衆議院

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第一八六回

参第二三号

   違法な国庫金の支出等に関する監査及び訴訟に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 違法な国庫金の支出等に関する監査(第三条−第九条)

 第三章 違法な国庫金の支出等に関する訴訟(第十条−第二十条)

 附則

   第一章 総則

 (趣旨)

第一条 この法律は、違法な国庫金の支出等に関する監査及び訴訟について定めるものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「各省各庁の長」とは、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。

2 この法律において「職員」とは、財政法第二十一条に規定する各省各庁に所属する職員(各省各庁の長を除く。以下この項において「各省各庁所属の職員」という。)であって、国庫金の支出、賦課若しくは徴収、財産(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二条第一項に規定する国有財産、物品管理法(昭和三十一年法律第百十三号)第二条第一項に規定する物品及び国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第二条第一項に規定する債権並びに法律の規定により国が保有する資金(積立金を含む。)をいう。次条において同じ。)の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行又は債務その他の義務の負担に関係する事務を行う者をいい、各省各庁所属の職員以外の者であってこれらの事務を会計法(昭和二十二年法律第三十五号)その他の法令の規定により行うものを含むものとする。

   第二章 違法な国庫金の支出等に関する監査

 (監査の請求)

第三条 日本の国籍を有する者は、各省各庁の長又は職員について、違法若しくは不当な国庫金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に国庫金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、会計検査院に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によって国の被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。

 (請求期間)

第四条 前条の規定による請求は、当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

 (同一の行為又は怠る事実についての請求の制限)

第五条 第三条の規定による請求は、当該請求前に会計検査院により第八条第一項の規定による監査又は第九条第一項に規定する検定が行われた行為又は怠る事実と同一のものについては、することができない。

 (請求の不受理)

第六条 会計検査院は、第三条の規定による請求があった場合において当該請求が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該請求を受理しないものとする。

 一 第三条に規定する書面の添付がないときその他同条に規定する要件を満たさない請求であるとき。

 二 正当な理由なく第四条に規定する期間を経過してなされた請求であるとき。

 三 当該請求前に会計検査院により第八条第一項の規定による監査又は第九条第一項に規定する検定が行われた行為又は怠る事実と同一のものについての請求であるとき。

 (暫定的停止勧告)

第七条 第三条の規定による請求(前条の規定により受理されなかったものを除く。以下同じ。)があった場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により国に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによって人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、会計検査院は、各省各庁の長又は職員に対し、理由を付して次条第一項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合においては、会計検査院は、当該勧告の内容を第三条の規定による請求をした者(以下「監査請求人」という。)に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 (監査及び勧告)

第八条 第三条の規定による請求があった場合においては、会計検査院は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により監査請求人に通知するとともに、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、各省各庁の長又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を監査請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

2 前項の規定による会計検査院の監査及び勧告は、第三条の規定による請求があった日から六十日以内に行わなければならない。

3 会計検査院は、第一項の規定による監査を行うに当たっては、監査請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。

4 会計検査院は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある各省各庁の長若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、それぞれ、関係のある各省各庁の長若しくは職員又は監査請求人を立ち会わせることができる。

5 第一項の規定による会計検査院の勧告があったときは、当該勧告を受けた各省各庁の長又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を会計検査院に通知しなければならない。この場合においては、会計検査院は、当該通知に係る事項を監査請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 (検定の実施等)

第九条 会計検査院は、第三条の規定による請求があった場合において、当該行為又は怠る事実につき会計法、予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)(特別調達資金設置令(昭和二十六年政令第二百五号)第八条又は国税収納金整理資金に関する法律(昭和二十九年法律第三十六号)第十七条の規定により適用される場合を含む。以下この項において同じ。)又は物品管理法の規定により弁償の責めに任ずべき者があると思料するときは、前条第一項の規定による監査及び勧告に代えて、又は同項の規定による監査及び勧告とともに、会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)又は予算執行職員等の責任に関する法律の定めるところにより、国に損害を与えた事実の有無の審理及び弁償責任の有無又は弁償額の検定(第三条の規定による請求の前に検定を行ったときは、再検定)を行うとともに、その結果を監査請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

