衆議院

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第二一二回

衆第八号

   選挙等改革の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第三条)

 第二章 選挙等改革を推進するための措置

  第一節 民意を適切に反映させるための選挙等に係る制度への転換を図るための措置(第四条−第六条)

  第二節 選挙等に係る制度の合理化を図るための措置(第七条)

  第三節 選挙等に対する国民又は住民の信頼を向上させるための措置(第八条・第九条)

 第三章 選挙等改革協議会(第十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国が直面する諸課題の解決を図るためには、民意を国又は地方公共団体の政策に適切に反映させるための選挙及び政治資金(以下「選挙等」という。)に係る制度への転換を図るとともに、選挙等に係る制度の合理化を図り、あわせて選挙等に対する国民又は住民の信頼を向上させることが一層重要になっていることに鑑み、選挙等に関する改革(以下「選挙等改革」という。)に関し、基本理念を明らかにするとともに、選挙等改革を推進するための措置及び選挙等改革協議会の設置について定めることにより、選挙等改革を総合的かつ効果的に推進し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 選挙等改革は、公職(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。以下同じ。)を担う多様な人材の確保及び選挙における投票率の向上を図ること並びに公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下「公職の候補者等」という。)及び政党その他の政治団体の政策等に関する情報が効果的に提供されることを通じて、民意を国又は地方公共団体の政策に適切に反映させるための選挙等に係る制度への転換を図ることを旨として、行われなければならない。

2 選挙等改革は、選挙等に係る制度の合理化を図ることを旨として、行われなければならない。

3 選挙等改革は、選挙の公正並びに政治資金の収支に関する公明及び公正を確保することを通じて、選挙等に対する国民又は住民の信頼を向上させることを旨として、行われなければならない。

 (条例による特例措置の活用)

第三条 次章に規定する選挙等改革を推進するための措置を講ずるに当たっては、その確実かつ円滑な導入に資するため、必要に応じて、地方公共団体が条例で定めるところにより当該地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において特例措置として行うことができる仕組みの活用が図られるものとする。

   第二章 選挙等改革を推進するための措置

    第一節 民意を適切に反映させるための選挙等に係る制度への転換を図るための措置

 (公職を担う多様な人材の確保)

第四条 公職を担う意欲を有する者が公職の候補者となる上での支障を軽減し、公職を担う多様な人材の確保を図るため、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の被選挙権を有する者の年齢を満十八歳以上に引き下げること。

 二 地方公共団体の議会の議員の選挙において、その被選挙権の住所に関する要件を撤廃すること。

 三 公職の候補者の資力に応じて選挙供託金(公職選挙法第九十二条第一項の供託物をいう。)の額を引き下げる仕組みを導入すること。

 四 民間企業に雇用されている者等の立候補に伴う休暇に関する制度を導入すること。

 五 公職の候補者の立候補の届出があった旨の告示又は当選人の告示に係る事項のうち、公職の候補者又は当選人の住所等をそれらの告示の対象から除外することその他公職の候補者又は当選人に係る個人情報の適切な取扱いを確保すること。

 六 公職の候補者等がその代表者である政治団体について、当該政治団体の代表者を当該公職の候補者等の親族に変更すること及び当該政治団体から当該親族に対し寄附をすることを規制すること。

 (投票率の向上)

第五条 選挙人が、年齢、障害の有無等の心身の状態、地理的な制約、経済的な状況その他の要因にかかわらず、円滑に投票を行うことができる環境を整備し、選挙における投票率の向上を図るため、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 大学、商業施設等に設けられる期日前投票所においてその所在する市町村の選挙人名簿に登録されていない者であっても投票を行うことができる仕組みの導入等による期日前投票の対象の拡大、期日前投票の事由に該当する旨の誓約書の廃止その他選挙人の投票の便宜を図るための期日前投票の見直しを行うこと。

 二 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第三項に規定する要介護者、産前産後の者その他自ら投票所に行くことが困難な状態にある者に対し、郵便等投票(公職選挙法第四十九条第二項に規定する方法による投票をいう。)の対象を拡大すること。

 三 不在者投票及び在外投票に係る手続を簡素化すること。

 四 統一地方選挙の積極的な活用等により、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の期日について一層の集約を図ること。

2 インターネットを利用する投票方法については、全ての選挙人の投票の利便性の向上並びに選挙の公正及びこれに対する信頼等の確保が図られる方法等により、令和七年にその期日を公示される参議院議員の通常選挙から、導入されるものとする。

 (政策等に関する情報の効果的な提供)

第六条 選挙運動及び政治活動の規制の撤廃又は緩和等を推進し、公職の候補者等及び政党その他の政治団体の政策等に関する情報が効果的に提供されるようにするため、選挙人等に及ぼす迷惑の防止にも配慮しつつ、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 選挙に関し投票を得若しくは得させ又は得させない目的をもってする戸別訪問を解禁すること。

