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海洋基本法案要綱


第一 総則
一 目的
この法律は、地球の広範な部分を占める海洋が人類をはじめとする生物の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、海に囲まれた我が国において、海洋法に関する国際連合条約その他の国際約束に基づき、並びに海洋の持続可能な開発及び利用を実現するための国際的な取組の中で、我が国が国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに海洋基本計画の策定その他海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とすること。                     (第一条関係)
二 基本理念
  1 海洋については、海洋の開発及び利用が我が国の経済社会の存立の基盤であるとともに、海洋の生物の多様性が確保されることその他の良好な海洋環境が保全されることが人類の存続の基盤であり、かつ、豊かで潤いのある国民生活に不可欠であることにかんがみ、将来にわたり海洋の恵沢を享受できるよう、海洋環境の保全を図りつつ海洋の持続的な開発及び利用を可能とすることを旨として、その積極的な開発及び利用が行われなければならないものとすること。        (第二条関係)
2 海洋については、海に囲まれた我が国にとって海洋の安全の確保が重要であることにかんがみ、その安全の確保のための取組が積極的に推進されなければならないものとすること。  (第三条関係)
  3 海洋の開発及び利用、海洋環境の保全等が適切に行われるためには海洋に関する科学的知見が不可欠である一方で、海洋については科学的に解明されていない分野が多いことにかんがみ、海洋に関する科学的知見の充実が図られなければならないものとすること。          (第四条関係)
  4 海洋産業については、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上の基盤であることにかんがみ、その健全な発展が図られなければならないものとすること。       (第五条関係)                 
  5 海洋の管理は、海洋資源、海洋環境、海上交通、海洋の安全等の海洋に関する諸問題が相互に密接な関連を有し、及び全体として検討される必要があることにかんがみ、海洋の開発、利用、保全等について総合的かつ一体的に行われるものでなければならないものとすること。    (第六条関係)
  6 海洋が人類共通の財産であり、かつ、我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、海洋に関する施策の推進は、海洋に関する国際的な秩序の形成及び発展のために先導的な役割を担うことを旨として、国際的協調の下に行われなければならないものとすること。                                     (第七条関係)
三 関係者の責務等
1 国は、基本理念にのっとり、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有するものとすること。                            (第八条関係)
  2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、海洋に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。                                     (第九条関係) 
3 海洋産業の事業者は、基本理念にのっとりその事業活動を行うとともに、国又は地方公共団体が実施する海洋に関する施策に協力するよう努めなければならないものとすること。    (第十条関係)
  4 国民は、海洋の恵沢を認識するとともに、国又は地方公共団体が実施する海洋に関する施策に協力 するよう努めなければならないものとすること。                (第十一条関係)
  5 国、地方公共団体、海洋産業の事業者、海洋に関する活動を行う団体その他の関係者は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならないものとすること。
 (第十二条関係)
  6 国及び地方公共団体は、国民の祝日に関する法律第二条に規定する海の日において、国民の間に広く海洋についての理解と関心を深めるような行事が実施されるよう努めなければならないものとすること。                                   (第十三条関係)
  7 政府は、海洋に関する施策を実施するために必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。                   (第十四条関係)
  8 政府は、海洋の状況及び政府が海洋に関して講じた施策に関する資料を作成し、適切な方法により随時公表しなければならないものとすること。                 (第十五条関係)
第二 海洋基本計画
一 政府は、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋基本計画を定めなければならないものとすること。
二 海洋基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
1 海洋に関する施策についての基本的な方針
2 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
3 1及び2に掲げるもののほか、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
三 政府は、海洋に関する情勢の変化を勘案し、及び海洋に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、海洋基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとすること。
四 政府は、海洋基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。                         (第十六条関係)
第三 基本的施策
一 国は、海洋環境の保全並びに海洋資源の将来にわたる持続的な開発及び利用を可能とすることに配慮しつつ海洋資源の積極的な開発及び利用を推進するため、水産資源の保存及び管理その他の必要な措置を講ずるものとすること。                           (第十七条関係)
二 国は、生育環境の保全及び改善等による海洋の生物の多様性の確保その他の海洋環境の保全を図るために必要な措置を講ずるとともに、当該措置については、科学的知見を踏まえつつ、海洋環境に対する悪影響を未然に防止する観点から、これを実施し、その適切な見直しを行うよう努めるものとすること。
                                    (第十八条関係)
三 国は、海域の特性に応じた排他的経済水域等の開発等の推進その他の排他的経済水域等の開発等の推進のために必要な措置を講ずるものとすること。                 (第十九条関係)
 四 国は、効率的かつ安定的な海上輸送の確保を図るため、日本船舶の確保その他の必要な措置を講ずるものとすること。                               (第二十条関係)
五 国は、海洋について、我が国の平和及び安全の確保並びに海上の安全及び治安の確保のために必要な措置を講ずるとともに、津波、高潮等による災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護するため、防災に関し必要な措置を講ずるものとすること。             (第二十一条関係)
六 国は、海洋に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、海洋調査の実施及び海洋調査に必要な監視等の体制の整備に努めるとともに、地方公共団体の海洋に関する施策の策定等に資するため、海洋調査により得られた情報の提供に努めるものとすること。            (第二十二条関係)
七 国は、海洋科学技術に関する研究開発の推進及びその成果の普及を図るため、海洋科学技術に関し、研究体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとすること。          (第二十三条関係)
八 国は、海洋産業の振興及びその国際競争力の強化を図るため、海洋産業に関し、先端的な研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるものとすること。               (第二十四条関係)
 九 国は、自然的社会的条件からみて一体的に施策が講ぜられることが相当と認められる沿岸の海域及び陸域について、その諸活動に対する規制その他の措置が総合的に講ぜられることにより適切に管理されるよう必要な措置を講ずるとともに、当該措置を講ずるに当たっては、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害からの海岸の防護、海岸環境の整備及び保全並びに海岸の適正な利用の確保に十分留意するものとすること。                        (第二十五条関係)
十 国は、離島に関し、海岸等の保全その他の必要な措置を講ずるものとすること。 (第二十六条関係)
十一 国は、海洋に関する国際約束等の策定に主体的に参画することその他の海洋に関する国際的な連携の確保のために必要な措置を講ずるとともに、海洋に関し、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすため、海洋資源等に係る国際協力の推進のために必要な措置を講ずるものとすること。
                                       (第二十七条関係)
十二 国は、国民が海洋についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における海洋に関する教育の推進等のために必要な措置を講ずるとともに、海洋に関する政策課題に的確に対応するために必要な知識及び能力を有する人材の育成を図るため、大学等において学際的な教育及び研究が推進されるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。       (第二十八条関係)
第四 総合海洋政策本部
一 海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣に、総合海洋政策本部(以下「本部」という。)を置くものとすること。                       (第二十九条関係)
 二 本部は、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。             
1 海洋基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
2 関係行政機関が海洋基本計画に基づいて実施する施策の総合調整に関すること。
3 1及び2に掲げるもののほか、海洋に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。                                 (第三十条関係)
 三 本部の長は、総合海洋政策本部長とし、内閣総理大臣をもって充てるものとすること。
(第三十二条関係)
 四 本部に、総合海洋政策副本部長を置き、内閣官房長官及び海洋政策担当大臣をもって充てるものとすること。                                  (第三十三条関係)
五 本部に、総合海洋政策本部員を置き、総合海洋政策本部長及び総合海洋政策副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てるものとすること。                   (第三十四条関係)
第五 施行期日等
一 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。                                (附則第一項関係)
二 本部については、この法律の施行後五年を目途として総合的な検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。                   (附則第二項関係)

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