2 前項に定めるもののほか、会計検査院が同項に規定する審理及び検定を行う場合には、前条第二項から第四項までの規定を準用する。

3 会計検査院は、第一項に規定する検定について予算執行職員等の責任に関する法律第五条第一項の規定による再検定のための審理を行う場合において、必要があると認めるときは、同条第二項の口頭審理に監査請求人を立ち会わせることができる。

4 会計検査院法第三十二条第三項又は予算執行職員等の責任に関する法律第四条第二項若しくは第三項の規定に基づいて弁償を命ずる者(以下「弁償命令権者」という。)は、第一項に規定する検定に従って弁償を命ずるときは、会計検査院から検定の通知があった日から十五日以内にこれを行うとともに、その旨を会計検査院に通知しなければならない。この場合においては、会計検査院は、当該通知に係る事項を監査請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

   第三章 違法な国庫金の支出等に関する訴訟

 (訴えの提起)

第十条 監査請求人は、第八条第一項の規定による会計検査院の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第五項の規定による各省各庁の長若しくは職員の措置に不服があるとき、又は会計検査院が同条第一項の規定による監査若しくは勧告を同条第二項の期間内に行わないとき、若しくは各省各庁の長若しくは職員が同条第五項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、第三条の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもって次に掲げる請求をすることができる。

 一 当該行為の全部又は一部の差止めの請求

 二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求

 三 当該怠る事実の違法確認の請求

 四 当該行為若しくは怠る事実に係る各省各庁の長若しくは職員又はその相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める請求

2 前項の規定は、前条第一項に規定する会計検査院の検定の結果若しくは当該検定に係る弁償の命令に不服があるとき、又は会計検査院が同項に規定する検定を同条第二項において準用する第八条第二項の期間内に行わないとき、若しくは弁償命令権者が前条第四項の規定に基づく弁償を命じないときについて、準用する。この場合において、前項中「次に掲げる請求」とあるのは「第二号から第四号までに掲げる請求」と、同項第二号中「行政処分たる当該行為」とあるのは「当該検定又は弁償の命令」と、同項第三号中「当該怠る事実」とあるのは「当該検定又は弁償の命令を行わないこと」と、同項第四号中「損害賠償又は不当利得返還の請求」とあるのは「弁償の命令」と読み替えるものとする。

 (被告適格等)

第十一条 行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第十一条の規定は、前条第一項第一号及び第三号(同条第二項の規定により準用する場合を含む。次条において同じ。)の請求に係る前条の規定による訴訟について準用する。

2 前条第一項第四号(同条第二項の規定により準用する場合を含む。次条及び第十六条第一項において同じ。)の請求に係る前条の規定による訴訟は、国を被告として提起しなければならない。この場合においては、行政事件訴訟法第十一条第四項から第六項までの規定を準用する。

 (管轄)

第十二条 行政事件訴訟法第十二条の規定は、第十条第一項第一号、第三号及び第四号の請求に係る同条の規定による訴訟について準用する。

 (出訴期間)

第十三条 第十条の規定による訴訟は、次に掲げる期間内に提起しなければならない。

 一 会計検査院の監査の結果若しくは勧告又は検定若しくは再検定の結果に不服がある場合は、当該監査の結果若しくは当該勧告の内容又は当該検定若しくは再検定の結果の通知があった日から三十日以内

 二 会計検査院の勧告を受けた各省各庁の長若しくは職員の措置又は弁償命令権者による弁償の命令に不服がある場合は、当該措置又は弁償の命令に係る会計検査院の通知があった日から三十日以内

 三 会計検査院が第三条の規定による請求をした日から六十日を経過しても監査若しくは勧告を行わない場合又は検定若しくは再検定を行わない場合は、当該六十日を経過した日から三十日以内

 四 会計検査院の勧告を受けた各省各庁の長若しくは職員が措置を講じない場合又は会計検査院が弁償責任があると検定若しくは再検定を行ったにもかかわらず弁償命令権者が弁償を命じない場合は、それぞれ当該勧告に示された期間又は当該検定若しくは再検定の結果の通知があった日から十五日を経過した日から三十日以内

