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   オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律案要綱


第一 趣旨(第一条関係)
  この法律は、平成七年三月二十日に発生した地下鉄サリン事件等のオウム真理教による無差別大量の殺傷行為が暴力により国の統治機構を破壊する等の主義を推進する目的の下に行われた悪質かつ重大なテロリズムとしての犯罪行為であり、これにより不特定又は多数の者が被った惨禍が未曾有のものであることに加え、オウム真理教が、教団としてテロリズムとしての犯罪行為を実行する能力を形成する過程においても、これに立ち向かった者やその家族が教団の発展を阻害する者として殺傷行為等の犯罪行為の犠牲となっていること等を踏まえ、国においてこれらの犯罪行為(以下「テロリズム等」という。)の被害者等の救済を図ることがテロリズムと戦う我が国の姿勢を明らかにする意義を有することにかんがみ、オウム真理教犯罪被害者等に対する給付金の支給について定めるものとすること。
第二 定義(第二条関係)
 一 オウム真理教犯罪被害者等
   この法律において「オウム真理教犯罪被害者等」とは、(1)から(8)までのオウム真理教によるテロリズム等の犯罪行為(以下「対象犯罪行為」という。)により死亡した者の遺族及び対象犯罪行為により障害が残り、又は傷病を負った者(オウム真理教の構成員であった者を除く。)をいうこと。
   (1) 平成七年三月二十日に発生した地下鉄サリン事件に係る犯罪行為
   (2) 平成六年六月二十七日から同月二十八日にかけて発生した松本サリン事件に係る犯罪行為
   (3) 平成元年十一月四日に発生した弁護士及びその妻子の殺人事件に係る犯罪行為
   (4) 平成六年五月九日に発生したサリンを使用した弁護士の殺人未遂事件に係る犯罪行為
   (5) 平成六年十二月二日に発生したVXを使用した殺人未遂事件に係る犯罪行為
   (6) 平成六年十二月十二日に発生したVXを使用した殺人事件に係る犯罪行為
   (7) 平成七年一月四日に発生したVXを使用した殺人未遂事件に係る犯罪行為
   (8) 平成七年二月二十八日から同年三月一日にかけて発生した公証人役場事務長の逮捕監禁致死事件に係る犯罪行為
 二 障害
   この法律において「障害」とは、負傷又は疾病について現に治療を行っているか否かを問わず、その症状が固定したときにおける身体上の障害をいうこと。
 三 傷病
   この法律において「傷病」とは、負傷又は疾病に係る身体の被害(死亡又は障害をもたらすこととなった負傷又は疾病に係るものを除く。)であって、その通院加療の期間が一日以上であったものをいうこと。
第三 給付金の支給等(第三条から第五条まで関係)
 一 給付金の支給
  1 国は、オウム真理教犯罪被害者等に対し、給付金を支給すること。
  2 オウム真理教犯罪被害者等のうち、対象犯罪行為により障害が残り、又は傷病を負った者が対象犯罪行為によらないで死亡したときは、その者の遺族(オウム真理教の構成員であった者を除く。)は、自己の名で、その者の給付金の支給を申請することができること。
 二 遺族の範囲及び順位等
  1 給付金の支給を受けることができる遺族は、死亡被害者の死亡の時において、(1)から(3)までのいずれかに該当する者とすること。
   (1) 死亡被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)
   (2) 死亡被害者の収入によって生計を維持していた死亡被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
   (3) (1)及び(2)に該当しない死亡被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
  2 給付金の支給を受けるべき遺族の順位は、1の(1)から(3)までの順序とし、1の(2)及び(3)に掲げる者のうちにあっては、それぞれに掲げる順序とし、父母については、養父母を先にし、実父母を後にすること。
  3 死亡被害者の死亡の当時胎児であった子が出生した場合における適用、死亡被害者を故意に死亡させた者等並びに給付金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上ある場合における申請及び給付金の支給について所要の規定を設けること。
 三 給付金の額
  1 給付金の額は、(1)から(3)までの区分に応じ、それぞれに定める額とすること。
   (1) 対象犯罪行為により死亡した者の遺族 二千万円
