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第二一一回

衆第四一号

   保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、保護者等(保護者、養護者、対象事業者等をいう。以下この条において同じ。)が自動車内に子ども等(子ども及び対象障害者をいう。以下同じ。)を置き去りにすることにより子ども等の生命又は身体に危険が生ずる事態が生じていることに鑑み、保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止に関する措置等を定めることにより、保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止を図り、もって子ども等の福祉の増進に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「子ども」とは、次に掲げる者をいう。

 一 小学校就学の始期に達するまでの者

 二 十八歳未満の者であって、心身の機能の障害により自ら自動車の外に出ることができないもの(前号に該当する者を除く。)

2 この法律において「対象障害者」とは、十八歳以上の者であって、心身の機能の障害により自ら自動車の外に出ることができないものをいう。

3 この法律において「保護者」とは、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条に規定する保護者をいう。

4 この法律において「養護者」とは、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成二十三年法律第七十九号)第二条第三項に規定する養護者をいう。

5 この法律において「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車(二輪の自動車並びに同法第三条に規定する大型特殊自動車及び小型特殊自動車を除く。)をいう。

6 この法律において「対象自動車」とは、子ども等の送迎を目的とした自動車(運転者席及びこれと並列の座席並びにこれらより一つ後方に備えられた前向きの座席以外の座席を有しないものその他利用の態様を勘案してこれと同程度に子ども等の見落としのおそれが少ないと認められるものを除く。)をいう。

7 この法律において「対象事業者」とは、対象自動車を日常的に運行する事業者をいう。

8 この法律において「置き去り防止装置」とは、自動車に乗車した子ども等が当該自動車に置き去りにされていることを自動的に検知するために必要な機能を有する装置をいう。

9 この法律において「見落とし防止装置」とは、自動車内への子ども等の置き去りの防止に資するため自動車内の子ども等の見落としを防止するブザーその他の装置をいう。

 (保護者又は同居の親族による置き去り防止装置を備えていない自動車に子どもを乗車させる行為の禁止)

第三条 子どもの保護者又は同居の親族は、置き去り防止装置を備えていない自動車(その子どもの保護者又は同居の親族が使用者(車両を使用する権原を有し、その運行を支配し、管理する者をいう。第七条において同じ。)である自動車に限る。)にその子どもを乗車させてはならない。

 (違反事実に係る通告)

第四条 前条の規定に違反すると認められる事実があることを発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告することができる。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をすることを妨げるものと解釈してはならない。

第五条 市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所が前条第一項の規定による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

 (違反行為をしたと認められる保護者に対する指導等)

第六条 都道府県知事又は児童相談所長は、第三条の規定に違反する行為をしたと認められる保護者(同居の親族による同条の規定に違反する行為を放置したと認められる保護者を含む。以下この条において同じ。)について児童福祉法第二十七条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により訓戒を加え、若しくは誓約書を提出させる場合又は同項(第二号に係る部分に限る。)若しくは同法第二十六条第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定により指導を行う場合は、当該保護者について、その再発を防止するため、これらの措置を適切に行うよう努めるものとする。

2 第三条の規定に違反する行為をしたと認められる保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合においては、当該保護者は、同号の指導を受けなければならない。

3 前項の場合において保護者が同項の指導を受けないときは、都道府県知事は、当該保護者に対し、同項の指導を受けるよう勧告することができる。

4 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わない場合において必要があると認めるときは、第三条の規定に違反する行為の再発を防止するため、必要な措置を講ずるものとする。

 (養護者又は同居の親族による置き去り防止装置を備えていない自動車に対象障害者を乗車させる行為の禁止)

第七条 対象障害者の養護者又は同居の親族は、置き去り防止装置を備えていない自動車(その対象障害者の養護者又は同居の親族が使用者である自動車に限る。)にその対象障害者を乗車させてはならない。

 (違反事実に係る通告)

第八条 前条の規定に違反すると認められる事実があることを発見した者は、これを市町村に通告することができる。

2 前項の規定による通告は、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律第七条第一項の規定による通報とみなして、同法(第九条第二項及び第三項を除く。)の規定を適用する。

