衆議院

メインへスキップ



第一八九回

参第二〇号

   国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第三条)

 第二章 対応措置等(第四条−第二十条)

 第三章 雑則(第二十一条−第二十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態又はこれに引き続く事態のうち、国家の自主的な再建を図る国若しくはその国民等を支援するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、又はその脅威を除去するために国際社会が同条約第七章に従い共同して対処する活動を行うものであって、我が国が国際社会の一員としてこれらに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、人道復興支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

 (基本原則)

第二条 政府は、国際平和共同対処事態に際し、この法律に基づく人道復興支援活動、協力支援活動又は捜索救助活動(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、国際社会の平和及び安全の確保に資するものとする。

2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。

3 対応措置は、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。

 一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従って当該外国において施政を行う機関がある場合にあっては、当該機関)の同意がある場合に限る。)

 二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)及びその上空

4 人道復興支援活動は、その実施を暴力により妨げる勢力その他のその実施に著しい支障となる勢力が存在しないと認められる場合に限り、実施するものとする。

5 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四条第一項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

6 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、内閣総理大臣及び防衛大臣に協力するものとする。

 (定義等)

第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 人道復興支援活動 国際社会の平和及び安全を脅かす事態又はこれに引き続く事態において、国家の自主的な再建を図る国(以下この条において「自主再建国」という。)の国民等に対する人道上の支援又は当該自主再建国の復興の支援に関し、国際連合加盟国の取組を求める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在する場合において、当該決議に基づき、人道的精神に基づいて当該事態によって被害を受け若しくは受けるおそれがある当該自主再建国の住民その他の者(次項において「被災民」という。)を救援し若しくは当該事態によって生じた被害を復旧するため、又は当該自主再建国の復興を支援するために我が国が実施する措置(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)第三条第三号に規定する国際平和協力業務を除く。)をいう。

 二 協力支援活動 諸外国の軍隊等(国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関し、国際連合の総会又は安全保障理事会の決議(国際連合加盟国が当該事態に対処するための活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認めるものに限る。)が存在する場合において、当該決議に基づき、当該事態に対処するための活動を行う外国の軍隊その他これに類する組織(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律第三条第一号に規定する国際連合平和維持活動又は同条第二号に規定する人道的な国際救援活動を行うもの及び周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号)第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊を除く。)をいう。以下同じ。)に対する物品及び役務の提供であって、我が国が実施するものをいう。

 三 捜索救助活動 諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む。)であって、我が国が実施するものをいう。

 四 関係行政機関 次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。

  イ 内閣府並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関並びに国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関

  ロ 内閣府設置法第四十条及び第五十六条並びに国家行政組織法第八条の三に規定する特別の機関

 五 人道復興関係国際機関 国際連合難民高等弁務官事務所その他国際連合の総会若しくは安全保障理事会によって設立された機関若しくは国際連合の専門機関又は我が国が締結した条約その他の国際約束により設立された国際機関であって人道復興支援活動に関するものとして政令で定める国際機関をいう。

2 人道復興支援活動として実施される業務は、次に掲げるもの(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。

 一 医療

 二 被災民の帰還の援助、被災民に対する食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布又は被災民の収容施設の設置

 三 被災民の生活若しくは自主再建国の復興を支援する上で必要な施設若しくは設備の復旧若しくは整備又は前項第一号に規定する事態によって汚染その他の被害を受けた自然環境の復旧

 四 行政事務に関する助言又は指導

 五 前各号に掲げるもののほか、人道的精神に基づいて被災民を救援し若しくは前項第一号に規定する事態によって生じた被害を復旧するため、又は自主再建国の復興を支援するために我が国が実施する輸送(我が国として輸送することが適当でないものとして政令で定める武器(弾薬を含む。)の輸送を除く。)、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒

3 協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(次項後段に規定するものを除く。)は、別表第一に掲げるものとする。

4 捜索救助活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)が実施するものとする。この場合において、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、当該活動に相当する活動を行う諸外国の軍隊等の部隊に対して協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供は、別表第二に掲げるものとする。

   第二章 対応措置等

 (基本計画)

第四条 内閣総理大臣は、国際平和共同対処事態に際し、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施すること及び当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。