   (2) 対象犯罪行為により障害が残った者 イからハまでの障害の区分に応じ、それぞれに定める額
    イ 介護を要する障害として国家公安委員会規則で定める障害 三千万円
    ロ イ以外の重度の障害として国家公安委員会規則で定める障害 二千万円
    ハ イ又はロ以外の障害として国家公安委員会規則で定める障害 五百万円
   (3) 対象犯罪行為により傷病を負った者 イ又はロの傷病の区分に応じ、それぞれに定める額
    イ 重傷病(その通院加療の期間が一月以上であった傷病をいう。) 百万円
    ロ イ以外の傷病 十万円
  2 1の(2)のイの国家公安委員会規則は労働者災害補償保険法の規定に基づく障害等級(以下単に「障害等級」という。)の第一級又は第二級に該当する障害であって介護を要するものを、1の(2)のロの国家公安委員会規則は障害等級の第一級から第三級までに該当する障害(1の(2)のイの障害を除く。)を、1の(2)のハの国家公安委員会規則は障害等級の第四級から第十四級までに該当する障害を、それぞれ、参酌して定めるものとすること。
第四 裁定等(第六条から第九条まで関係)
 一 裁定
  1 給付金の支給を受けようとする者は、その者の住所地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に申請し、その裁定を受けなければならないこと。
  2 1の申請があった場合には、公安委員会は、速やかに、給付金を支給し、又は支給しない旨の裁定(支給する旨の裁定にあっては、その額の定めを含む。以下同じ。)を行わなければならないこと。
 二 申請の期限
  1 一の1の申請は、この法律の施行の日から二年を経過したときは、することができないこと。
  2 1にかかわらず、やむを得ない理由により1の期間を経過する前に一の1の申請をすることができなかったときは、その理由のやんだ日から六月以内に限り、申請をすることができること。
 三 利便を図るための措置
   政府は、オウム真理教犯罪被害者等(第三の一の2の遺族を含む。以下同じ。)に対し給付金の支給手続の実施等について周知するための措置その他一の1の申請に関し利便を図るための措置を適切に講ずるものとすること。
 四 裁定のための調査等
  1 公安委員会は、裁定を行うため必要があると認めるときは、申請者等に対して報告、文書の提出等をさせ、また、犯罪捜査の権限のある機関その他の公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができること。
  2 公安委員会は、申請者がオウム真理教犯罪被害者等に該当するかどうか及び対象犯罪行為による被害の程度を判断するに当たっては、オウム真理教犯罪被害者等が置かれている状況を踏まえて申請者に対して過重な負担を課することのないようにする観点から、オウム真理教に対する破産申立事件の記録、対象犯罪行為に係る刑事事件の訴訟に関する書類、対象犯罪行為により被害を受けた者に対する労働者災害補償保険法その他の法令による給付等に係る記録等(五の1において単に「記録等」という。)を必要に応じ用いる等、事案の実情に即した適切な判断を行うものとすること。
 五 国家公安委員会による資料の提出の求め
  1 国家公安委員会は、必要があると認めるときは、公務所及びオウム真理教に対する破産申立事件の破産管財人等に対し、公安委員会が裁定を行うために必要となる記録等の情報の内容を国家公安委員会の指定する方法により分類又は整理した資料を作成し、国家公安委員会に提出するよう求めることができること。
  2 国家公安委員会は、1により提出を受けた資料を、公安委員会に提供することができること。
第五 損害賠償との関係(第十一条関係)
  国は、給付金を支給したときは、その額の限度において、当該給付金の支給を受けた者が有する対象犯罪行為に係る損害賠償請求権を取得すること。
第六 不正利得の徴収等(第十条及び第十二条から第二十条まで関係)
  不正利得の徴収、時効、給付金の支給を受ける権利の保護、公課の禁止、戸籍事項の無料証明、不服申立てと訴訟との関係等について所要の規定を設けること。
第七 施行期日等
 一 施行期日(附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行すること。ただし、第四の三及び五は、公布の日から施行すること。
 二 検討(附則第六条関係)
   国は、テロリズムによる被害者の救済の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
 三 その他
   その他所要の規定を設けること。

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