 二 選挙に関し公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表することを解禁すること。

 三 選挙運動用自動車(公職選挙法第百四十一条の規定により選挙運動のために使用する自動車をいう。次条第四号及び第九号ハにおいて同じ。)で停止していないものの上において選挙運動のための演説をすることを解禁すること。

 四 次に掲げる措置その他選挙運動のために使用する文書図画の頒布に関する規制を緩和すること。

  イ 選挙運動のために使用するビラについて頒布することができる数の上限を引き上げること。

  ロ 選挙運動のために使用するビラを住宅の郵便受箱に投函(かん)する等の方法による頒布を解禁すること。

  ハ 公職の候補者及び政党その他の政治団体以外の者が行う電子メールを利用する方法(公職選挙法第百四十二条の三第一項に規定する電子メールを利用する方法をいう。)による選挙運動のために使用する文書図画の頒布を解禁すること。

 五 選挙運動のためにする街頭演説の場所において当該街頭演説の開催中使用するポスター、立札及び看板の類の掲示を解禁するとともに、当該街頭演説における選挙運動に従事する者の数に関する規制を撤廃すること。

 六 公職の候補者以外の者による二人以上の公職の候補者の合同演説会等の開催を解禁すること。

 七 公職の候補者等の政治活動のために使用する当該公職の候補者等の氏名又はその氏名が類推されるような事項を表示するポスターについて、周辺の環境の保持に配慮する観点から果たすべき責任の内容を明らかにした上で、公職選挙法第百四十三条第十九項各号に定める期間内に掲示する行為を解禁すること。

 八 公職の候補者等の政治活動のためにする街頭演説の場所において当該街頭演説の開催中使用する当該公職の候補者等の氏名又はその氏名が類推されるような事項を表示する文書図画を掲示する行為を解禁すること。

 九 選挙の期日後において当選又は落選に関し選挙人に挨拶する目的をもってする行為の規制を緩和すること。

 十 選挙運動又は政治活動のためにする街頭演説等の選挙運動及び政治活動をすることができる時間の規制について、一定の範囲内において都道府県又は市町村の条例で定めることができるようにすること。

 十一 記号式投票(公職選挙法第四十六条の二第一項に規定する方法による投票をいう。)を行う選挙における投票用紙に印刷すべき事項として、公職の候補者の党派別に関する事項を追加すること。

 十二 選挙管理委員会が、一定の期間にわたって、選挙公報をインターネットを利用して公衆の閲覧に供しなければならないものとすること。

    第二節 選挙等に係る制度の合理化を図るための措置

第七条 選挙の管理執行、選挙運動及び政治活動の規制等における無駄を排除し、並びに選挙に関する費用を適正化して、選挙等に係る制度の合理化を図るため、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 選挙運動及び政治活動を行うための選挙人名簿の抄本の閲覧に係る制度を廃止すること。

 二 個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)の利用等による投票手続の合理化を図り、並びに開票事務の効率化及び迅速化を図るとともに、これらにより選挙の管理執行に関する費用を節減すること。

 三 再選挙又は補欠選挙を行うべき場合を限定するとともに、当選人がない場合等における決選投票の仕組みを導入すること。

 四 選挙運動用自動車の規格の規制を簡素化すること。

 五 選挙運動のために使用するビラ及びポスターの数に関する規制の実効性を確保しつつ、選挙管理委員会の交付する証紙の貼付に代わる仕組みを導入すること。

 六 公職の候補者が選挙運動のために使用するポスターの規格を個人演説会の告知の記載の有無にかかわらず統一するとともに、当該ポスターに記載される情報を公衆の見やすい場所に設置される通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面等に表示させることができるようにすること。

 七 公職の候補者等が当該選挙区内にある地方公共団体のうち災害により被害を受けたこと等の事情がある地方公共団体に対し寄附をすることを解禁すること。

 八 情報通信技術の活用、経済社会情勢の変化に対応するための規制の撤廃又は緩和等により、立候補の届出、選挙運動に関する費用に係る公費負担に関する精算、選挙運動に関する収支報告書(公職選挙法第百八十九条第一項の報告書をいう。次条第五号において同じ。)の提出、政治団体の収支報告書(政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第十二条第一項の報告書をいう。第九条第一号において同じ。)の提出その他公職の候補者等及び政党その他の政治団体が行う選挙等に関する手続を簡素化及び効率化すること。

 九 次に掲げる措置その他選挙運動に関する費用に係る公費負担の適正化を図ること及び選挙の種類にかかわらず当該公費負担の有無を統一すること。

  イ 選挙運動のために使用する通常葉書の交付及び作成並びに選挙事務所を表示するための立札及び看板の類の作成に要する費用に係る公費負担を廃止すること。

  ロ インターネット等を利用する方法(公職選挙法第百四十二条の三第一項に規定するインターネット等を利用する方法をいう。)による選挙運動に要する費用に係る公費負担を設けること。