2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 国際平和共同対処事態に関する次に掲げる事項

  イ 事態の経緯並びに国際社会の平和及び安全に与える影響

  ロ 国際社会の取組の状況

  ハ 我が国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由

 二 前号に掲げるもののほか、対応措置の実施に関する基本的な方針

 三 人道復興支援活動を実施する場合における次に掲げる事項

  イ 当該人道復興支援活動に係る基本的事項

  ロ 当該人道復興支援活動の種類及び内容

  ハ 当該人道復興支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

  ニ 当該人道復興支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該人道復興支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

  ホ 当該人道復興支援活動を人道復興支援職員(第七条第二項に規定する人道復興支援職員をいう。以下ホにおいて同じ。)が外国の領域で実施する場合には、当該人道復興支援活動を外国の領域で実施する人道復興支援職員の員数及び構成並びに装備並びに派遣期間

  ヘ 関係行政機関がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達して国際連合、人道復興関係国際機関又は国際連合加盟国(第二十一条及び第二十三条において「国際連合等」という。)に無償又は時価よりも低い対価で譲渡する場合には、その実施に係る重要事項

  ト その他当該人道復興支援活動の実施に関する重要事項

 四 前条第三項の協力支援活動を実施する場合における次に掲げる事項

  イ 当該協力支援活動に係る基本的事項

  ロ 当該協力支援活動の種類及び内容

  ハ 当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

  ニ 当該協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該協力支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

  ホ 自衛隊がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達して諸外国の軍隊等に無償又は時価よりも低い対価で譲渡する場合には、その実施に係る重要事項

  ヘ その他当該協力支援活動の実施に関する重要事項

 五 捜索救助活動を実施する場合における次に掲げる事項

  イ 当該捜索救助活動に係る基本的事項

  ロ 当該捜索救助活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項

  ハ 当該捜索救助活動の実施に伴う前条第四項後段の協力支援活動の実施に関する重要事項(当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む。)

  ニ 当該捜索救助活動又はその実施に伴う前条第四項後段の協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間

  ホ その他当該捜索救助活動の実施に関する重要事項

 六 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項

3 対応措置を外国の領域で実施する場合には、人道復興支援活動にあっては当該外国(第二条第三項第一号に規定する機関がある場合にあっては、当該機関。以下この項において同じ。)及び人道復興関係国際機関と協議し、協力支援活動又は捜索救助活動にあっては当該外国と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。

4 第一項及び前項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 (国会の承認)

第五条 内閣総理大臣は、前条第一項の規定により基本計画(自衛隊が実施する対応措置が含まれるものに限る。)の決定があったときは、当該基本計画の内容を国会に報告するとともに、当該基本計画に定める自衛隊が実施する対応措置の実施前に、当該基本計画(自衛隊が実施する対応措置に係る部分に限る。第三項から第五項までにおいて同じ。)について国会の承認を得なければならない。

2 前項の規定は、基本計画の変更(自衛隊が実施する対応措置に係るものに限り、対応措置の終了に係るもの又は政令で定める軽微なものを除く。)について準用する。この場合において、同項中「当該基本計画に定める自衛隊が実施する対応措置の実施前に、当該基本計画(自衛隊が実施する対応措置に係る部分に限る。第三項から第五項までにおいて同じ。)」とあるのは、「当該基本計画のうち当該変更に係る部分に定める対応措置の実施前に、当該部分」と読み替えるものとする。

3 内閣総理大臣は、第一項の規定による国会の承認を得た日から二年を経過する日を超えて引き続き当該承認に係る基本計画(基本計画の変更があったときは、その変更後のもの)に定める対応措置を行おうとするときは、当該日の三十日前の日から当該日までの間に、当該基本計画につき、その時までに行った対応措置の内容を記載した報告書を添えて国会に付議して、その承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならない。

4 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該基本計画に定める対応措置を終了させなければならない。

5 前二項の規定は、国会の承認を得て基本計画に定める対応措置を継続した後、更に二年を超えて当該対応措置を引き続き行おうとする場合について準用する。

 (国会への報告)

第六条 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる場合には、それぞれ当該各号に定める事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。

 一 基本計画の決定又は変更があった場合(前条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する場合を除く。) 当該決定又は変更に係る基本計画の内容

