 四 当該森林及びその周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること。

6 第十条の三第三項及び第四項の規定は、市町村の長が前項の規定により第三項又は第四項の命令に係る行為の全部又は一部を行つた場合について準用する。

 第三十八条に次の二項を加える。

5 第十条の九第五項の規定は、都道府県知事が第一項若しくは第三項の規定により造林に必要な行為を命じた場合、第二項の規定により復旧に必要な行為をすべき旨を命じた場合又は前項の規定により植栽すべき旨を命じた場合について準用する。

6 第十条の三第三項及び第四項の規定は、都道府県知事が前項において準用する第十条の九第五項の規定により第一項から第四項までの規定による命令に係る行為の全部又は一部を行つた場合について準用する。

 第四十条の見出しを「(保安林に係る権限の適切な行使)」に改め、同条中「農林水産大臣」を「前項に定めるもののほか、農林水産大臣」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

  農林水産大臣及び都道府県知事は、第二十五条第一項各号に掲げる目的が確実に達成されるよう、同条及び第二十五条の二の規定による保安林の指定に係る権限を適切に行使するものとする。

 第百九十一条の次に次の五条を加える。

 (森林の土地の境界の確定のための措置)

第百九十一条の二 国は、森林の施業が適切に行われるためには森林の土地の境界の確定が重要であることにかんがみ、全国の森林の土地について地籍調査の実施の一層の促進を図るなどその境界の確定が速やかに行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

 (森林に関するデータベースの整備等)

第百九十一条の三 国及び地方公共団体は、森林の施業が適切に行われるためには森林に関する正確な情報の把握が重要であることにかんがみ、森林に関するデータベースの整備その他森林に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるものとする。

 (施業の集約化等の事業の推進)

第百九十一条の四 国及び地方公共団体は、森林所有者等による森林の整備及び保全が困難となつている現状にかんがみ、森林の施業の集約化等の事業を推進し、森林の効率的な経営が可能となるよう、これらの事業を担うことができる森林組合等の主体の育成、当該事業への支援その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の事業を実施するために必要な専門的知識及び能力を有する者並びに当該事業を地域一体となつて行うに当たつて指導的な役割を担う者を養成するために必要な措置を講ずるものとする。

 (森林所有者等が不明な場合の間伐又は保育に係る制度の創設等)

第百九十一条の五 国は、間伐又は保育が不十分な森林であつてその森林所有者等が不明なものについて間伐又は保育が十分に行われることとなるよう、当該森林について地方公共団体等が間伐又は保育を実施できることとする制度の創設その他必要な措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体が行う保安林等の買入れに係る財政上の措置)

第百九十一条の六 国は、地方公共団体が保安林その他森林の有する公益的機能を維持することが特に必要であると認められる森林の買入れを行うことができるよう必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 第百九十六条の二各号列記以外の部分中「都道府県」を「地方公共団体」に改め、同条に次の一号を加える。

 六 第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務(第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林又は保安施設地区の区域内の森林に関するものに限る。)

 第百九十六条の二に次の一項を加える。

2 第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務(第二十五条第一項第四号から第十一号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するものに限る。)は、地方自治法第二条第九項第二号に規定する第二号法定受託事務とする。

 第二百六条中「五十万円」を「百万円」に改め、同条第二号中「第十条の三」を「第十条の三第一項」に改め、同条第五号中「第三十八条」を「第三十八条第一項から第四項まで」に改める。

 第二百七条中「三十万円」を「五十万円」に改め、同条第二号中「第十条の九第三項」の下に「又は第四項」を加える。

 第二百十三条の次に次の一条を加える。

第二百十四条 第十条の七の二第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。

 (森林所有者等となった旨の届出等に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の際現に、この法律による改正前の森林法(以下「旧法」という。)第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象となっている同項に規定する民有林の森林所有者等(旧法第十条の七に規定する森林所有者等をいう。)である者は、この法律の施行の日から起算して三月以内に、農林水産省令で定める手続に従い、市町村の長にその旨を届け出なければならない。

2 この法律による改正後の森林法(以下「新法」という。)第十条の七の二第二項の規定は、前項の規定による届出があった場合について準用する。

3 前項において準用する新法第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務のうち、第一号に掲げるものは地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務と、第二号に掲げるものは同項第二号に規定する第二号法定受託事務とする。

 一 新法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林及び保安施設地区の区域内の森林に関するもの

 二 新法第二十五条第一項第四号から第十一号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するもの

4 第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。

 (代執行に関する経過措置)

第三条 旧法第十条の三、第十条の九第三項及び第三十八条の規定により命ぜられた行為については、新法第十条の三第二項及び第十条の九第五項(新法第三十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第四条 前二条に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

 (地方自治法の一部改正)

第五条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)の項各号列記以外の部分中「都道府県」を「地方公共団体」に改め、同項に次の一号を加える。

  六 第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務(第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林又は保安施設地区の区域内の森林に関するものに限る。)

  別表第一に次のように加える。

森林法の一部を改正する法律(平成二十二年法律第▼▼▼号)

附則第二条第二項において準用する森林法第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務のうち、同法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林及び保安施設地区の区域内の森林に関するもの

  別表第二土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の項の次に次のように加える。

森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)

第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務(第二十五条第一項第四号から第十一号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するものに限る。)

  別表第二に次のように加える。

森林法の一部を改正する法律(平成二十二年法律第▼▼▼号)

附則第二条第二項において準用する森林法第十条の七の二第二項の規定により市町村が処理することとされている事務のうち、同法第二十五条第一項第四号から第十一号までに掲げる目的を達成するための指定に係る保安林に関するもの


     理 由

 森林の整備及び保全が十分には行われていない現状にかんがみ、森林の有する公益的機能を維持するため、森林所有者等の届出の制度並びに伐採及び伐採後の造林の届出をせずに伐採を行った者に対する伐採の中止及び造林の命令に係る制度を創設するとともに、造林命令等に係る代執行の規定を整備し、併せて保安林に係る植栽命令等に違反した場合の罰金刑の上限を引き上げる等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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