衆議院

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第一八〇回

参第三二号

   化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための調査その他の施策の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第八条)

 第二章 化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究(第九条−第十三条)

 第三章 化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のためのその他の施策(第十四条−第十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、化学物質による子ども(胎児を含む。以下同じ。)の健康への悪影響の防止のため、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究その他の必要な施策について定めることにより、これらの施策の推進を図り、もって子どもの健康の保護に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「化学物質」とは、元素及び化合物(それぞれ放射性物質を除く。)をいう。

 (化学物質による子どもの健康への悪影響の回避又は抑制)

第三条 子どもについては、大人に比して化学物質による健康への悪影響を受けやすいとされており、かつ、化学物質により受けた悪影響からの健康の回復が極めて困難な場合があることが懸念されていることに鑑み、化学物質による子どもの健康への悪影響が回避され、又は抑制されるよう、最大限の努力がなされるものとする。

 (科学的知見の充実及び予防的な取組方法の活用)

第四条 化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策は、人の健康、特に子どもの健康への影響について科学的に解明されていない化学物質が多く存在することに鑑み、化学物質による子どもの健康への影響に関する科学的知見の充実に努め、及び予防的な取組方法をも適切に活用することにより行われるものとする。

 (国の責務)

第五条 国は、前二条に定める化学物質による子どもの健康への悪影響の防止に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究を推進するとともに、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のために必要な施策を策定し、及び講ずる責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第六条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国が推進する化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究に協力するとともに、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、必要な措置を講ずる責務を有する。

 (事業者の責務)

第七条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る化学物質による子どもの健康への悪影響の防止に自ら努めるとともに、その事業活動に係る化学物質に関する正確かつ適切な情報の提供に努めるものとする。

2 前項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が講ずる化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策等に協力する責務を有する。

 (財政上の措置等)

第八条 政府は、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究その他の化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策を推進するために必要な財政上又は法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

   第二章 化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究

 (実態調査の実施)

第九条 国は、子どもの化学物質のばく露を受ける機会及び化学物質による子どもの健康への影響に係る実態を把握するための調査を実施するものとする。

 (実施計画)

第十条 環境大臣は、厚生労働大臣、文部科学大臣その他の関係行政機関の長と協議して、前条の調査を実施するための計画を定めるものとする。

2 前項の計画においては、実施しようとする前条の調査の内容、当該調査の結果の分析の方法その他同条の調査に関し必要な事項について定めるものとする。

3 環境大臣は、第一項の計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 (実態調査の結果の公表)

第十一条 環境大臣は、第九条の調査の結果(その分析の結果を含む。以下同じ。)を、随時公表するものとする。

 (調査研究体制の整備等)

第十二条 国は、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究の効果的かつ効率的な推進を図るとともに、地方公共団体、大学、民間等における化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究の促進を図るため、調査研究体制の整備、研究者の確保及び養成、国、地方公共団体、大学、民間等の連携の強化その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (国際的な連携の確保)

第十三条 国は、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究の効果的かつ効率的な推進を図るための国際的な連携を確保するよう努めるものとする。

   第三章 化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のためのその他の施策

 (化学物質の製造等の規制、学校、保育所等の施設に係る基準の整備等)

第十四条 国は、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のため、第九条の調査の結果その他化学物質による子どもの健康への影響に関する科学的知見を踏まえ、化学物質の有する性状等に応じて、その製造、使用、排出等の規制、学校、保育所その他の子どもが長時間にわたり滞在する施設に係る基準の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、前項の施策を講ずるために必要となる科学的知見が十分に得られていない場合であっても、基本理念を踏まえ、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校、保育所等の施設に係る化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための措置)

第十五条 国及び地方公共団体は、その設置する学校、保育所等の施設その他子どもが長時間にわたり滞在する施設について、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のために必要な措置を講ずるものとする。

 (新規の化学物質の開発及び利用に際しての子どもの健康への影響に関する評価)

第十六条 国は、新規の化学物質の開発及び利用に際してそれによる子どもの健康への影響に関する評価が適切になされるよう、化学物質の審査制度の見直し、化学物質による子どもの健康への影響に関する評価の手法の開発その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (国及び地方公共団体の保有する情報の公表等)

第十七条 国及び地方公共団体は、子どもの健康に悪影響を及ぼすおそれのある化学物質の性状、取扱い等について、その保有する情報を公表するとともに、事業者による情報の提供の促進のための施策を講ずるものとする。

 (国民の意見の反映等)

第十八条 国及び地方公共団体は、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策に関し、国民の意見を反映し、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

 (国民の理解)

第十九条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、化学物質による子どもの健康への悪影響の防止の重要性等に関し国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の施策を講ずるために必要な人材の確保及び育成に努めるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (放射性物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策)

2 放射性物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策については、特別な対応が必要とされることに鑑み、引き続き検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置が講ぜられるべきものとする。


     理 由

 化学物質による子どもの健康への悪影響の防止のための施策の推進を図り、もって子どもの健康の保護に資するため、化学物質による子どもの健康への影響に関する調査研究その他の必要な施策について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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