 二 基本計画に定める対応措置が終了した場合 当該対応措置の実施の結果

 (本府による人道復興支援活動の実施)

第七条 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、人道復興支援活動として実施される業務としての物品の提供(次条第一項に規定する物品の提供を除く。)を実施するものとする。

2 内閣総理大臣は、基本計画に従い、人道復興支援活動として実施される業務としての役務の提供(次条第二項に規定する役務の提供を除く。)を実施するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、人道復興支援職員(一般職に属する国家公務員のうち人道復興支援活動に従事する内閣府本府(以下「本府」という。)の職員をいう。以下同じ。)にその実施を命ずるものとする。

3 前二項に定めるもののほか、本府による人道復興支援活動の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

 (自衛隊による人道復興支援活動の実施)

第八条 防衛大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、人道復興支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。

2 防衛大臣は、基本計画に従い、人道復興支援活動としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。

3 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該人道復興支援活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。

4 防衛大臣は、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が人道復興支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合その他この法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。

5 人道復興支援活動のうち公海若しくはその上空又は外国の領域におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該人道復興支援活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するために必要と認める場合には、当該人道復興支援活動の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。

6 自衛隊の部隊等が人道復興支援活動として実施する業務には、武器(弾薬を含む。第二十一条において同じ。)の提供を含まないものとする。

7 自衛隊の部隊等は、外国の領域において人道復興支援活動を実施するに当たり、外務大臣の指定する在外公館と密接に連絡を保つものとする。

8 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、自衛隊による人道復興支援活動の実施のため必要な協力を行うものとする。

9 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。

 (協力支援活動の実施)

第九条 防衛大臣又はその委任を受けた者は、基本計画に従い、第三条第三項の協力支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。

2 防衛大臣は、基本計画に従い、第三条第三項の協力支援活動としての自衛隊による役務の提供について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。

3 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該協力支援活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。

4 前条第四項の規定は、実施区域の指定の変更及び活動の中断について準用する。

5 前条第五項の規定は、公海若しくはその上空又は外国の領域における第三条第三項の協力支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者について準用する。この場合において、前条第五項中「前項」とあるのは、「次条第四項において準用する前項」と読み替えるものとする。

6 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項において準用する前条第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。

 (捜索救助活動の実施等)

第十条 防衛大臣は、基本計画に従い、捜索救助活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。

2 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある捜索救助活動の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該捜索救助活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。

3 捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとする。

4 第八条第四項の規定は、実施区域の指定の変更及び活動の中断について準用する。

5 第八条第五項の規定は、公海若しくはその上空又は外国の領域における捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者について準用する。この場合において、同項中「前項」とあるのは、「第十条第四項において準用する前項」と読み替えるものとする。

6 第一項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項において準用する第八条第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。

7 前条の規定は、捜索救助活動の実施に伴う第三条第四項後段の協力支援活動について準用する。この場合において、前条第五項において準用する第八条第五項中「前項」とあるのは、「第十条第七項において準用する次条第四項において準用する前項」と読み替えるものとする。

 (安全の確保等)

第十一条 内閣総理大臣及び防衛大臣は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、人道復興支援職員及び自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。

 (人道復興支援職員の採用)

第十二条 内閣総理大臣は、人道復興支援活動に従事させるため、当該人道復興支援活動に従事することを志望する者のうちから、選考により、任期を定めて人道復興支援職員を採用することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による採用に当たり、関係行政機関若しくは地方公共団体又は民間の団体の協力を得て、広く人材の確保に努めるものとする。

 (関係行政機関の職員の派遣)

第十三条 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に対し、基本計画に従い、人道復興支援活動を実施するため必要な技術、能力等を有する職員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項各号に掲げる者を除く。)を本府に派遣するよう要請することができる。

2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の職員に該当する職員を期間を定めて本府に派遣するものとする。

3 前項の規定により派遣された職員は、従前の官職を保有したまま、同項の期間を任期として人道復興支援職員に任用されるものとする。

4 前項の規定により従前の官職を保有したまま人道復興支援職員に任用される者は、内閣総理大臣の指揮監督の下に人道復興支援活動に従事する。

 (国家公務員法の適用除外)

