衆議院

メインへスキップ



                                        
   公共事業基本法案要綱


第一 目的
  この法律は、公共事業が国民の社会経済生活に多大な影響を与えること及びその費用が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることにかんがみ、公共事業に関する基本理念を明らかにするとともに、公共事業に関する国と地方公共団体との役割分担を明確にし、並びに公共事業中期総合計画及び公共事業実施計画の作成及び国会における承認、公共事業の再評価及び事後評価等に関する事項について定めることにより、公共事業に関する施策の計画性、総合性及び一体性を確保するとともに、公共事業に関し、国会の関与の強化、情報公開の促進、民意の反映及び時代に即応した是正を図り、もって国民的視点に立ち、かつ、社会経済情勢の変化を踏まえた公共事業を推進することを目的とすること。
(第一条関係)
第二 定義
  この法律において「公共事業」とは、次に掲げる事業で、国、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(国が出資しているものに限る。以下「特殊法人」という。)、地方公共団体その他政令で定める者が実施するものをいうこと。
 一 土地改良事業
 二 森林整備事業
 三 治山事業
 四 沿岸漁場整備開発事業
 五 漁港整備事業
 六 都市公園等整備事業
 七 下水道整備事業
 八 治水事業
 九 急傾斜地崩壊対策事業
 十 海岸事業
 十一 道路整備事業
 十二 住宅建設事業
 十三 新幹線整備事業
 十四 港湾整備事業
 十五 空港整備事業
 十六 廃棄物処理施設整備事業
(第二条関係)
第三 基本理念
 一 公共事業は、環境との調和を図り、安全で質の高い国民生活を実現し、及び産業の生産性を向上させることを目指すものでなければならないこと。
 二 公共事業は、地域の実情に応じて、地域住民の理解の下に実施されるものでなければならないこと。
 三 公共事業については、国が実施する事業を地方公共団体が実施することができない広域的な事業に限定する等地方分権の徹底が図られなければならないこと。
 四 公共事業を実施するに当たっては、財政の健全性の確保に最大限の考慮を払うとともに、民間の能力を十分に活用する等最も効率的な手法により、最少の費用で最大の効果が得られるようにしなければならないこと。
 五 公共事業を実施するに当たっては、環境の保全に最大限の配慮を払わなければならないこと。
 六 公共事業を実施するに当たっては、社会経済情勢の変化に柔軟に対応するため、不断に事業の在り方を見直さなければならないこと。
 七 公共事業を実施するに当たっては、積極的な情報の公開により国民に説明する責務を全うするとともに、計画の作成、実施及び評価の各段階において、国民の参加を積極的に求めなければならないこと。
(第三条関係)
第四 国と地方公共団体との役割分担
 一 国又は特殊法人が実施することができる公共事業は、次に掲げる事業に限定するものとし、その他の公共事業については、地方公共団体等が実施するものとすること。
  1 国有林野に関する事業
  2 一の都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する公園又は緑地の整備に関する事業
  3 一級河川に関する事業
  4 国土を縦断し、横断し、又は循環して、全国的な幹線道路網の枢要部分を構成し、かつ、政治上、経済上、又は文化上特に重要な都市を連絡する道路の整備に関する事業
  5 新幹線鉄道に係る鉄道施設の建設に関する事業
  6 千葉港湾、京浜港湾、名古屋港湾、四日市港湾、大阪港湾、神戸港湾及び博多港湾に関する事業
  7 新東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、東京国際空港及び大阪国際空港に関する事業
  8 その他その性質において地方公共団体が実施することが適当でない事業
 二 国又は特殊法人が実施する公共事業に要する費用は、国又は特殊法人が負担することを基本とするものとすること。
(第四条関係)
第五 公共事業中期総合計画の作成及び国会承認等
 一 政府は、平成十四年度以降の毎五箇年を各一期として、当該期間中に国及び特殊法人が実施する公共事業に関する総合的な計画(以下「公共事業中期総合計画」という。)を作成しなければならないこと。
 二 公共事業中期総合計画には、次に掲げる事項を定めなければならないこと。
  1 五箇年間における公共事業の実施に関する基本方針
  2 五箇年間における公共事業の実施の目標及び事業の量
 三 政府は、都道府県の意見を聴いて、公共事業中期総合計画の案を作成しなければならないこと。
 四 都道府県は、三の意見を述べようとするときは、市町村の意見を聴かなければならないこと。
 五 政府は、公共事業中期総合計画の案を作成したときは、これを公開し、広く国民の意見を聴かなければならないこと。
 六 政府は、公共事業中期総合計画を作成しようとするときは、公共事業調査会の意見を聴かなければならないこと。この場合において、政府は、五により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を公共事業調査会に提出しなければならないこと。
 七 政府は、公共事業中期総合計画を作成したときは、当該公共事業中期総合計画の初年度の開始前に、これを国会に提出し、その承認を受けなければならないこと。
 八 政府は、七による国会の承認があったときは、遅滞なく、公共事業中期総合計画を公表しなければならないこと。
 九 三から八までは、公共事業中期総合計画の変更について準用すること。
(第五条関係)
第六 公共事業実施計画の作成及び国会承認等
 一 政府は、公共事業(その事業費の総額が百億円未満となることが見込まれるものを除く。二において同じ。)を実施しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとすること。この場合において、政府は、当該公共事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとすること。
 二 特殊法人は、公共事業を実施しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとすること。