3 第四条第三項の規定は、第一項の規定による通告について準用する。

 (違反行為をしたと認められる養護者に対する指導等)

第九条 市町村又は障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律第三十三条第一項の規定による委託を受けた者は、第七条の規定に違反する行為をしたと認められる養護者(同居の親族による同条の規定に違反する行為を放置したと認められる養護者を含む。以下この条において同じ。)について同法第三十二条第二項(第二号に係る部分に限る。)に規定する業務を行う場合は、当該養護者について、その再発を防止するため、当該業務を適切に行うよう努めるものとする。

2 第七条の規定に違反する行為をしたと認められる養護者について障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律第三十二条第二項第二号の指導が行われることとなった場合においては、当該養護者は、同号の指導を受けなければならない。

3 第六条第三項及び第四項の規定は、第七条の規定に違反する行為をしたと認められる養護者について準用する。この場合において、第六条第三項中「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と、同条第四項中「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と、「第三条」とあるのは「第七条」と読み替えるものとする。

 (対象事業者による見落とし防止装置の設置)

第十条 対象事業者は、対象自動車に見落とし防止装置を備えなければならない。

 (勧告及び公表)

第十一条 都道府県知事は、前条の規定に違反する対象事業者があるときは、当該対象事業者に対し、期限を定めて、同条の規定に従って見落とし防止装置を備えるべきことを勧告することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による勧告をした場合において、当該勧告を受けた対象事業者が、同項の期限内にこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

 (報告等)

第十二条 都道府県知事は、前二条の規定の施行に必要な限度において、対象事業者に対し、報告を求め、又は当該職員に、関係者に対し質問させ、若しくは対象事業者の事務所若しくは対象事業者がその運行の用に供する対象自動車の所在すると認められる場所に立ち入り、その対象自動車、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (置き去り防止装置等の設置の費用の補助等)

第十三条 国は、子どもの保護者又は同居の親族、対象障害者の養護者又は同居の親族及び対象事業者に対し、置き去り防止装置又は見落とし防止装置の設置に通常要する費用(その維持管理に通常要する費用を含む。)の全部又は一部を補助するものとする。

2 国は、置き去り防止装置及び見落とし防止装置の円滑な供給を確保し、並びにそのための研究開発を促進するために必要な措置を講ずるものとする。

 (多様な事情等の考慮)

第十四条 自動車内への子ども等の置き去りがあった場合においてその保護者若しくは同居の親族又は養護者若しくは同居の親族に対してなされる措置は、これらの者が置かれている多様な事情等を十分に考慮して、子ども等の置き去りの防止のために必要かつ相当な限度において行うものとする。

 (啓発活動等)

第十五条 国及び地方公共団体は、自動車内への子ども等の置き去りの危険性等について、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

2 国及び地方公共団体は、自動車内への子ども等の置き去りを防止する上で商業施設内の駐車場等における警備員の巡回等が効果的であることに鑑み、その巡回等に当たって留意すべき事項に関する理解の促進に資するため、警備員等に対する研修の機会の確保、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (大都市等の特例)

第十六条 この法律中都道府県知事が処理することとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この条において「指定都市」という。)及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下この条において「中核市」という。)並びに児童福祉法第五十九条の四第一項に規定する児童相談所設置市(以下この条において「児童相談所設置市」という。)においては、政令で定めるところにより、指定都市若しくは中核市又は児童相談所設置市(以下この条において「指定都市等」という。)の長が処理するものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事に関する規定は、指定都市等の長に関する規定として指定都市等の長に適用があるものとする。

 (罰則)

第十七条 第三条又は第七条の規定に違反した者は、二万円以下の罰金又は科料に処する。

第十八条 正当な理由がないのに、第十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四条から第六条まで、第八条、第九条、第十一条、第十二条及び第十六条から第十八条までの規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

2 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 保護者等が自動車内に子ども等を置き去りにすることにより子ども等の生命又は身体に危険が生ずる事態が生じていることに鑑み、保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止に関する措置等を定めることにより、保護者等による自動車内への子ども等の置き去りの防止を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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