2 前項の期間は、不変期間とする。

 (別訴の禁止)

第十四条 第十条の規定による訴訟が係属しているときは、他の監査請求人は、別訴をもって同一の請求をすることができない。

 (差止めの制限)

第十五条 第十条第一項第一号の請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによって人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。

 (訴訟告知)

第十六条 第十条第一項第四号の請求に係る同条の規定による訴訟が提起された場合には、当該行為若しくは怠る事実に係る各省各庁の長若しくは職員又はその相手方に対して、国は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。

2 前項の訴訟告知は、当該訴訟に係る損害賠償若しくは不当利得返還又は弁償の請求権の時効の中断に関しては、民法(明治二十九年法律第八十九号)第百四十七条第一号の請求とみなす。

3 第一項の訴訟告知は、当該訴訟が終了した日から六月以内に裁判上の請求、破産手続参加、仮差押若しくは仮処分又は会計法第六条に規定する納入の告知をしなければ時効中断の効力を生じない。

 (仮処分の排除)

第十七条 第十条第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

 (行政事件訴訟法の適用)

第十八条 第十一条から前条までに定めるもののほか、第十条の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定の適用があるものとする。

 (損害賠償の請求等)

第十九条 第十条第一項第四号の請求に係る同項の規定による訴訟について、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては、各省各庁の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金の支払を請求しなければならない。

2 前項の規定により損害賠償金又は不当利得による返還金の支払を請求した場合において、当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、国は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。

 (弁償の命令等)

第二十条 第十条第二項の規定により準用する同条第一項第四号の請求に係る同項の規定による訴訟について、弁償の命令を命ずる判決が確定した場合においては、弁償命令権者は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る弁償を命じなければならない。

2 前項の規定により弁償を命じた場合において、当該判決が確定した日から六十日以内に当該弁償の命令に係る弁償金が支払われないときは、国は、当該弁償の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。

3 第一項の規定によりなされた弁償の命令について取消訴訟が提起されているときは、裁判所は、当該取消訴訟の判決が確定するまで、当該弁償の命令に係る前項の規定による訴訟の訴訟手続を中止しなければならない。

4 第一項の規定によりなされた弁償の命令については、審査請求をすることができない。

   附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、この法律の施行の日以後に各省各庁の長又は職員が行う国庫金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行又は債務その他の義務の負担について適用する。ただし、附則第三条の規定は、公布の日から施行する。

 (調整規定)

第二条 この法律の施行の日が行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の施行の日前である場合には、同法の施行の日の前日までの間における第二十条第四項の規定の適用については、同項中「審査請求」とあるのは、「行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立て」とする。

 (検討)

第三条 政府は、第十条の規定による訴訟を提起した者が弁護士又は弁護士法人に支払うべき報酬の額をその者が勝訴した場合には国が負担する制度等について速やかに検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (会計検査院法の一部改正)

第四条 会計検査院法の一部を次のように改正する。

  第十一条に次の一号を加える。

  十 違法な国庫金の支出等に関する監査及び訴訟に関する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号)第七条の規定による勧告並びに同法第八条第一項の規定による監査及び勧告

  第二十九条に次の一号を加える。

  九 違法な国庫金の支出等に関する監査及び訴訟に関する法律第七条の規定により勧告をした事項並びに同法第八条第一項の規定による監査の結果並びに同項の規定により勧告をした事項及びその結果

 (国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の一部改正)

第五条 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号)の一部を次のように改正する。

  第六条の二第一項中「又は同法第四十三条第一項」を「若しくは同法第四十三条第一項又は違法な国庫金の支出等に関する監査及び訴訟に関する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号)第十一条第一項」に改める。


     理 由

 違法な国庫金の支出等について、会計検査院に対し監査を求め必要な措置を講ずべきことを請求するとともに、監査の結果に不服がある等の場合には訴訟を提起することができる制度を設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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