 三 政府は、二の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとすること。この場合において、政府は、当該公共事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとすること。
(第六条関係)
第七 再評価
 一 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業で次のいずれかに該当するものについて、事業の継続の適否を判断するための評価(以下「再評価」という。)を行うものとすること。
  1 事業の実施の決定の後五年を経過した時点で着手されていない事業
  2 事業の実施の決定の後十年を経過した時点で完了していない事業
  3 関係地方公共団体の多数の住民が事業の継続に反対の意思を表明した事業
  4 再評価の対象となった事業で、再評価の後二年を経過したもの
  5 社会経済情勢の変化により事業計画の見直しが必要とされる事業
 二 再評価は、次に掲げる観点から行うものとすること。
  1 事業の必要性の度合
  2 事業の効果(費用効果分析を含む。以下同じ。)
  3 事業の円滑な実施の可能性
  4 事業の実施に係る環境等への影響
  5 事業の目的とする効果と同程度の効果を実現する別の方策の有無
  6 事業を中止した場合の影響
 三 政府は、再評価を行うに当たっては、関係地方公共団体の意見を聴かなければならないこと。
 四 政府は、再評価を行うに当たっては、再評価の対象となる公共事業に関する資料を公開し、広く国民の意見を聴かなければならないこと。
 五 政府は、再評価を行うに当たっては、公共事業調査会の意見を聴かなければならないこと。この場合において、政府は、四により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を公共事業調査会に提出しなければならないこと。
 六 政府は、再評価を行ったときは、その結果に関する報告書を作成し、これを国会に提出しなければならないこと。
 七 政府は、第六の一の国会の承認を受けた公共事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとすること。
 八 特殊法人は、第六の二の認可を受けた公共事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、当該公共事業の実施計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとすること。
 九 政府は、八の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとすること。
(第七条及び第八条関係)
第八 事後評価
 一 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業について、事業の終了後二年以内に、事業の効果に関する評価を行うものとすること。
 二 政府は、国又は特殊法人が実施する公共事業について、事業の終了後十年を目途として、事業の効果並びに事業の実施が及ぼした環境への影響その他社会的、経済的及び文化的な影響に関する評価を行うものとすること。
 三 第七の三から六までは、一又は二による評価を行う場合に準用すること。
(第九条関係)
第九 公共事業調査会
 一 設置及び権限
  1 内閣府に、公共事業調査会(以下「調査会」という。)を置くこと。
  2 調査会は、この法律及び他の法令の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、公共事業に関する重要事項を調査審議すること。
  3 調査会は、2の事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができること。
 二 組織
  1 調査会は、委員十人をもって組織すること。
  2 委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命すること。
  3 委員の任期は三年とし、再任されることができること。
  4 調査会の事務を処理させるため、調査会に事務局を置くこと。
 三 審議の公開等
   調査会の審議は公開して行い、調査会は、審議に用いた資料を公表しなければならないこと。
 四 協力依頼等
  1 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができること。
  2 調査会は、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができること。
 五 政令への委任
   この法律に定めるもののほか、調査会に関し必要な事項は、政令で定めること。
(第十条から第十四条まで関係)
第十 地方公共団体の講ずる施策
 一 都道府県及び政令指定都市は、条例で定めるところにより、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるものとすること。
 二 市町村(政令指定都市を除く。)は、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるよう努めなければならないこと。
(第十五条関係)
第十一 その他
 一 施行期日
   この法律は、平成十三年十月一日から施行すること。ただし、四は、平成十四年四月一日から施行すること。
 二 検討
   地方公共団体が公共事業を実施する場合における住民参加の在り方については、これを推進する観点から速やかに検討が加えられ、その結果に基づき必要な措置が講ぜられるべきものとすること。
 三 国土総合開発計画制度の廃止
   国土総合開発法を廃止し、全国総合開発計画等の国土総合開発計画制度を廃止すること。
 四 道路整備及び空港整備に係る特定財源制度の廃止
  1 道路整備に係る揮発油税及び石油ガス税の特定財源並びに地方道路臨時交付金を廃止すること。
  2 空港整備に係る航空機燃料税の特定財源を廃止すること。
 五 関係法律の整理等
   三及び四のほか、この法律の施行に伴い必要な関係法律の整理その他必要な事項は、別に法律で定めること。
 六 見直し
   揮発油税制、石油ガス税制その他自動車に係る税制に関しては、平成十六年三月三十一日までに、その簡素化、環境への負荷に対する税負担の在り方等について検討が加えられ、その結果に基づき総合的かつ抜本的な見直しが行われるべきものとすること。
(附則関係)

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.