衆議院

メインへスキップ




   非常事態対処基本法案要綱


第一 目的
  この法律は、非常事態への対処について、基本理念、非常事態の布告、非常事態対処会議の設置その他の基本となる事項を定めることにより、非常事態への対処のための態勢を整備し、もって国の安全の確保並びに非常事態における国民の生命、自由及び財産に対する権利をはじめとする日本国憲法の保障する基本的人権の保護に資することを目的とするものとすること。             (第一条関係)
第二 定義
  この法律において「非常事態」とは、直接侵略又は間接侵略、テロリストによる大規模な攻撃、大規模な災害又は騒乱等が発生し、かつ、これにより、国民の生命、身体若しくは財産に重大な被害が生じ、若しくは生じるおそれが生じ、又は国民生活との関連性が高い物資若しくは国民経済上重要な物資が欠乏し、その結果、国民生活及び国民経済に極めて重大な影響が及ぶおそれが生じ、通常の危機管理体制によっては適切に対処することが困難な事態をいうものとすること。             (第二条関係)
第三 基本理念
 一 非常事態においては、国が国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有すること並びに地方公共団体がこれを補完して当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、それぞれの役割に応じて相互に協力し、国民の生命、身体及び財産を保護するために必要なあらゆる措置が講じられなければならないものとすること。        (第三条第一項関係)
 二 非常事態においては、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の供給の確保その他国民生活の安定と国民経済の円滑な運営の確保のために必要な措置が講じられなければならないものとすること。                               (第三条第二項関係)
 三 非常事態への対処に当たり日本国憲法の保障する国民の自由と権利に制限が加えられる場合には、その制限は非常事態に対処するために必要最小限のものとなるようにしなければならないものとすること。
(第三条第三項関係)
 四 非常事態への対処のために国及び地方公共団体が講じた措置により国民が受けた損失については、正当な補償が行われなければならないものとすること。            (第三条第四項関係)
 五 非常事態への対処のために行う国の地方公共団体に対する指示その他の関与等については、地方自治の本旨を尊重し、非常事態に対処するために必要最小限のものとなるようにしなければならないものとすること。                               (第三条第五項関係)
第四 基本方針
 一 政府は、組織及び機能のすべてを挙げて非常事態に有効かつ適切に対処することができるようにするため、あらかじめ、非常事態への対処に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならないものとすること。                        (第四条第一項関係)
 二 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとすること。       (第四条第二項関係)
  イ 非常事態への対処に関する基本的な方針
  ロ 非常事態の類型及び認定並びに当該類型ごとの非常事態への対処に関する基本的事項
  ハ イ及びロに掲げるもののほか、非常事態への対処に関する重要事項
 三 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
(第四条第三項関係)
 四 内閣総理大臣は、三による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を非常事態対処会議の長に通知するとともに、公表しなければならないものとすること。       (第四条第四項関係)
 五 三及び四は、基本方針の変更について準用するものとすること。      (第四条第五項関係)
第五 非常事態の布告
 一 内閣総理大臣は、非常事態に至ったと認めるときは、閣議にかけて、非常事態の布告を発することができるものとすること。                         (第五条第一項関係)
 二 一の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならないものとすること。                               (第五条第二項関係)
 三 内閣総理大臣は、一の布告を発する場合には、あらかじめ、国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。三及び四において同じ。)を得なければならないものとすること。ただし、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで布告を発することができるものとすること。                 (第五条第三項関係)
 四 三により国会の承認を得ないで布告を発した場合には、内閣総理大臣は、直ちに、これにつき国会の承認を求めなければならないものとすること。               (第五条第四項関係)
 五 内閣総理大臣は、四の場合において不承認の議決があったとき、国会が非常事態の布告の廃止を議決したとき、又は当該布告の必要がなくなったときは、直ちに、当該布告を廃止しなければならないものとすること。                              (第五条第五項関係)
第六 国会への報告
  政府は、非常事態の布告が廃止されるまでの間、第五の三又は四による国会の承認を得た日から六十日ごとに、国会に対し、非常事態及びこれへの対処に関する状況について報告しなければならないものとすること。                                    (第六条関係)
第七 内閣総理大臣の権限
  内閣総理大臣は、第五の一に基づき非常事態の布告が発せられた場合において、非常事態への対処のための措置を迅速かつ的確に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、別に法律で定めるところにより、次に掲げる措置その他の非常事態に対処するために必要な緊急の措置を講ずることができるものとすること。                         (第七条関係)
  イ 警察の統制
  ロ 海上保安庁の統制
  ハ 非常事態への対処のための措置を実施すべき旨の地方公共団体の長に対する指示及び当該指示に基づく所要の措置を怠るときにおける代執行その他の地方公共団体が実施すべき措置の直接の実施
  ニ 運輸事業、通信事業、エネルギーを供給する事業その他の国民生活の円滑な運営に重大な影響を及ぼす事業を行う者に対する必要な指示
第八 緊急措置
  第五の一に基づき非常事態の布告が発せられ、法律の規定によっては国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に関する事項について必要な措置をとることができない場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは、別に法律で定めるところにより、内閣は、当該措置をとるため、政令を制定することができるものとすること。                                (第八条関係)
第九 非常事態対処会議の設置
  内閣に、非常事態への対処を迅速かつ的確に実施するため、非常事態対処会議を置くものとすること。
(第九条関係)
第十 非常事態対処会議の所掌事務
  非常事態対処会議は、第五の一に基づき非常事態の布告が発せられた場合において、基本方針に従い、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。                   (第十条関係)
  イ 非常事態への対処のために実施すべき措置に係る方針の決定に関すること。
  ロ 国及び地方公共団体が非常事態への対処のために実施する措置の総合調整に関すること。
  ハ イ及びロに掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
第十一 非常事態対処会議の組織等
 一 非常事態対処会議は、議長及び五のイからヘまでに掲げる議員で組織するものとすること。
(第十一条第一項関係)
 二 議長は、内閣総理大臣をもって充てるものとすること。         (第十一条第二項関係)
 三 議長は、会務を総理するものとすること。               (第十一条第三項関係)
 四 議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、五のイに掲げる者である議員がその職務を代理するものとすること。                          (第十一条第四項関係)
 五 議員は、次に掲げる者をもって充てるものとすること。         (第十一条第五項関係)
  イ 内閣法第九条の規定によりあらかじめ指定された国務大臣
  ロ 外務大臣
  ハ 財務大臣
  ニ 内閣官房長官
  ホ 国家公安委員会委員長
  ヘ 防衛庁長官
 六 議長は、必要があると認めるときは、関係の国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を非常事態対処会議に出席させ、意見を述べさせることができるものとすること。   (第十一条第六項関係)
 七 非常事態対処会議に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とするものとすること。                               (第十一条第七項関係)
第十二 法制上の措置
  国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行わなければならないものとすること。                                  (第十二条関係)
第十三 施行期日
  この法律は、公布の日から施行するものとすること。                (附則関係)

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.