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   児童虐待の防止等に関する法律案要綱


第一 目的
  この法律は、児童虐待が児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えることにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進することを目的とするものとすること。(第一条関係)
第二 児童虐待の定義
  この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)に対し、次に掲げる行為をすることをいうものとすること。(第二条関係)
 1 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
 2 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
 3 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
 4 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
第三 児童に対する虐待の禁止
  何人も、児童に対し、虐待をしてはならないものとすること。(第三条関係)
第四 国及び地方公共団体の責務等
 一 国及び地方公共団体は、児童虐待の早期発見及び児童虐待を受けた児童の迅速かつ適切な保護を行うため、関係機関及び民間団体の連携の強化その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めるものとすること。(第四条第一項関係)
 二 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童に対し専門的知識に基づく適切な保護を行うことができるよう、児童相談所等関係機関の職員の人材の確保及び資質の向上を図るため、研修等必要な措置を講ずるものとすること。(第四条第二項関係)
 三 国及び地方公共団体は、児童虐待の防止に資するため、児童虐待が児童に及ぼす影響、児童虐待に係る通告義務等について必要な広報その他の啓発活動に努めるものとすること。(第四条第三項関係)
 四 何人も、児童の健全な成長のために、良好な家族の関係及び近隣社会の連帯が求められていることに留意しなければならないものとすること。(第四条第四項関係)
第五 児童虐待の早期発見及び児童虐待に係る通告
 一 児童虐待の早期発見
   学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健婦、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないものとすること。(第五条関係)
 二 児童虐待に係る通告
  1 児童虐待を受けた児童を発見した者は、速やかに、これを児童福祉法により通告しなければならないものとすること。(第六条第一項関係)
  2 刑法の秘密漏示罪の規定その他守秘義務に関する法律の規定は、児童虐待を受けた児童を発見した場合における児童福祉法による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならないものとすること。(第六条二項関係)
  3 児童相談所又は福祉事務所が児童虐待を受けた児童に係る児童福祉法による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた児童相談所又は福祉事務所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならないものとすること。(第七条関係)
第六 児童虐待を受けた児童の保護等
 一 通告又は送致を受けた場合の措置
   児童相談所が児童虐待を受けた児童について児童福祉法による通告又は送致を受けたときは、児童相談所長は、速やかに、当該児童の安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ同法による一時保護を行うものとすること。(第八条関係)
 二 立入調査等
  1 都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができるものとすること。(第九条第一項関係)
  2 1による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り及び調査又は質問は、児童福祉法による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する吏員の立入り及び調査又は質問とみなすものとすること。(第九条第二項関係)
 三 警察官の援助
   一の児童の安全の確認若しくは一時保護又は二の立入り及び調査若しくは質問をしようとする者は、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、警察官の援助を求めることができるものとすること。(第十条関係)
 四 指導を受ける義務等
  1 児童虐待を行った保護者について児童福祉法による児童福祉司等の指導の措置が採られた場合において、当該指導を受けることが義務である旨定めること。(第十一条第一項関係)
  2 1の保護者が1の指導を受けないときは、都道府県知事は、当該保護者に対し、当該指導を受けるよう勧告することができるものとすること。(第十一条第二項関係)
 五 面会又は通信の制限
   児童虐待を受けた児童についてその保護者の意に反して児童福祉法による施設への入所等の措置が採られた場合においては、児童相談所長又は児童を入所させた施設の長は、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点から、当該保護者について当該児童との面会又は通信を制限することができるものとすること。(第十二条関係)
 六 児童福祉司等の意見の聴取
   都道府県知事は、児童虐待を受けた児童について児童福祉法による施設への入所等の措置が採られ、及び当該児童の保護者について同法による児童福祉司等の指導の措置が採られた場合において、当該施設への入所等の措置を解除しようとするときは、当該指導を行うこととされた児童福祉司等の意見を聴かなければならないものとすること。(第十三条関係)
第七 親権に関する事項
 一 親権の行使に関する配慮等
  1 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、その適切な行使に配慮しなければならないものとすること。(第十四条第一項関係)
  2 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはないものとすること。(第十四条第二項関係)
 二 親権の喪失の制度の適切な運用
   民法に規定する親権の喪失の制度は、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点からも、適切に運用されなければならないものとすること。(第十五条関係)
第八 附則関係
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、三1(2)は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
 二 検討
   児童虐待の防止等のための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。(附則第二条関係)
 三 児童福祉法の一部改正関係(附則第三条及び第四条関係)
 1 児童福祉司及び児童相談所長の任用資格
  (1) 児童福祉司及び児童相談所長の任用資格に社会福祉士を加えること。
  (2) 児童福祉司又は児童相談所長の任用資格のうち、他の任用資格を有する者に準ずる者であって必要な学識経験を有するものに替えて、他の任用資格を有する者と同等以上の能力を有すると認められる者であって厚生省令で定めるものを規定すること。この場合において、必要な経過措置を定めること。
 2 一時保護の期間
  (1) 一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならないものとすること。
  (2) (1)にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き一時保護を行うことができるものとすること。
 3 児童福祉施設の最低基準の明確化等
  (1) 児童福祉施設の最低基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならないものとすること。
(2) 児童福祉施設の設置者は、児童福祉施設の設備及び運営についての水準の向上を図ることに努めるものとすること。
 四 その他所要の規定の整備を行うこと。

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