第十四条 第十二条第一項の規定により採用される人道復興支援職員については、人道復興支援職員になる前に、国家公務員法第百三条第一項に規定する営利企業(以下この条において「営利企業」という。)を営むことを目的とする団体の役員、顧問若しくは評議員(以下この条において「役員等」という。)の職に就き、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等の職に就き、若しくは事業に従事し、若しくは事務を行っていた場合においても、同項及び同法第百四条の規定は、適用しない。

 (人道復興支援等手当)

第十五条 我が国以外の領域(公海を含む。)において対応措置に従事する者には、対応措置が行われる地域の勤務環境及び対応措置の特質に鑑み、人道復興支援等手当を支給することができる。

2 前項の人道復興支援等手当に関し必要な事項は、政令で定める。

3 内閣総理大臣は、前項の政令の制定又は改廃に際しては、人事院の意見を聴かなければならない。

 (人道復興支援職員の定員)

第十六条 人道復興支援職員の定員は、基本計画に従って行われる人道復興支援活動の実施に必要な定員で基本計画ごとに政令で定めるものとする。

 (関係行政機関の協力)

第十七条 内閣総理大臣及び防衛大臣は、対応措置を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができる。

2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の協力を行うものとする。

 (小型武器の保有及び貸与)

第十八条 本府は、人道復興支援職員の安全保持のために必要な政令で定める種類の小型武器を保有することができる。

第十九条 内閣総理大臣は、第七条第二項の規定により行う人道復興支援活動に人道復興支援職員を従事させるに当たり、現地の治安の状況等を勘案して特に必要と認める場合には、人道復興支援活動が行われる地域に滞在する間、前条の小型武器であって第四条第二項第三号ホの規定により実施計画に定める装備であるものを当該人道復興支援職員に貸与することができる。

2 小型武器を管理する責任を有する者として本府の職員のうちから内閣総理大臣により指定された者は、前項の規定により人道復興支援職員に貸与するため、小型武器を保管することができる。

3 小型武器の貸与の基準、管理等に関し必要な事項は、政令で定める。

 (武器の使用)

第二十条 次に掲げる活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。第六項において同じ。)、人道復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器(自衛隊が外国の領域内で当該活動を実施している場合については、第四条第二項第三号ニ、第四号ニ又は第五号ニの規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下この条において同じ。)を使用することができる。

 一 第八条第二項の規定による人道復興支援活動としての自衛隊の役務の提供

 二 第九条第二項(第十条第七項において準用する場合を含む。)の規定による協力支援活動としての自衛隊の役務の提供

 三 第十条第一項の規定による捜索救助活動

2 前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。

3 第一項の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項及び第五項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。

4 前条第一項の規定により小型武器の貸与を受け、人道復興支援活動に従事する人道復興支援職員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の人道復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で当該小型武器を使用することができる。

5 第一項及び前項の規定による武器又は小型武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。

6 自衛隊法第九十六条第三項の規定は、第一項各号に掲げる活動(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官については、自衛隊員以外の者の犯した犯罪に関しては適用しない。

   第三章 雑則

 (物品の譲渡及び無償貸付け)

第二十一条 内閣総理大臣及び防衛大臣又はそれらの委任を受けた者は、本府又は自衛隊に属する物品(武器を除く。)につき、人道復興支援活動の実施に当たってこれに相当する活動を行う国際連合等から、協力支援活動の実施に当たってその対象となる第三条第一項第二号に規定する活動を行う諸外国の軍隊等から、それぞれこれらの活動(以下「国際共同活動」という。)の用に供するため当該物品の譲渡又は無償貸付けを求める旨の申出があった場合において、当該国際共同活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、当該申出に係る物品を当該国際連合等又は諸外国の軍隊等に対し無償若しくは時価よりも低い対価で譲渡し、又は無償で貸し付けることができる。

 (国以外の者による協力等)

第二十二条 内閣総理大臣及び防衛大臣は、前章の規定による措置のみによっては対応措置を十分に実施することができないと認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供について国以外の者に協力を依頼することができる。

2 政府は、前項の規定により協力を依頼された国以外の者に対し適正な対価を支払うとともに、その者が当該協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (請求権の放棄)

