第一八九回
参第九号
家庭における子育て及び介護の支援の推進に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、我が国における家庭及び地域を取り巻く環境の変化、急速な少子高齢化の進行等の社会の変化により家庭における子育て及び介護に支障が生じている現状に鑑み、家庭における子育て及び介護の支援の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の必要な事項を定めることにより、家庭における子育て及び介護に係る環境の整備に資することを目的とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 国及び地方公共団体は、相互に連携を図りながら、家庭における子育て及び介護の支援に関する施策を推進するよう努めなければならない。
(事業主の責務)
第三条 事業主は、家庭における子育て及び介護の支援に関し、国又は地方公共団体が実施する施策に協力するとともに、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。
2 事業主は、家庭における子育て及び介護の支援に関し、結婚、妊娠、出産、育児、介護その他の家庭生活に関する事由により退職した女性が再就職をしようとする場合には、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるように努めなければならない。
(法制上の措置等)
第四条 政府は、家庭における子育て及び介護の支援に関する施策を推進するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
(基本方針)
第五条 政府は、家庭における子育て及び介護の支援の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 家庭における子育て及び介護の支援の推進の意義及び目標に関する事項
二 家庭における子育て及び介護の支援の推進のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針
三 前二号に掲げるもののほか、家庭における子育て及び介護の支援の推進に関し必要な事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(父母等との同居及び近居の推進)
第六条 国及び地方公共団体は、家庭における子育て及び介護の支援に関し、地域の活性化の推進に関する施策との連携を図りつつ、自己と同一の世帯に属さない父母等と同居し、又はそれらの者の住居の付近に居住することの推進に必要な施策を講ずるものとする。
(一時預かり事業等の利用者の負担の軽減及び利便の増進等)
第七条 国及び地方公共団体は、一時預かり事業(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第七項に規定する一時預かり事業をいう。)、短期入所生活介護(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第九項に規定する短期入所生活介護をいう。)を行う事業その他のその同居する親族を一時的に預かり、必要な世話等を行う事業の利用に当たり提示し、又は交付することにより経済的負担が減免される証票の交付その他の措置を講ずることにより家庭において子育て及び介護を行う者の負担の軽減及び利便の増進を図るための施策を講ずるものとする。
(在宅勤務の制度の普及)
第八条 国及び地方公共団体は、家庭において育児又は介護をする者が休業することなくその雇用の継続が図られるよう、在宅で勤務できるようにするための制度の普及を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
(家庭生活に関する事由により退職した女性の再就職の支援等)
第九条 国及び地方公共団体は、家庭における子育て及び介護の支援に関し、結婚、妊娠、出産、育児、介護その他の家庭生活に関する事由により退職した女性の再就職の支援を図るとともに、その有する能力に応じた適切な待遇が再就職後に確保されるよう、必要な施策を講ずるものとする。
(その他の施策)
第十条 第六条から前条までに規定するもののほか、国及び地方公共団体は、家庭における子育て及び介護の支援の推進に必要な施策を効率的かつ効果的に講ずるよう努めるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(内閣府設置法の一部改正)
2 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第三項第二十八号を同項第二十八号の二とし、同項第二十七号の六の次に次の一号を加える。
二十八 家庭における子育て及び介護の支援の推進に関する法律(平成二十七年法律第▼▼▼号)第五条第一項に規定する基本方針の作成及び推進に関すること。
理 由
我が国における家庭及び地域を取り巻く環境の変化、急速な少子高齢化の進行等の社会の変化により家庭における子育て及び介護に支障が生じている現状に鑑み、家庭における子育て及び介護に係る環境の整備に資するため、家庭における子育て及び介護の支援の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。