  ハ 選挙運動用自動車の使用に要する費用に係る公費負担の上限額及び対象を見直すこと。

 十 選挙運動に関する支出金額の制限額を引き下げること。

 十一 地域の事情を考慮して、専ら選挙運動のために使用する自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者に対し支給することができる報酬の上限額の引上げその他公職選挙法第百九十七条の二第二項から第四項までに規定する選挙運動に従事する者に対し支給することができる報酬の上限額の見直しを行うこと。

    第三節 選挙等に対する国民又は住民の信頼を向上させるための措置

 (選挙の公正の確保)

第八条 選挙人の投票に関する判断を誤らせるような行為、公職の候補者間又は政党その他の政治団体の間における公平の確保を害するような行為等を排除し、選挙の公正を確保するため、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 外国の国籍を有する日本国民の被選挙権を見直すとともに、選挙公報に掲載すべき事項として外国の国籍の得喪の履歴を追加すること。

 二 公職の候補者の通称、政党その他の団体の名称等を不正に使用することにより、公職の候補者若しくは政党その他の団体の識別に関し混同を生じさせ、又は公職の候補者の政党その他の団体への所属等に関し選挙人を誤認させる行為を規制すること。

 三 当選を得若しくは得させ又は得させない目的をもって公職の候補者等に関し虚偽の事項を公にした者等に対する罰則を強化すること。

 四 当選を得させないための活動に使用する文書図画の頒布及び掲示並びに当選を得させないための活動のためにする街頭演説で拡声機を使用して行われるものを規制すること。

 五 選挙運動の規制及び選挙運動に関する収支報告書の作成に関し、分かりやすい準則を作成すること等により、それらの統一的な運用を図ること。

 六 選挙人等の請求に基づき公職の候補者又は政党その他の政治団体の正確な得票数の調査を行う制度を整備すること。

 (政治資金の収支に関する公明及び公正の確保)

第九条 公職の候補者等である政治団体の代表者等の政治資金に関する責任を明確にし、並びに政治活動に関する不適正な収入及び支出を防止して、政治資金の収支に関する公明及び公正を確保するため、次に掲げる措置その他必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 政治団体の代表者について、会計責任者とともに、政治団体の収支報告書の記載及び提出の義務を有する者とすること。

 二 法人その他の団体が行う政治活動に関する寄附を禁止するとともに、政治資金団体(政治資金規正法第五条第一項第二号に掲げる政治資金団体をいう。)の制度を廃止すること。

 三 政党等選挙区支部(政党その他の政治団体の支部で、選挙区の区域を単位として設けられるもののうち当該選挙区に係る公職の候補者等が代表者であるものをいう。)が行う当該選挙区内にある者に対する寄附を規制すること。

 四 政治団体がその目的に関連する支出及び政治活動に関連する支出以外の支出をすることを防止するための仕組みを導入すること。

 五 個人が政治活動に関する寄附をした場合における所得税の課税に係る特別の措置について、公職の候補者等が自己に関係のある政治団体に対し寄附をする場合をその対象から除外すること。

   第三章 選挙等改革協議会

第十条 前章に規定する選挙等改革を推進するための措置について検討を行うため、別に法律で定めるところにより、令和七年三月三十一日までの間、国会に、各議院においてその議員の中から選任された同数の委員で組織する選挙等改革協議会を設置するものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 次に掲げる事項については、両議院の役割及び在り方を踏まえて検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

 一 国会議員の定数を削減すること。

 二 参議院議員の全てを選挙区選出議員とするとともに、その選挙区について全国を十一の区域に分けた区域に改めること、参議院議員と地方公共団体の議会の議員又は長とを兼ねることができるようにすることその他参議院議員の選挙制度の在り方の見直しを行うこと。

3 公職の候補者が選挙運動に関する支出金額の制限額の範囲内において自由に選挙運動を行うことができるようにするための選挙運動の規制の抜本的な見直しについては、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

4 子育て世帯の意見が国又は地方公共団体の政策に一層反映されるようにするための選挙の仕組みの導入については、検討が加えられるものとする。


     理 由

 我が国が直面する諸課題の解決を図るためには、民意を国又は地方公共団体の政策に適切に反映させるための選挙等に係る制度への転換を図るとともに、選挙等に係る制度の合理化を図り、あわせて選挙等に対する国民又は住民の信頼を向上させることが一層重要になっていることに鑑み、選挙等改革に関し、基本理念を明らかにするとともに、選挙等改革を推進するための措置及び選挙等改革協議会の設置について定めることにより、選挙等改革を総合的かつ効果的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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