第二十三条 政府は、自衛隊が対応措置を実施するに際して、国際連合等又は諸外国の軍隊等の属する外国から、当該国際連合等若しくは当該諸外国の軍隊等の行う国際共同活動又は対応措置に起因する損害についての請求権を相互に放棄することを約することを求められた場合において、これに応じることが相互の連携を確保しながらそれぞれの活動を円滑に実施する上で必要と認めるときは、当該国際共同活動に起因する損害についての当該国際連合等又は当該外国及びこれらの要員に対する我が国の請求権を放棄することを約することができる。

 (政令への委任)

第二十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第四項及び第五項の規定は、公布の日から施行する。

 (自衛隊法の一部改正)

2 自衛隊法の一部を次のように改正する。

  第百条の六第一項第一号中「第三条第一項第一号及び」を「第三条第一項第一号に規定する合衆国軍隊、」に改め、「規定する合衆国軍隊」の下に「及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律第三条第一項第二号に規定する諸外国の軍隊等に該当する合衆国軍隊」を加える。

  第百条の八第一項第一号中「参加するオーストラリア軍隊」の下に「(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律第三条第一項第二号に規定する諸外国の軍隊等に該当するオーストラリア軍隊を除く。第三号から第六号までにおいて同じ。)」を加える。

 (国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部改正)

3 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を次のように改正する。

  第三条第四号イからハまで以外の部分に次のただし書を加える。

    ただし、ロにあっては、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律(平成二十七年法律第▼▼▼号)第二十一条の規定により譲渡することを除く。

 (関係法律の整備)

4 国家安全保障会議設置法(昭和六十一年法律第七十一号)第二条第一項の国家安全保障会議の所掌事務及び同法第九条第二項の事態対処専門委員会の調査等の目的に、国際平和共同対処事態への対処に関する重要事項を加えることとし、このための同法の規定の整備については、別に法律で定める。

5 前三項に規定するもののほか、対応措置の実施に関する自衛隊法第八十四条の四の規定の整備、第二十条の規定による武器の使用に関する同法第九十四条の六の規定の整備その他この法律の施行に伴い必要な関係法律の整備については、別に法律で定める。

別表第一(第三条関係)

種 類

内   容

補給

給水、給油、食事の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

輸送

人員及び物品の輸送、輸送用資材の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

修理及び整備

修理及び整備、修理及び整備用機器並びに部品及び構成品の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

医療

傷病者に対する医療、衛生機具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

通信

通信設備の利用、通信機器の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

空港及び港湾業務

航空機の離発着及び船舶の出入港に対する支援、積卸作業並びにこれらに類する物品及び役務の提供

基地業務

廃棄物の収集及び処理、給電並びにこれらに類する物品及び役務の提供

建設

建築物の建設、建設機械及び建設資材の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

備考

 一 輸送には、我が国として輸送することが適当でないものとして政令で定める武器(弾薬を含む。)の輸送、これに係る輸送用資材の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供を含まないものとする。

 二 物品の提供には、武器(弾薬を含む。)の提供を含まないものとする。

 三 物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。

 四 物品の輸送には、外国の領域における武器(弾薬を含む。)の陸上輸送を含まないものとする。

別表第二(第三条関係)

種 類

内   容

補給

給水、給油、食事の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

輸送

人員及び物品の輸送、輸送用資材の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

修理及び整備

修理及び整備、修理及び整備用機器並びに部品及び構成品の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

医療

傷病者に対する医療、衛生機具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

通信

通信設備の利用、通信機器の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

宿泊

宿泊設備の利用、寝具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

消毒

消毒、消毒機具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供

備考

 一 輸送には、我が国として輸送することが適当でないものとして政令で定める武器(弾薬を含む。)の輸送、これに係る輸送用資材の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供を含まないものとする。

 二 物品の提供には、武器(弾薬を含む。)の提供を含まないものとする。

 三 物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。

 四 物品の輸送には、外国の領域における武器(弾薬を含む。)の陸上輸送を含まないものとする。


     理 由

 国際社会の平和及び安全を脅かす事態又はこれに引き続く事態のうち、国家の自主的な再建を図る国若しくはその国民等を支援するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、又はその脅威を除去するために国際社会が同条約第七章に従い共同して対処する活動を行うものであって、我が国が国際社会の一員としてこれらに主体的かつ積極的に寄与する必要があるものに際し、人道復興支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することができるようにする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.