衆議院

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第一七七回

参第一〇号

   原子力発電所等の緊急安全評価等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 緊急安全評価の実施等(第三条−第五条)

 第三章 雑則(第六条−第八条)

 第四章 罰則(第九条−第十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下単に「東北地方太平洋沖地震」という。)による災害に伴う原子力発電所の事故を踏まえ、原子力発電所等の緊急安全評価を行うこと等により、原子力災害(原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二条第一号に規定する原子力災害をいう。第四条第三項において同じ。)を防止し、もって公共の安全の確保を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「原子力発電所等」とは、原子力事業所(原子力災害対策特別措置法第二条第四号に規定する原子力事業所をいう。)のうち、次に掲げるものを設置するものをいう。

 一 実用発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「規制法」という。)第二十三条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。以下同じ。)

 二 規制法第二十三条第一項第三号に掲げる原子炉

 三 規制法第二十三条第一項第四号に掲げる原子炉

 四 実用再処理施設(規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設のうち実用発電用原子炉において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(規制法第二条第八項に規定する再処理をいう。第五条第一項及び第二項において同じ。)を行うものとして政令で定めるものをいう。次条第一項及び第四条第三項において同じ。)

   第二章 緊急安全評価の実施等

 (安全評価指針)

第三条 主務大臣(実用発電用原子炉、前条第三号に掲げる原子炉又は実用再処理施設を設置する原子力発電所等については経済産業大臣をいい、同条第二号に掲げる原子炉を設置する原子力発電所等については文部科学大臣をいう。以下同じ。)は、この法律の施行の日から一月以内に、自然災害が発生した場合における原子力発電所等の安全が確保されているかどうかについて行う評価の指針(以下「安全評価指針」という。)を定めなければならない。

2 安全評価指針は、東北地方太平洋沖地震による災害に伴う原子力発電所の事故を踏まえ、このような自然災害が発生した場合においても原子力緊急事態(原子力災害対策特別措置法第二条第二号に規定する原子力緊急事態をいう。)の発生が防止されることを旨として、原子力発電所等の立地、構造等に応じて定められなければならない。

3 主務大臣は、安全評価指針を定めようとするときは、あらかじめ、原子力安全委員会及び学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。

4 主務大臣は、安全評価指針を定めたときは、直ちに、これを公表しなければならない。

 (緊急安全評価等)

第四条 主務大臣は、安全評価指針を定めた後速やかに、安全評価指針に照らし、原子力発電所等ごとに、自然災害が発生した場合における安全が確保されているかどうかについての評価(以下「緊急安全評価」という。)を行わなければならない。

2 主務大臣は、緊急安全評価を行うときは、学識経験を有する者及び当該緊急安全評価に係る原子力発電所等の周辺地域の住民の意見を聴かなければならない。

3 経済産業大臣は、第一項に定めるところによるほか、東北地方太平洋沖地震による災害に伴う原子力発電所の事故を踏まえ、原子力発電所等(実用発電用原子炉又は実用再処理施設を設置するものに限る。)ごとに、当該原子力発電所等に係る原子力災害の発生の可能性を考慮した上でその経済価値の評価を行わなければならない。

4 政府は、遅滞なく、緊急安全評価及び前項の評価の結果を国会に報告しなければならない。

5 前項の報告は、自然災害が発生した場合における原子力発電所等の安全の確保等に関する国会の審議に十分資するものでなければならない。

 (運転停止命令等)

第五条 主務大臣は、緊急安全評価の結果に基づき、自然災害が発生した場合における原子力発電所等の安全が確保されていないと認めるときは、当該原子力発電所等を設置する者に対し、当該原子力発電所等について原子炉の運転の停止、再処理の停止その他その安全を確保するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

2 前項の原子炉の運転の停止又は再処理の停止の命令を受けた者は、自然災害が発生した場合における当該原子炉の運転又は再処理の安全が確保されていることについて主務大臣の確認を受けた後でなければ、当該原子炉の運転又は再処理を再開することができない。

3 前条第二項の規定は、前項の確認について準用する。

4 主務大臣は、緊急安全評価の結果に基づき、第一項の命令をしないことの決定をしたとき、又は第二項の確認をしたときは、遅滞なく、その旨を当該緊急安全評価に係る原子力発電所等を設置する者に通知しなければならない。

5 政府は、第一項の命令又は前項の通知の内容及び理由を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。

6 前項の報告は、自然災害が発生した場合における原子力発電所等の安全の確保等に関する国会の審議に十分資するものでなければならない。

   第三章 雑則

 (報告の徴収)

第六条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、原子力発電所等を設置する者に対し、その安全の確保に関し報告又は資料の提出をさせることができる。

 (立入検査)

第七条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、原子力発電所等を設置する者の原子力発電所等、事務所その他の事業場に立ち入り、原子炉その他の原子力発電所等の施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (原子力安全委員会への報告)

第八条 主務大臣は、この法律の施行の状況について、主務省令(主務大臣の発する命令をいう。)で定めるところにより、原子力安全委員会に報告するものとする。

   第四章 罰則

第九条 第五条第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第十条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第六条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

 二 第七条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

 一 第九条(第二条第二号に掲げる原子炉を設置する者(次号において「試験研究炉設置者」という。)に係る部分を除く。) 三億円以下の罰金刑

 二 前条(試験研究炉設置者に係る部分を除く。) 一億円以下の罰金刑

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 政府は、この法律の施行後一年以内に、緊急安全評価の結果、東北地方太平洋沖地震及びそれによる災害に伴う原子力発電所の事故に関する新たな知見等を踏まえ、自然災害が発生した場合における原子力発電所等の安全の確保のための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 東北地方太平洋沖地震による災害に伴う原子力発電所の事故を踏まえ、原子力災害を防止するため、原子力発電所等の緊急安全評価を行うこと等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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